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千崎愛葉
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時刻は午後16時、6限目の眠たい授業がようやく終わり、皆が部室へ家へと向かう準備に入る。部活に所属していない義一はホームルームが終わってすぐ、帰宅モードへシフトした。
「小太郎、帰るか。」
「ごめん義一。今日は久々部活行かないとなんだ。」
「ほんとに久々だな。一月振りくらいか。」
「漫画"研究部"だからね。半分非公認だとそんなもんさ。」
「まぁ用事があるなら。また明日な。」
「うん、また明日。」
久々に1人の帰宅時間、廊下の窓越し校庭で汗を流すサッカー部員や野球部員が義一の目に入った。先程漫研の部室へ向かう小太郎の背中を見て、小太郎にも自分とは違う、もう一つの居場所を持っているのだ。羨ましかったのだ。友人は少なくないものの、口下手なこともあって集団行動が苦手な義一は、入学当初より部活動から距離を置いていた。しかし、あのルーズの塊みたいな小太郎の、部活には誠実である姿が義一を奮い立たせた。まだ見ぬ自分の居場所が、これからもあるに違いない。スポーツは得意な方だし、まだ入学して半年も過ぎてない。部には迷惑がかかるかもしれないが、今からでも何処か部活に入ってみるべきかもしれない。そんな考えが義一の頭に浮かんだ、ちょうどその時であった。
「失礼ですが、あなた。ポケットの中のものを見せてくれませんか?」
義一の後ろから、1人の女子生徒が声をかけてきた。
「え? 」
「あなたが拾った水晶の欠片です!今すぐ返して下さい!」
背中半ばまである長い髪を振り、小柄な少女は義一に詰め寄る。着ている制服を見るに、この学校の生徒のようはないようだ。どこから進入したんだ。
「君は誰なんだ。こいつに用があるのか?」
ポケットから里中のものであろう欠片を取り出し、彼女に見せる。彼女のものなのだろうか、里中に没収でもされたか。
「それです!今すぐに渡してください、私の大事なものなんです! 」
名前も教えてくれなかった、彼女は相当に焦っているようだった。もしや犯罪に関わっているのか。
「君にも何か事情があったのだろうが、万引きは良くない。良かったら俺が一緒に謝りに行こう。」
「ふぇ⁈」
彼女の手を掴み、歩み出す義一。落とした万引き品がなんやかんや里中、そして俺に渡ってしまったんだろう。ちゃんと俺の所に物を取りに来たんだ、反省してこれからお店に返しに行くところなんだろう。心細かろう、せめて一緒に同席するのが武士道だろう。
「いや、万引きとかじゃなくて!ほんとに私のなんです! 大事な、 って話聞いてない顔してるよね君!?」
「なんでそんな大事なもの里中が持ってるのだ。」
歩を止めて、改めて尋ねる。
「...あの人に万引きされて。」
「言い訳雑か。」
必死に自分のものと訴える態度から、この水晶は彼女のものなのかもしれないとは感じていた。と同時に、この水晶は里中のものであるという感覚もあった。
「この水晶、確かに君のものなのかもしれない。でも、直感でなんだけど里中のものに違いなくも感じるんだ。」
長らく手に握っていたからなのか、水晶の放つ"気"のようなものが、義一の肌には感じられていた。そしてその"気"は、今現在の里中からは無くなってしまった、以前彼が放っていた不快感と同様のものであった。
「あの先生から無くなった不快感を、今度はこの水晶から感じる。そしてこれを自分のだと言い張る君がいる。君は一体何者なんだ?」
訴えるように彼女の瞳をじっと見つめる義一。彼の真剣さが伝わったのか、はたまた観念したのか、じっと深呼吸し義一の瞳を少女は見つめ返す。
「あなたの直感の通り、その水晶はあの人のものです。私はそれを形にしただけです。」
「形にした?」
「私の名前は千崎愛葉(せんざきまなは)。魂喰人と呼ばれる種族の1人です。」
「たまはみびと?」
「あなた達人間の魂を食べれる種族ということです。」
