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Mission:白の慟哭
第154話:足元 ~身柄だけでは頼りない~
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「もしもし、伊勢章です。南雲さんいます? 本人? あ、そっか。これ携帯だもんな。本人で当然か。ほら、最近セミ鳴きはじめたじゃん? その話なんだけど」
南雲の表の顔は通訳だ。
情報屋としての南雲の顔を見ようと思ったら、電話口で天気の話をしろ、と言われていたはずだ。しかし章は天気とも雑談ともつかない話題を出している。
大丈夫なのだろうかと、裕は隣でハラハラしていた。
しかしセミの話題は、無事に天気とみなされたらしく、章は南雲といくらかやりとりした後、笑顔で電話を切った。
「澤田行彦、顔写真が三○万、住所が一二○万、経歴が二○○万、身柄が五〇〇万だって」
「……逆に、お金さえ出せば身柄を押さえられるんですか?」
証拠はいくらか章は尋ねたが、業務の範疇ではないから金を積まれてもできないと断られてしまった。つまり、身柄の確保は、南雲の業務の範疇であるということになる。
「彼のもう一つの顔は逃がし屋でしょう? 彼にとって、身柄の確保は簡単な仕事なのかもしれませんね」
三嶋が冷静に分析する。身柄一つ確保できないのか、と南雲に笑われているような気がして嫌な気分になったが、諏訪は顔を振って南雲の姿を脳裏から追い出す。
「しかし、足元見やがるよなぁ」
「本当だよ。章の電話番号は二万五千円のくせに」
「澤田は元々裏社会の人間だからな。値段が上がるのはわからんでもないが」
「五〇〇万かぁ……」
「たかが五〇〇万、されど五〇〇万。五〇〇万円の事件を、警視庁は解決できずにこっちに回してきたってことだ」
章は頬杖をつく。南雲に電話したのは章とはいえ、事件の大小を金額にできる存在が目の前に現れたとなると、どうも複雑な気分になる。
「春日、それくらいなら捜査費用で出せるけど、どうする?」
春日に向き直ったのは裕だった。
「五〇〇万で事件が解決するなら、安いと俺は思うけどね」
大事件になると捜査費用は数千万であることも少なくない。それでも解決しない事件が山のようにある。裕の言葉は真実だ。
「……身柄を押さえたって、なーんもなりません」
春日は、南雲という魔法使いに頼るのを我慢した。本心では、春日も裕と同じく、南雲にサッと金を払って事件解決としたい。
しかし、情報屋から買った情報は表には出せない。彼女が情報課の元を離れ、刑事課に引き渡されれば、すぐに証拠不十分で釈放されてしまう。
「南雲に五百万払ったって、俺らができるのはせいぜい二度目の家宅捜索まで。店子が逮捕されまくってる以上、奴は相当警戒しとるはずや。家宅捜索されても証拠がでーへんように工夫してるのは間違いあらへんでしょう」
春日はサラサラの髪の毛をゆっくりと振る。
そもそも澤田は、ブローカーとしては薬物パーティーにしか現れないものの、プロデューサーとしてならばテレビ局なり芸能事務所なりに現れる。身柄だけであれば、南雲がいなくても適当に理由をつけて押さえられる。引っ張った身柄を起訴し、有罪にし、刑務所に入れられるほどの証拠を探すのが一番の重労働だ。
そしてその証拠は、結局見つかる気配がない。
「……結局、最初に戻っちゃったな」
「ああ、証拠がない」
「証拠がないんやったら、出させたらええんちゃいます?」
おっとりと春日が提案した。
「出させる? どうやって?」
「懐に入り込んで、直接証拠を押さえようかと。澤田の周囲の誰かを懐柔できたら最高なんですけど」
東と接触した感覚では、方法次第ではあるものの、恐らく誰か一人くらいは落とせるだろう。一人裏切り者を作れれば、捜査は格段にやりやすくなる。
それが可能であれば、の話だが。
南雲の表の顔は通訳だ。
情報屋としての南雲の顔を見ようと思ったら、電話口で天気の話をしろ、と言われていたはずだ。しかし章は天気とも雑談ともつかない話題を出している。
大丈夫なのだろうかと、裕は隣でハラハラしていた。
しかしセミの話題は、無事に天気とみなされたらしく、章は南雲といくらかやりとりした後、笑顔で電話を切った。
「澤田行彦、顔写真が三○万、住所が一二○万、経歴が二○○万、身柄が五〇〇万だって」
「……逆に、お金さえ出せば身柄を押さえられるんですか?」
証拠はいくらか章は尋ねたが、業務の範疇ではないから金を積まれてもできないと断られてしまった。つまり、身柄の確保は、南雲の業務の範疇であるということになる。
「彼のもう一つの顔は逃がし屋でしょう? 彼にとって、身柄の確保は簡単な仕事なのかもしれませんね」
三嶋が冷静に分析する。身柄一つ確保できないのか、と南雲に笑われているような気がして嫌な気分になったが、諏訪は顔を振って南雲の姿を脳裏から追い出す。
「しかし、足元見やがるよなぁ」
「本当だよ。章の電話番号は二万五千円のくせに」
「澤田は元々裏社会の人間だからな。値段が上がるのはわからんでもないが」
「五〇〇万かぁ……」
「たかが五〇〇万、されど五〇〇万。五〇〇万円の事件を、警視庁は解決できずにこっちに回してきたってことだ」
章は頬杖をつく。南雲に電話したのは章とはいえ、事件の大小を金額にできる存在が目の前に現れたとなると、どうも複雑な気分になる。
「春日、それくらいなら捜査費用で出せるけど、どうする?」
春日に向き直ったのは裕だった。
「五〇〇万で事件が解決するなら、安いと俺は思うけどね」
大事件になると捜査費用は数千万であることも少なくない。それでも解決しない事件が山のようにある。裕の言葉は真実だ。
「……身柄を押さえたって、なーんもなりません」
春日は、南雲という魔法使いに頼るのを我慢した。本心では、春日も裕と同じく、南雲にサッと金を払って事件解決としたい。
しかし、情報屋から買った情報は表には出せない。彼女が情報課の元を離れ、刑事課に引き渡されれば、すぐに証拠不十分で釈放されてしまう。
「南雲に五百万払ったって、俺らができるのはせいぜい二度目の家宅捜索まで。店子が逮捕されまくってる以上、奴は相当警戒しとるはずや。家宅捜索されても証拠がでーへんように工夫してるのは間違いあらへんでしょう」
春日はサラサラの髪の毛をゆっくりと振る。
そもそも澤田は、ブローカーとしては薬物パーティーにしか現れないものの、プロデューサーとしてならばテレビ局なり芸能事務所なりに現れる。身柄だけであれば、南雲がいなくても適当に理由をつけて押さえられる。引っ張った身柄を起訴し、有罪にし、刑務所に入れられるほどの証拠を探すのが一番の重労働だ。
そしてその証拠は、結局見つかる気配がない。
「……結局、最初に戻っちゃったな」
「ああ、証拠がない」
「証拠がないんやったら、出させたらええんちゃいます?」
おっとりと春日が提案した。
「出させる? どうやって?」
「懐に入り込んで、直接証拠を押さえようかと。澤田の周囲の誰かを懐柔できたら最高なんですけど」
東と接触した感覚では、方法次第ではあるものの、恐らく誰か一人くらいは落とせるだろう。一人裏切り者を作れれば、捜査は格段にやりやすくなる。
それが可能であれば、の話だが。
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