異世界でも働きたくないので、辺境貴族の末っ子としてもふもふと昼寝します

おまる

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第1部:ゆるふわスローライフの幕開け ~元社畜、もふもふと家族に溺愛される最高の異世界生活、始めました~

第11話:家族公認の相棒爆誕!一家にもふもふブーム到来か!?母様も何か気づいた?

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 モルが俺の部屋にやってきてから数日。
 俺の生活は、モル中心に回り始めていた。
 朝起きればまずモルの様子を確認し、食事の時にはおすそ分けをし、昼間は一緒に日向ぼっこをしたり、部屋の中で追いかけっこ(というより、俺がモルを追いかけるだけだが)をしたり。
 夜は、俺のベッドの足元に作ったモル専用の寝床(もちろん俺の『魔法』で超ふかふか仕様だ)で、一緒に眠りにつく。

(モルがいるだけで、こんなにも毎日が楽しいなんて……)

 前世では考えられなかった、穏やかで満たされた日々。
 その中心には、いつもこの小さな銀色の毛玉がいた。

 最初のうちは、マリー以外の家族にはモルの存在を隠していた。
 なんとなく、この幸せを独り占めしたかったというのもあるし、何より、家族にモルを見られたら、どんな反応をされるか分からなかったからだ。
 特に父ライオネルは、貴族としての体面を気にするタイプかもしれないし、母セレスティーナは、衛生面とかで心配するかもしれない。

 だが、いつまでも隠し通せるものでもない。
 ある日、姉のセシルがいつものように俺の部屋に遊びに来た時、ついにモルの存在がバレてしまった。

「あら、ルークちゃん、その子は……?」

 セシルは、俺の膝の上で丸くなっているモルを見て、驚いたように目を丸くした。
 俺は慌てて言い訳をしようとしたが、モルはそんな俺の心配をよそに、セシルに向かって「きゅい?」と可愛らしく首を傾げた。

 その瞬間、セシルの表情が、ふにゃり、と崩れた。

「か、可愛い……!なんて愛らしい子なの……!」

 彼女は、うっとりとした表情でモルを見つめ、そっと手を伸ばしてきた。
 モルも警戒する様子なく、セシルの指先の匂いをくんくんと嗅いでいる。

「この子、どこから来たの?お名前は?」

「えっと……モル、っていうんだ。いつの間にか、部屋にいたんだよ」

 しどろもどろに答える俺。
 セシルは、モルの銀色の毛並みを優しく撫でながら、深いため息をついた。

「なんて綺麗な毛並み……それに、この子、なんだかとても不思議な雰囲気を持っているわね……ルークちゃんと出会うなんて、本当に特別な縁なのかしら」

 その言葉には、どこか意味深な響きがあったような気がしたが、俺は気づかないふりをした。

 セシルを通じて、モルの存在はあっという間に家族中に知れ渡った。
 最初に部屋にやってきたのは、母セレスティーナだった。
 彼女は、モルを一目見るなり、

「まあ!なんて可愛らしい……!まるで、物語に出てくる妖精の使いのようだわ!」

 と、両手を胸の前で組んで感激している。
 衛生面の心配など、どこ吹く風だ。
 むしろ、「こんなに綺麗で賢そうな子なら、きっとルークの良いお友達になれるわね」と、大歓迎ムードである。

 父ライオネルも、最初は少し驚いた顔をしていたが、モルが俺にすっかり懐いている様子や、その人懐っこい仕草を見ると、すぐに目尻を下げた。

「ほう……これはまた、珍しい客人が来たものだな。ルーク、お前が気に入ったのなら、この家で飼っても構わんぞ」

 あっさりと、家族の一員として認められてしまった。

 兄たちも同様だった。
 長兄アランは、普段の真面目な顔はどこへやら、モルを撫でながら「これは……確かに癒されるな……」と呟き、次兄ベルトランに至っては、「おお!こいつはすばしっこそうだ!一緒に訓練するか!?」と、若干迷惑な提案をしてくる始末だ(もちろん丁重にお断りした)。

 メイド長マーサも、最初は「坊ちゃまのお部屋に動物を…」と少し渋い顔をしていたが、モルがルークの側で幸せそうにしているのを見て、すぐに表情を和らげた。
 マリーは、言わずもがな、モルの可愛らしさにメロメロで、率先してモルの世話まで焼こうとしてくれる。

 こうして、モルは、あっという間にクライネル家公認の相棒となった。
 誰もがモルを可愛がり、その存在を温かく受け入れてくれた。
 それは、俺にとって望外の喜びだった。

「よかったな、モル。みんな、お前のことが大好きみたいだぞ」

 その夜、俺は自分のベッドで、隣に作ったモルの寝床に語りかけた。
 モルは、俺の言葉が分かったかのように「きゅい」と鳴き、俺の指に小さな頭をすり寄せてくる。

(この幸せが、ずっと続けばいいな……)

 腕の中の温かさを感じながら、俺は心からそう願った。
 モルとの、そしてこの優しい家族との、ゆるふわな毎日。
 それが、今の俺にとって、何よりも大切な宝物だった。
 母セレスティーナが、モルを撫でながら「この子……なんだか、普通の動物とは違う、不思議な力を持っているような気がするのよねぇ……ルークと出会ったのも、きっと何かのお導きよ」と意味深に呟いていたことなど、俺の耳には届いていなかった。
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