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Mission:大地に光を
第79話:接触 ~彼女はきっと見限れない~
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もつれている。最高幹部たちの意見が、もつれている。
さすがは人の作った組織、同じ信条の元に集まった人間たちも意見はぶつかり合う。そして派閥もできる。派閥ができれば情報の流れが滞りやすくなる。そして、その滞った情報をこちらに流す隙が生まれる。
この教団の派閥は大きく分けて二つある。坂上弥恵派と辻真理絵派だ。坂上弥恵派には、彼女と仲の良い施設部部長の中村ゆかり、経理部部長の小田切薫、薬理部部長の医師である小林修などがいる。一方、辻真理絵派は衛生部部長の関潤一のみ。宮崎亮成はどちらかというと辻派だが、そもそも彼は幹部としての立場すら危うい。現在強いのは人数の多い坂上派だろう。
いや、誰がどちらだとかいう情報などいらない。この団体に派閥は二つある。大きく仲違いしているわけではないが、派閥トップ同士の溝は深い。それだけでいい。
女同士の争いは、得てして酷く繊細だ。表立って喧嘩することはない。だが手を取り合って同じ方向を向くことは決してありえない。
見えた。三嶋はさりげなく彼らに背を向けると、隙なく笑った。
協力者は辻真理絵。これでいく。
辻の味方の幹部は少ないし、彼女は弥恵に強い不満がある。辻の心の中には様々なものがどろどろになって溜まっている状態だ。そこをうまく利用すれば、きっとこちらの協力者にできる。
そうと決まれば話は早い。というより、協力者に接触し、情報を外部に流すシステムを一から作るのには時間がかかるので、早く行動に移しておきたい。
三嶋は辻に接触するタイミングを計る。狙うは、風呂上りのリラックスした時間だ。一見変態の所業だが、その気恥ずかしさはプロのプライドにかけて捨てる。
タイミングは完璧だった。濡れた頭をふきふき、三嶋は後ろから辻に声をかける。
「つじまちゃん」
さすがの三嶋も、背中に汗をかいていた。風呂上り直後で体がほてっているからではない。
「大事な話があるんだけど」
辻が不思議そうな顔をしてこちらを振り向いた。
「僕に協力してほしいんだ」
感触は悪くなかった。三嶋には自信があった。
彼女は随分長い時間悩んでいたように見えた。
「協力者になるん?」
「うん」
「博実、あんた幹部やろ?」
三嶋は頷いた。
「だけど、僕は警察官なんだ」
「嘘やろ?」
すがるように彼女は言う。驚くのも無理はない。彼女は、三年前の惨劇を知っている人間だ。それも、住吉志穂をまさに処分したのは彼女である。警察という単語そのものが彼女にとって最も耳にしたくない単語だろう。
それが彼女を協力者に選んだ理由でもある。彼女の心に住吉志穂は必ずや大きな傷跡を残している。しかも三嶋は数少ない辻派の人間で、面倒見のいい辻が彼を見限ることは、精神的に容易ではないはずだ。
「博実のお父さんって、警察嫌いなんじゃなかったん?」
三嶋はこっそり笑う。彼女の発言で確定した。教団が警察関係者を排除していると認めたようなものだ。
「そうだよ。でも結局僕は警察官になったんだ。いろんな風の吹き回しでね」
「お父さん、博実が警察官になった時に何も言わんかったん?」
「そりゃもちろん、警察嫌いだからね。でも、兄の仲裁があって、今は父とも和解してるよ」
辻は話をじっくり聞き、噛み砕くようにうなずいた。
「博実が警察官なんて、思いもせんかったわ」
「つじまちゃんを信用してなかったらこんなこと言わないよ」
三嶋は辻の耳元で囁くように語りかけた。
「つじまちゃんは、僕にとって特別だから」
「……わかった。私にできることをさせて」
勝った。三嶋は彼女の手を取り、しっかりと握手をした。
「よろしく」
さすがは人の作った組織、同じ信条の元に集まった人間たちも意見はぶつかり合う。そして派閥もできる。派閥ができれば情報の流れが滞りやすくなる。そして、その滞った情報をこちらに流す隙が生まれる。
この教団の派閥は大きく分けて二つある。坂上弥恵派と辻真理絵派だ。坂上弥恵派には、彼女と仲の良い施設部部長の中村ゆかり、経理部部長の小田切薫、薬理部部長の医師である小林修などがいる。一方、辻真理絵派は衛生部部長の関潤一のみ。宮崎亮成はどちらかというと辻派だが、そもそも彼は幹部としての立場すら危うい。現在強いのは人数の多い坂上派だろう。
いや、誰がどちらだとかいう情報などいらない。この団体に派閥は二つある。大きく仲違いしているわけではないが、派閥トップ同士の溝は深い。それだけでいい。
女同士の争いは、得てして酷く繊細だ。表立って喧嘩することはない。だが手を取り合って同じ方向を向くことは決してありえない。
見えた。三嶋はさりげなく彼らに背を向けると、隙なく笑った。
協力者は辻真理絵。これでいく。
辻の味方の幹部は少ないし、彼女は弥恵に強い不満がある。辻の心の中には様々なものがどろどろになって溜まっている状態だ。そこをうまく利用すれば、きっとこちらの協力者にできる。
そうと決まれば話は早い。というより、協力者に接触し、情報を外部に流すシステムを一から作るのには時間がかかるので、早く行動に移しておきたい。
三嶋は辻に接触するタイミングを計る。狙うは、風呂上りのリラックスした時間だ。一見変態の所業だが、その気恥ずかしさはプロのプライドにかけて捨てる。
タイミングは完璧だった。濡れた頭をふきふき、三嶋は後ろから辻に声をかける。
「つじまちゃん」
さすがの三嶋も、背中に汗をかいていた。風呂上り直後で体がほてっているからではない。
「大事な話があるんだけど」
辻が不思議そうな顔をしてこちらを振り向いた。
「僕に協力してほしいんだ」
感触は悪くなかった。三嶋には自信があった。
彼女は随分長い時間悩んでいたように見えた。
「協力者になるん?」
「うん」
「博実、あんた幹部やろ?」
三嶋は頷いた。
「だけど、僕は警察官なんだ」
「嘘やろ?」
すがるように彼女は言う。驚くのも無理はない。彼女は、三年前の惨劇を知っている人間だ。それも、住吉志穂をまさに処分したのは彼女である。警察という単語そのものが彼女にとって最も耳にしたくない単語だろう。
それが彼女を協力者に選んだ理由でもある。彼女の心に住吉志穂は必ずや大きな傷跡を残している。しかも三嶋は数少ない辻派の人間で、面倒見のいい辻が彼を見限ることは、精神的に容易ではないはずだ。
「博実のお父さんって、警察嫌いなんじゃなかったん?」
三嶋はこっそり笑う。彼女の発言で確定した。教団が警察関係者を排除していると認めたようなものだ。
「そうだよ。でも結局僕は警察官になったんだ。いろんな風の吹き回しでね」
「お父さん、博実が警察官になった時に何も言わんかったん?」
「そりゃもちろん、警察嫌いだからね。でも、兄の仲裁があって、今は父とも和解してるよ」
辻は話をじっくり聞き、噛み砕くようにうなずいた。
「博実が警察官なんて、思いもせんかったわ」
「つじまちゃんを信用してなかったらこんなこと言わないよ」
三嶋は辻の耳元で囁くように語りかけた。
「つじまちゃんは、僕にとって特別だから」
「……わかった。私にできることをさせて」
勝った。三嶋は彼女の手を取り、しっかりと握手をした。
「よろしく」
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