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Mission:消えるカジノ
第125話:消失 ~カジノは消えて、そこにない~
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歯を磨き、今まさに寝ようかとしていた時である。章のスマートフォンに着信が入った。日も跨いでいるし、こんな夜遅くに電話をかけてくるバカは一人しかいない。普段はゼロなのだが。もちろん犯人は諏訪である。
「章さん、大変なことが起きてます」
「またか、夜中に電話をかけるのはよせ。今度は一体何があったんだ」
諏訪を怒ろうとするも、諏訪が持ち込んできたニュースの方が気になってしまうあたり章らしいが、おかげで説教の説得力がまるでない。
「カジノが消えてます」
「は?」
一瞬部屋が静まりかえった。
「不知火貴金属商会の表の顔だった貴金属買取店が潰れてます」
つい先日まで貴金属買取店だったはずのビルが、空きテナントになっていた。諏訪は目の前のシャッターを触る。冷たい。悪い夢ではなさそうだ。
「というと?」
「店がないのでカジノに入ることができません」
章の脳裏に、いつも見ている三嶋の資料が思い浮かんだ。警察の捜査が入ろうとすると、このカジノはダミーのオーナーを用意して賭場を変える、と書いてあった。諏訪が闇カジノの捜査員だと気づいたカジノ側が、以前の賭場を捨てたことにほかならない。
「逃げられたってことか」
章の目が一発で覚めた。急に章の声が真面目になったのを聞いて、裕が何事かと寄ってきた。
「しかも、俺に新しい賭場の連絡が来ていないということは、俺が捜査員だとバレてるってことっすよ」
いちど賭場を捨てるとなると、客に新しい賭場の場所を教えなければならないはずだ。諏訪も客なのにその連絡が来ていないということは、諏訪だけが除け者にされている。
「おそらく、諏訪の素性を調べられてるな」
スピーカーで会話を聞いていた、パジャマ姿の裕が考え込む。
「しかも、諏訪が情報課の人間だとバレてる」
「そんな馬鹿な……」
電話の向こうから諏訪が絶望する声がした。
「情報課の人間かどうかは分かっていなくても、単なる警察官だとは思われていないだろうな」
「……どういうことっすか」
「諏訪、資料ちゃんと読んでないだろ。最初にこのカジノの存在が発覚したのは、警察官が客としてカジノに通っていたことがわかったからって書いてあったじゃないか」
裕が章のスマートフォンを取り上げて説明した。
「……あっ」
「わかっただろ? 警察官だというだけでカジノから追い出されることはない。諏訪の所属は、本来なら絶対にカジノの捜査を担当しない交通課じゃないか。それがバレたくらいじゃ、カジノからは追い出されないんだ」
「諏訪、自分が情報課の人間だと他人に言ったことはないよな?」
「あるわけないじゃないっすか、家族にも言ってないっすよ」
諏訪は自信満々に答えた。
「じゃあ、ちょっとやそっと調べた程度ではないな」
裕が章の隣で眼鏡を押し上げる。
「探偵のような人間が諏訪の周囲を嗅ぎ回ってたら、さすがに気付くだろ」
諏訪は雑だが案外鋭い。並の探偵ならどれだけ調べても情報課という結論に達することはできないだろうし、上級の探偵でも諏訪に気づかれずに探るのは不可能だ。
「もちろんっすよ。そんな人間はいませんでした」
「となると、情報屋のような人間がカジノの裏にいる可能性がある。あるいは超凄腕の探偵か。どちらも、決して可能性が高いとは言えないけどね」
「情報屋、ってどういうことっすか」
映画の中でしか聞かない言葉だ。初めて現実で耳にしたこの言葉が、諏訪にはどうにも引っかかる。
「章さん、大変なことが起きてます」
「またか、夜中に電話をかけるのはよせ。今度は一体何があったんだ」
諏訪を怒ろうとするも、諏訪が持ち込んできたニュースの方が気になってしまうあたり章らしいが、おかげで説教の説得力がまるでない。
「カジノが消えてます」
「は?」
一瞬部屋が静まりかえった。
「不知火貴金属商会の表の顔だった貴金属買取店が潰れてます」
つい先日まで貴金属買取店だったはずのビルが、空きテナントになっていた。諏訪は目の前のシャッターを触る。冷たい。悪い夢ではなさそうだ。
「というと?」
「店がないのでカジノに入ることができません」
章の脳裏に、いつも見ている三嶋の資料が思い浮かんだ。警察の捜査が入ろうとすると、このカジノはダミーのオーナーを用意して賭場を変える、と書いてあった。諏訪が闇カジノの捜査員だと気づいたカジノ側が、以前の賭場を捨てたことにほかならない。
「逃げられたってことか」
章の目が一発で覚めた。急に章の声が真面目になったのを聞いて、裕が何事かと寄ってきた。
「しかも、俺に新しい賭場の連絡が来ていないということは、俺が捜査員だとバレてるってことっすよ」
いちど賭場を捨てるとなると、客に新しい賭場の場所を教えなければならないはずだ。諏訪も客なのにその連絡が来ていないということは、諏訪だけが除け者にされている。
「おそらく、諏訪の素性を調べられてるな」
スピーカーで会話を聞いていた、パジャマ姿の裕が考え込む。
「しかも、諏訪が情報課の人間だとバレてる」
「そんな馬鹿な……」
電話の向こうから諏訪が絶望する声がした。
「情報課の人間かどうかは分かっていなくても、単なる警察官だとは思われていないだろうな」
「……どういうことっすか」
「諏訪、資料ちゃんと読んでないだろ。最初にこのカジノの存在が発覚したのは、警察官が客としてカジノに通っていたことがわかったからって書いてあったじゃないか」
裕が章のスマートフォンを取り上げて説明した。
「……あっ」
「わかっただろ? 警察官だというだけでカジノから追い出されることはない。諏訪の所属は、本来なら絶対にカジノの捜査を担当しない交通課じゃないか。それがバレたくらいじゃ、カジノからは追い出されないんだ」
「諏訪、自分が情報課の人間だと他人に言ったことはないよな?」
「あるわけないじゃないっすか、家族にも言ってないっすよ」
諏訪は自信満々に答えた。
「じゃあ、ちょっとやそっと調べた程度ではないな」
裕が章の隣で眼鏡を押し上げる。
「探偵のような人間が諏訪の周囲を嗅ぎ回ってたら、さすがに気付くだろ」
諏訪は雑だが案外鋭い。並の探偵ならどれだけ調べても情報課という結論に達することはできないだろうし、上級の探偵でも諏訪に気づかれずに探るのは不可能だ。
「もちろんっすよ。そんな人間はいませんでした」
「となると、情報屋のような人間がカジノの裏にいる可能性がある。あるいは超凄腕の探偵か。どちらも、決して可能性が高いとは言えないけどね」
「情報屋、ってどういうことっすか」
映画の中でしか聞かない言葉だ。初めて現実で耳にしたこの言葉が、諏訪にはどうにも引っかかる。
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