ダンジョン発生から20年。いきなり玄関の前でゴブリンに遭遇してフリーズ中←今ココ

高遠まもる

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第1章

第44話

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 深夜、まさかの分配会議……しかしそれは拍子抜けするほどアッサリと終わる。

 兄がオレに分配権を丸投げしたからだ。
 父は兄に委任ということで先に就寝していた。
 妻もそれで良いということだったのだが……こう、スパッと任されてしまうと逆に悩むもので、しばらく1人、うんうんと頭を悩ませ、どうにか決まった時には、とっくに日付が変わっていた。

 こうして孤独に四苦八苦しながら決めた内容は……

 ゼラチンは義姉に。
 分配する場合の判断も一任(妻も腕前はともかく、お菓子作り自体は好き)。

 死蟷螂の護符は妻に。
 妻が留守番で兄が探索する場合は、兄が使う予定。
 オレ? オレの鎗は斬るのに向かない形状をしているので、ハナから除外している。

 獄蠍尾の護符は父の槍に。これで使い回しする
 必要性が無くなった。

 梟のピアス、耐痺のミサンガは、基本的には使い回すが、一応の所有権はオレにしておく。

 アジリティの指輪も2つ目なので、これは父が優先使用。元々あった物は妻に。

 例のスクロール、ポテンシャルキャンディ、ストレングスクッキーと、腕力と敏捷向上剤は、今回はオレに。
 ちょっとこの先に向かうには、力不足を感じていた。

 あ、でもスタミナマフィンは父に。
 父のスタミナは、全体のことを考えると、最重要強化目標の1つだ。
 妻は腕力。
 兄は武器強化。
 オレは……全体的に今一つかな?
 父の持久力に問題が無くなったら、そこ(オレのスタミナ)も課題として挙げられるポイントになるだろう。

 何かと粗が残る分配案だが、概ね良いだろう。
 既に寝ている妻と息子を起こさないように、川の字に並んで横たわると、やはり睡魔がすぐに押し寄せて来た。

 ◆

 オレが目を覚ますと、既に兄達は探索に向かっていた。
 どうやら気を使われてしまったらしい。

 母から分配案についての伝言を聞いたが、無事全面的に認められたようなので、朝食を手早く済ませて、さっそく割り当てられたアイテムの使用に取りかかる。
 お……このクッキー美味いな。

 今回は腕力向上剤、敏捷向上剤も使わせて貰っているので、探索での能力向上と合わせて、かなり実感できる変化が有った。

 このままでは上昇した能力に、こちらが振り回されかねないので、見回りと鍛練も兼ねて、外で鎗を振るうことにする。
 しばらく一心に鎗と戯れるが、手に慣れ親しんだハズの得物が、明らかに軽く感じてしまい戸惑うことになった。

 オレの得物は、これまで何度か述べたが総金属(鉄)性の短鎗だ。
 最初は柄が木製で、今より幾らか長い槍を使っていた。
 これは使っていくうちに不便を感じて、柄を徐々に短くしていき、今使っている長さに落ち着く。
 ここでプロの手に委ね、石突きなどの微調整や
柄の補強をして貰った槍を長らく愛用していた。
 ちょうど父が今現在、ダンジョンで振るっているだろう槍がそれだ。
 初めの動機は、ゴブリンの臭さや、恐ろしげなモンスターから距離を取りたくて使い始めた槍なのだが、慣れてくると元々の性格が前衛寄りだったのと、他のパーティメンバーが刀使い。弓使い。短剣とスローイングナイフの併用という構成だったので、いつの間にかオレの役割が短鎗で先陣……討ち漏らしや強敵を刀使いの友人が担当。弓使いが後衛から援護で、短剣使いは遊撃と斥候という役割分担が出来上がっていた。

 これが最初のうちは上手く回っていたが、徐々に討ち漏らしが増えて、刀使いの友人の負担が増加。
 結果として、攻撃力が不足していたオレの槍が、薙ぎ払いの威力増加や、一撃の威力向上を目指して、柄まで鉄製の鎗に変えられたという経緯がある。

 閑話休題それはともかく……

 非常に重たく、ともすれば振り回すより、振り回されかねなかった総鉄の短鎗が、今や恐ろしく軽い。
【槍術】スキルによって向上した技量を、僅かながら邪魔していた鎗の重さが、今は全くと言って良いほど感じられないのだ。

 自然と当初の目的すら忘れ、没頭するように技を磨き続けていたオレだったが、予期せぬ声にその手を止めることになった。

『スキル【槍術】のレベルが上がりました』

『スキル【解析者】の派生スキル:自習自得の心得を開放しました』

 は……派生スキルって何!?
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