僕は警官。武器はコネ。【イラストつき】

本庄照

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Mission:消えるカジノ

第144話:自問 ~章は気持ちがわからない~

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「結局、俺がカジノスタッフを一斉逮捕したのは間違いだったんすかねぇ」
 やはり朝早くから会議室にやってきた諏訪が、珍しく欠伸をしていた。
 横でコーヒーを出しながら、多賀は諏訪に同情する。さすがの諏訪も疲れているのだろう。

 諏訪がカジノスタッフを一斉逮捕したことでカジノは潰れたが、それは思わぬ副産物だ。諏訪の計画とは異なっている。おまけに、諏訪が南雲を出し抜いたつもりが、かえって利用されていたとなれば。自分の案件でなくてよかったと多賀は思う。

「いやぁ、そんなことないって。俺も気づかんかったもん。まさか水無瀬怜次郎にそんな事情があるなんてな」
「結局は、スタッフ一斉逮捕で追い詰められた南雲の、イタチの最後っ屁だろ? 気にするなよ」
 春日と裕が交互に諏訪を慰める。諏訪は多賀の淹れたコーヒーをちびちび飲みながら、机に突っ伏している。本当に珍しい光景だ。

「そもそも、諏訪は伊沢に会って二週間で飯田を捕まえてカジノ入りしてくれたし、今まで誰もわからなかったオーナーの招待も突き止めたし、一斉逮捕だって、諏訪が地道に手を回したからできたんだじゃないか。全くよくやってくれたよ。自分の功績考えろ」
 珍しく章が手放しで褒めてくる。慰めるつもりなのかもしれないが、それもそれで調子が狂うので諏訪には怖い。

「三嶋も帰ったら喜ぶって。まあ、既に死んでるかもしれないけど」
「だからそういうこと言うのやめてくださいよ……」
 諏訪は章をたしなめる。だが、章が頻繁にそう言うのは、不安と心配の裏返しであることはわかっているので、強く言うこともしない。

「だって三嶋、だいぶ痩せてたもん。あんな小さい三嶋がガリガリになってたら、どんどん細くなって、そのうち消えるんじゃないかって心配にもなるだろ」
 諏訪からすれば、章も十分チビだ。諏訪は生暖かい視線を章に送る。
「章さん、三嶋さんに会ったんすか?」
「うん、なんかあの宗教団体、お悩み相談会みたいなのやってて、そこに三嶋も出てたから行ってきた」
「行ってきたんすか!?」

「多賀、知ってた?」
「…………」
 多賀は黙って目をそらす。知ってたな、こいつ。

「連絡がつかない理由は会ったら分かったけど、しばらくして急に三嶋が表に出てこなくなったんだよな。急だし、心配だなぁって。それに比べたら、諏訪は本当に人に心配もかけずにスムーズに事件解決して偉いじゃん」
 諏訪を褒めているのか、三嶋をけなしているのか。

「でも、三嶋さんがそうなってるだなんて全然知らなかったっす」
「そら、こっちの事件にずっと忙しかったんやもん。しゃーないって」
「結局、なんとかなったんでよかったっすけど、ヒヤヒヤの連続っすよ。それに、あの南雲の顔、なーんか、納得いかないんすよねぇ」
 諏訪の眉間にはしわが寄っている。

「何をそんなに悩んでるわけ?」
 呆れかえったように章が尋ねた。事件にろくに関わっていない章は悠長でいいが、こちらとしては悩み深くもなる。それを呆れられると少々腹が立つというものだ。
「南雲は全部教えてくれたんだろ。わからなかったことも全部わかった、それでいいじゃないか」

「お会いしましょうって何なんすか? 俺はまたあんな奴と会わなきゃいけないんすか?」
「そうなんじゃないの」
「え?」

「相手は横須賀、こことも近いしね。互いに正体を知ってるという弱みを握ってるし、表立っては言えない。何なら今後、あの南雲という男を利用するかもしれない」
「利用ってどういうことっすか」
 薄々わかるが、それがあまりにも恐ろしい結論なので諏訪は念のために尋ねる。期待外れであることを期待して。

「あいつ情報屋なんだろ? 金払えば、なんでも教えてくれるに違いない。南雲がいれば、飯田の居場所なんて五分で掴めるさ。次からはそうしよう、多賀の手間も省けるし、僕がわざわざ三嶋の部下を使う必要もない」
 章は手間を金で解決しようとしている。しかも違法な手段によって。

「……嫌っすよッ! なんであんな奴と!」
 諏訪は思わず立ち上がって叫んだ。
「なーんだ、元気じゃん」
 章がするりと逃げる。南雲を相手にするのと、章を相手にするのでは、どちらがキツいだろうか、と諏訪は自問する。答えは出ない。
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