僕は警官。武器はコネ。【イラストつき】

本庄照

文字の大きさ
73 / 185
Mission:大地に光を

第73話:計画 ~スパイを知らないわけがない~

しおりを挟む
「まあ、教団も前ほどお金ないし、経費削減でもあるけどな」
 金がない? この教団に? 信者から金をむさぼり、薬理部の面々に病院経営までさせておいて金がない、だなんてはずはない。

「実際に会計見たらわかるで。火の車とは言わんけど、計画が始まる前よりは確実に厳しいわな」
「計画?」
 教団が今まで練り上げてきた政治方面への構想を動かし始めたのはつい最近のことである。それ以外に教団には何か計画がある、ということだ。

「Y計画って俺らは陰で呼んでるんやけどな」
 坂上弥恵本人および富士本人に聞かれたらマズいのでこう呼んでいるらしい。
「富士さんがそのY計画にたくさんお金使ってるねんで。知らんかったん?」
 薫の言葉に三嶋は首を振る。

「弥恵さんの脊髄損傷を治療するために、いろんな大学に寄付してるらしい」
 それは三嶋の全く知らないところであった。
「脊損って治るの?」
「いや、俺も実際に脊損かは知らんけどな。でも治らんから必死で寄付してるんやろ? 神経細胞再生の研究を進めるために」

「そんな教団に金がなくなるほど寄付してるってこと?」
 税金の支払いから警察が見立てたところでは、教団には相当額の金が集まっているはずだ。一方で幹部の生活は質素で、浪費している様子もない。多額の金を持つ新興宗教団体、しかも信者が複数死んでいる。危険性が高いと判断されるのも当然で、だから三嶋がここに送り込まれたのである。

「寄付って言っても限度があるでしょ……?」
「なんでも、治験の順番を弥恵さんに回すためには必要なんやって」
 つまり、金をたくさん寄付する代わりに、坂上弥恵を優先的に治療しろと圧力をかけているということらしい。

 薫は遠い目になる。坂上に知られないように、経理をうまく処理するのに苦労してきたのだろう。薫とも仲の良い彼女は、教団の経理について非常に厳しいとも聞いている。三嶋は眉間に親指の腹を当てる。

「それ、弥恵さんは知ってるの?」
「まさか。教団の金はどこに消えてるんだろうって不思議に思ってるやろうけど、俺がいる以上、絶対に謎は解けへんよ」
 それでいいのだろうか。弥恵が希望しているかを確かめもせず、先走って治療を用意しようとしても、あとで後悔する結果になりそうだが。

 坂上弥恵が教団に入ったのは今から三年前だが、彼女と富士が出会ったのはもっと前である。五年ほど前だろうか。坂上の妹の友人が信者で、妹がお話の会に姉の相談をし、そこから富士と坂上が出会うことになったのだそうだ。

「もしかして、そのY計画ってのはずっと前からあったの……?」
「さあ、俺が入る前は別の人が経理してたからなぁ。でも、付属病院の規模が大きくなったのも弥恵さんが教団に入ってからやしな」
 薫は断言しないが、三嶋には答えが伝わった。

「薫くんがここに来る前も教団は金を集めてたんだろ」
 それは信者が過労死するほどに金を集めていたというところからほぼ確実視されている。その理由が政治関係ということは公安警察から聞いて分かっているが、詳細は不明である。

「俺が入る前の経理はもうおらんしなぁ。わからんわ」
 三嶋は耳を疑った。各部の部長を務められるのは幹部だけだ。幹部候補生が教団を抜けた例は過去にない。亮成のように使幹部候補生がいたとしても、重大な情報を握っている以上は教団の外に出すわけがない。

「おらん、ってどういうこと?」
「スパイやったんや」
 薫は険しい顔で耳打ちする。
「博実は知らんやろけど、前に教団にスパイがおってん」
 知らないわけはない。だが三嶋は驚きにつばを飲み込む演技をした。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

処理中です...