同刻、学校門裏。黒スーツに身を包んだ男の集団行動が、そこには居た。部下の1人が何かを確認したのを合図に、黒服達は喉元をゴクリと鳴らし、校内へと歩み出した。
「小太郎、帰るか。」
「ごめん義一。今日は久々部活行かないとなんだ。」
「ほんとに久々だな。一月振りくらいか。」
「漫画"研究部"だからね。半分非公認だとそんなもんさ。」
「まぁ用事があるなら。また明日な。」
「うん、また明日。」
久々に1人の帰宅時間、廊下の窓越し校庭で汗を流すサッカー部員や野球部員が義一の目に入った。先程漫研の部室へ向かう小太郎の背中を見て、小太郎にも自分とは違う、もう一つの居場所を持っているのだ。羨ましかったのだ。友人は少なくないものの、口下手なこともあって集団行動が苦手な義一は、入学当初より部活動から距離を置いていた。しかし、あのルーズの塊みたいな小太郎の、部活には誠実である姿が義一を奮い立たせた。まだ見ぬ自分の居場所が、これからもあるに違いない。スポーツは得意な方だし、まだ入学して半年も過ぎてない。部には迷惑がかかるかもしれないが、今からでも何処か部活に入ってみるべきかもしれない。そんな考えが義一の頭に浮かんだ、ちょうどその時であった。
「失礼ですが、あなた。ポケットの中のものを見せてくれませんか?」
義一の後ろから、1人の女子生徒が声をかけてきた。
「え? 」
「あなたが拾った水晶の欠片です!今すぐ返して下さい!」
背中半ばまである長い髪を振り、小柄な少女は義一に詰め寄る。着ている制服を見るに、この学校の生徒のようはないようだ。どこから進入したんだ。
「君は誰なんだ。こいつに用があるのか?」
ポケットから里中のものであろう欠片を取り出し、彼女に見せる。彼女のものなのだろうか、里中に没収でもされたか。
「それです!今すぐに渡してください、私の大事なものなんです! 」
名前も教えてくれなかった、彼女は相当に焦っているようだった。もしや犯罪に関わっているのか。
「君にも何か事情があったのだろうが、万引きは良くない。良かったら俺が一緒に謝りに行こう。」
「ふぇ⁈」
彼女の手を掴み、歩み出す義一。落とした万引き品がなんやかんや里中、そして俺に渡ってしまったんだろう。ちゃんと俺の所に物を取りに来たんだ、反省してこれからお店に返しに行くところなんだろう。心細かろう、せめて一緒に同席するのが武士道だろう。
「いや、万引きとかじゃなくて!ほんとに私のなんです! 大事な、 って話聞いてない顔してるよね君!?」
「なんでそんな大事なもの里中が持ってるのだ。」
歩を止めて、改めて尋ねる。
「...あの人に万引きされて。」
「言い訳雑か。」
必死に自分のものと訴える態度から、この水晶は彼女のものなのかもしれないとは感じていた。と同時に、この水晶は里中のものであるという感覚もあった。
「この水晶、確かに君のものなのかもしれない。でも、直感でなんだけど里中のものに違いなくも感じるんだ。」
長らく手に握っていたからなのか、水晶の放つ"気"のようなものが、義一の肌には感じられていた。そしてその"気"は、今現在の里中からは無くなってしまった、以前彼が放っていた不快感と同様のものであった。
「あの先生から無くなった不快感を、今度はこの水晶から感じる。そしてこれを自分のだと言い張る君がいる。君は一体何者なんだ?」
訴えるように彼女の瞳をじっと見つめる義一。彼の真剣さが伝わったのか、はたまた観念したのか、じっと深呼吸し義一の瞳を少女は見つめ返す。
「あなたの直感の通り、その水晶はあの人のものです。私はそれを形にしただけです。」
「形にした?」
「私の名前は千崎愛葉(せんざきまなは)。魂喰人と呼ばれる種族の1人です。」
「たまはみびと?」
「あなた達人間の魂を食べれる種族ということです。」
同刻、学校門裏。黒スーツに身を包んだ男の集団行動が、そこには居た。部下の1人が何かを確認したのを合図に、黒服達は喉元をゴクリと鳴らし、校内へと歩み出した。
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