29 / 312
第1章
第29話
まるで駆け込むようにして急いで帰ったオレだが、それまで積み木で遊んでいた息子は、いつもの満面の笑みで迎えてくれたりはしなかった。
それどころか怯えたように泣き出してしまう。
「ヒデちゃん、酷い顔よ……それに、返り血が凄い。怪我してるわけじゃないわよね?」
妻さえも苦笑して息子をあやしながら、そんなことを言うのだから、よほどに凄惨な様子なのだろう。
何も言わないが、母さえも困ったような表情のまま、目顔で洗面所の有る方にオレを促す。
頭を冷やすためにも、我が子を胸に抱くためにも、いつもより入念に顔や手などを洗う。
確かに酷いツラだった。
オークの血も赤いのか……ふと、そんなことを思う。
◆
昼食を終え、既に定例になりつつある報告会。
オークの度重なるダンジョン外への出現が、やはり問題視された。
犠牲者が、ごく近所で出たのだから、それも当然だろう。
結果として、午後の探索には妻も赴くことになった。
いち早く戦力の増強を図るべきという結論に至ったのだ。
護衛と指導にあたる兄に、その分だけ負担が掛かるが、それは致し方ない。
テレビはついに地方局のみが映るチャンネルも出てきてしまっている。
他のチャンネルに回すと理由はすぐに分かった。
大型モンスターの出現により、社屋ごと多くの犠牲者を出してしまったようだ。
有名なアナウンサーだとか芸能人、人気番組のプロデューサーをはじめ、膨大な数の死傷者が出ている。
そして、兄達に先行する形で、まずはオレが再び出掛けることに決まった。
思わぬ惨劇に我を忘れていたオレが悪いのだが、午前中の戦利品の山をそのまま持ち帰ってしまっていたからだ。
あまり時間を掛けるわけにもいかない。
再び玄関でダンジョン仕様のブーツを履く。
見送る妻の胸には愛する長男。
……最高の笑顔だった。
目頭が潤んでいるのを誤魔化すように、慌てて手を振り玄関から出る。
ダン協の建物に入る前に、チラっと遺体のあったところを見る。
ダン協の職員が洗ったのだろうか。
あたり一面、水浸しで既に正確な場所は分からなかった。
入ってすぐのところで、ダンジョン警備にあたる警察官の簡単な職務質問を受ける。
昨日まで居なかった顔だ。
ダンジョン探索経験の有る人材が、急遽派遣されて来たのかもしれない。
協力に感謝している素振りだが、どこか値踏みされているような感じも受けた。
オレの装備は、武器こそ総金属製の鎗で凝った造りだが、防具は週末探索者(専業ではない探索者の俗称)の域を出ない。
本当にコイツがオークを倒したのか?
そう思われても無理はないのだ。
窓口に行き、心なしか表情の暗い受付のお姉さんに事情を説明してから、魔石やアイテムを提出する。
魔石の買い取り額は昨日より更に上昇していた。
ふと思い立って、今日はポーションも5本売りに出す。
以前の倍近い値が付いている。
やはりポーションも品薄なんだろうな。
鑑定して貰う品は全部で5つ。
さて、どうなるだろうか?
