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本編
44 エミリオの決意
葬儀の準備にシュクラ神殿に着いた早々、聖人の一人から「ドラゴネッティ卿にお客様がいらしております」と告げられ、今現在聖堂のほうでシュクラと歓談していると言われてそちらに向かった。
「おはようございますシュクラ様」
「おお、おはよう。ドラゴネッティ卿に客人じゃ」
聖堂に入ったエミリオを見たシュクラに手招きされて入る。シュクラは葬儀前のため、司祭帽は脇に置いて、司祭服はシャツのボタンを第三ボタンくらいまで開け放ったちょっとだらしない恰好をしていた。相変わらずオンとオフの差が激しい神様だなあとエミリオは思う。
祭壇前の椅子にシュクラ、その向かいにある席に座った男性がエミリオを見て立ちあがった。
「お久しぶりです、師団長。ああ、ご無事で何よりです」
「お前は……ロドリゴじゃないか!」
客人というのは、王都騎士団の魔法第三師団、つまりエミリオの師団に所属している魔術師で、副師団長ロドリゴ・エッカルトその人であった。
エミリオがシャガ地方のモンスター討伐隊に抜擢されたあと、エミリオに代わって第三師団を任されていた、エミリオの頼りになる部下である。
「あれから師団長より手紙が届くまで生きた心地がしませんでした。魔法師団の皆もエミリオ師団長が死ぬわけないと信じておりましたが、何より大けがをして転移してきた討伐隊の数人が今からでも助けにいくと聞かなくて治療院で暴れたとのことで……」
「その、王都へ転移させた連中は、皆無事か?」
「ええ。師団長のおかげで、皆大けがではありましたが命に別状はありませんとのことでした。皆治療院で必死にリハビリをしております。そんな中、師団長から無事との手紙が届いて皆安堵しておりましたよ」
「魔力枯渇で死にかけたがな」
一度は二割程度まで回復したが、昨日のサルベージで再び一割を切ってしまってカツカツ状態だと言うエミリオの顔色はやや青い。ロドリゴは「そうでしたか……」と悲痛そうに肩を落とした。
「というわけで、まだ療養が必要らしく、王都へ戻るのは先になると思う。お前にはまた負担をかけてしまうことになるが、第三師団を頼むな」
「ええ、お任せください。でも、ちゃんと戻られますよね?」
「え? ああ……」
「なんですか、その気のない返事」
「いや、戻るよ。戻るけど」
エミリオは、ロドリゴを見て自分が王都へ残してきたものを今頃思い出してきた。
そうだ、自分は王都の騎士団所属の魔術師であり、ずっとこのシャガ地方に居られるわけではないのだ。魔力さえ回復したら、王都に戻って、国のために魔術研究の仕事に戻らないといけない。
改めて考えると、やたらとこの地を離れがたい思いが沸き上がる。
――スイのこと。
――彼女は、俺が王都へ帰るとなったら喜ぶだろうか、寂しがるだろうか。
「シュクラ様のところに滞在されているということで、今日はシュクラ様にまずご挨拶をと。その……師団長は今シュクラ様のご令嬢のところでご厄介になっていらっしゃるとか……」
「ぶふっ……」
「はっはっはっは。照れることはあるまい、ドラゴネッティ卿。我が娘も憎からず思うておるわ」
「は、はあ……」
相変わらず底抜けの明るさで、神の一柱とはいえ人に対して気さくすぎるくらいなシュクラがカラカラと笑う。ロドリゴが困ったような変な顔をしたけれど、それ以上のことは掘り下げないで欲しいと思ったエミリオであった。
気を取り直して話題をさりげなく変えるとエミリオはロドリゴに話を向けた。
「ああ、ロドリゴ丁度良かった。これから亡くなった討伐隊の葬儀があるんだ。騎士団として一緒に参加してくれないか?」
「ええ、もちろんです。詳細は聞いております。準備はこれからでしょうか。何かお手伝いを」
「そうだな……」
「あと、師団長もう一つ」
「うん?」
「のちほどお話が。葬儀のあとでかまいませんので、お時間をいただけますか」
「え、ああうん」
シュクラ神殿において行う討伐隊の犠牲者の葬儀は、当初参列するのはエミリオただ一人であったのだが、こうして同じ騎士団所属のエミリオの部下も参列してくれることとなった。王都ではないためたった二人しか参列者のいない葬儀ではあるけれど、あの暗いダンジョンで人知れず葬られて忘れられるよりはよっぽどいいだろう。
祭壇前に昨日サルベージしてきて、その後綺麗に清拭された犠牲者たちの遺骨、装備などの遺品、そしてミスリル銀製のネームプレートのネックレスが並べられて、葬儀は始まった。