それどころか怯えたように泣き出してしまう。
「ヒデちゃん、酷い顔よ……それに、返り血が凄い。怪我してるわけじゃないわよね?」
妻さえも苦笑して息子をあやしながら、そんなことを言うのだから、よほどに凄惨な様子なのだろう。
何も言わないが、母さえも困ったような表情のまま、目顔で洗面所の有る方にオレを促す。
頭を冷やすためにも、我が子を胸に抱くためにも、いつもより入念に顔や手などを洗う。
確かに酷いツラだった。
オークの血も赤いのか……ふと、そんなことを思う。
◆
昼食を終え、既に定例になりつつある報告会。
オークの度重なるダンジョン外への出現が、やはり問題視された。
犠牲者が、ごく近所で出たのだから、それも当然だろう。
結果として、午後の探索には妻も赴くことになった。
いち早く戦力の増強を図るべきという結論に至ったのだ。
護衛と指導にあたる兄に、その分だけ負担が掛かるが、それは致し方ない。
テレビはついに地方局のみが映るチャンネルも出てきてしまっている。
他のチャンネルに回すと理由はすぐに分かった。
大型モンスターの出現により、社屋ごと多くの犠牲者を出してしまったようだ。
有名なアナウンサーだとか芸能人、人気番組のプロデューサーをはじめ、膨大な数の死傷者が出ている。
そして、兄達に先行する形で、まずはオレが再び出掛けることに決まった。
思わぬ惨劇に我を忘れていたオレが悪いのだが、午前中の戦利品の山をそのまま持ち帰ってしまっていたからだ。
あまり時間を掛けるわけにもいかない。
再び玄関でダンジョン仕様のブーツを履く。
見送る妻の胸には愛する長男。
……最高の笑顔だった。
目頭が潤んでいるのを誤魔化すように、慌てて手を振り玄関から出る。
ダン協の建物に入る前に、チラっと遺体のあったところを見る。
ダン協の職員が洗ったのだろうか。
あたり一面、水浸しで既に正確な場所は分からなかった。
入ってすぐのところで、ダンジョン警備にあたる警察官の簡単な職務質問を受ける。
昨日まで居なかった顔だ。
ダンジョン探索経験の有る人材が、急遽派遣されて来たのかもしれない。
協力に感謝している素振りだが、どこか値踏みされているような感じも受けた。
オレの装備は、武器こそ総金属製の鎗で凝った造りだが、防具は週末探索者(専業ではない探索者の俗称)の域を出ない。
本当にコイツがオークを倒したのか?
そう思われても無理はないのだ。
窓口に行き、心なしか表情の暗い受付のお姉さんに事情を説明してから、魔石やアイテムを提出する。
魔石の買い取り額は昨日より更に上昇していた。
ふと思い立って、今日はポーションも5本売りに出す。
以前の倍近い値が付いている。
やはりポーションも品薄なんだろうな。
鑑定して貰う品は全部で5つ。
さて、どうなるだろうか?
あなたにおすすめの小説
パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す
名無し
ファンタジー
パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。
巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?
サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。
*この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。
**週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**
貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~
喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。
庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。
そして18年。
おっさんの実力が白日の下に。
FランクダンジョンはSSSランクだった。
最初のザコ敵はアイアンスライム。
特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。
追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。
そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。
世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。
帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす
黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。
4年前に書いたものをリライトして載せてみます。
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~
シンギョウ ガク
ファンタジー
仕事中、寝落ちした明日見碧(あすみ あおい)は、目覚めたら暗い洞窟にいた。
目の前には蛍光ピンクのガチャマシーン(足つき)。
『初心者優遇10連ガチャ開催中』とか『SSRレアスキル確定』の誘惑に負け、金色のコインを投入してしまう。
カプセルを開けると『鑑定』、『ファイア』、『剣術向上』といったスキルが得られ、次々にステータスが向上していく。
ガチャスキルの力に魅了された俺は魔物を倒して『金色コイン』を手に入れて、ガチャ引きまくってたらいつのまにか強くなっていた。
ボスを討伐し、初めてのダンジョンの外に出た俺は、相棒のガチャと途中で助けた異世界人アスターシアとともに、異世界人ヴェルデ・アヴニールとして、生き延びるための自由気ままな異世界の旅がここからはじまった。
ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。
夜兎ましろ
ファンタジー
高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。
ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。
バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。
神様、ありがとう! 2度目の人生は破滅経験者として
たぬきち25番
ファンタジー
流されるままに生きたノルン伯爵家の領主レオナルドは貢いだ女性に捨てられ、領政に失敗、全てを失い26年の生涯を自らの手で終えたはずだった。
だが――気が付くと時間が巻き戻っていた。
一度目では騙されて振られた。
さらに自分の力不足で全てを失った。
だが過去を知っている今、もうみじめな思いはしたくない。
※他サイト様にも公開しております。
※※皆様、ありがとう! HOTランキング1位に!!読んで下さって本当にありがとうございます!!※※
※※皆様、ありがとう! 完結ランキング(ファンタジー・SF部門)1位に!!読んで下さって本当にありがとうございます!!※※