土地神シュクラによるパブロ聖典の朗読、犠牲者たちのプロフィールを読み上げてから彼らの魂に永遠なれと聖人、聖女たちによる鎮魂の祈りの言葉がささげられた。
そのあと遺骨や遺品それぞれに、シュクラ自らが祈りをささげた聖水を、邪気を払うシダの葉に含ませて振りかけた。
そして土地神シュクラからの説法、シュクラと聖人、聖女たちによる鎮魂の歌の斉唱。
光あれ。光あれ。永遠なれ。永遠なれと。
葬儀のあと、遺品はロドリゴが王都へ持ち帰ってくれることになった。それぞれ埋葬布をかけて名前を書いた紙を貼り、丁重にロドリゴの乗ってきた馬車に積まれていく。
葬儀が終わってからエミリオはようやく気が抜けた状態になり、仲間を失った悲しみと今までの疲れがどっと押し寄せる感じと、魔力枯渇による頭痛で、聖堂の席に座り込んでしまった。
「師団長、大丈夫ですか? はい、お水をもらってまいりました」
「ああ、すまん。ありがとう……」
「お疲れのところ申し訳ありませんが、今お話よろしいでしょうか」
「ああ……そんなこと言ってたな。一体なんだ?」
「実は……騎士団第二部隊長、クアス・カイラード卿の処罰についてです」
「クアスの……処罰?」
クアス・カイラードというのは、今回のモンスター討伐隊の隊長を任じられた騎士で、エミリオの親友でもある男だ。金髪碧眼の見目麗しい男だが、剣の腕は折り紙付きで、騎士団でも実力ナンバー1の騎士であった。
先日のモンスター討伐においての総隊長を任じられていた男で、大勢の仲間が犠牲になったあの現場において、エミリオが王都へ転移魔法を使って緊急脱出させたメンバーの中で、最後まで残ると言い張っていて、「無茶だエミリオやめろ、やめてくれ!」と泣き叫びながら王都へ転移していった。
あれから彼はどうなったのか。
「カイラード卿は、今回のモンスター討伐隊の任務失敗による責任を取らされて、地下牢へ入れられました」
「ち、地下牢だと!?」
「エミリオ師団長、貴方をただ一人置いてのこのこと帰還してきたと、国王陛下と騎士団長が大層お怒りで……」
「なっ……あれは仕方が無かったことなのに……! 総隊長であるクアスが死んだらそれこそ士気が下がってしまうから、残った皆を救うにはああするしかなかったというのに……!」
「貴方は王国でも稀な規格外の魔力持ちの大魔術師です。言ってみればカイラード卿よりも代えの効かないお方と、上の方々の見解でしょう。そんなあなたを犠牲にして帰ってきたとして、相当に叱咤されておりました」
「し、しかし、俺はこうして生きている! それを知らせたというのに何故クアスが牢に繋がれねばならない!」
「……師団長の魔力枯渇」
「はっ?」
「その魔力枯渇を起こさせて、死ぬ寸前まで陥らせたと。貴方程の魔力を持つ人が魔力枯渇を起こしたら、回復させるのに何年かかるとお思いですか。貴方の損失は王国における大損害でしょう」
「……ロドリゴ、お前もクアスが悪いと思っているのか」
「……だってそうでしょう! 聞けばこちらの冒険者ギルドにマッパーのサポートなど不要と啖呵を切ったそうじゃありませんか」
「……」
確かに王都騎士団のプライドというか、辺境のダンジョンを侮ってギルドのサポートを断ったのは問題であったかもしれない。功を焦ったクアスに問題があったのは確実だ。
しかしあのダンジョンが二重ダンジョンになっていたなんて情報は一切なかったし、モンスターは想定外に強敵だったのだ。
それにエミリオは自分の意思で転移魔法を使ったのであって、クアスは最後まで反対していたのだ。罰せられるならそれだけの魔力を持ちながら三十人以上の仲間を守れなかったエミリオも同罪だろう。なぜクアスのみが罰せられるのか。
「後程カイラード卿は毒杯を賜ることになるそうです。処刑ではなく自害をさせるのは今まで国に貢献してきたことに敬意を表してのことですが」
「……そんなもの、処刑と変わらないじゃないか!」
「三十人近い仲間を失い、さらに貴方という貴重な大魔術師の力をこの先何年も失わせたのですから、仕方ないことだと。それに、カイラード卿も既に覚悟の上だそうです」
「そんな……なんてことだ」
パブロ王国は魔法を使う能力を持つ魔術師をとても大切にしている。その中でも、パブロ王国屈指の魔力を持つエミリオの存在は大きかったらしい。騎士団第一師団長の命よりも。
「……俺が、王都へ無事に戻ればクアスは助かるのか。俺が無事に帰って、それで上を説得しさえすれば……!」
「……貴方が魔力枯渇に陥っていなければあるいは、助かるかもしれませんが。……ですが無理でしょう。普通に考えてすぐに回復させるのは。六万強もある貴方の魔力を回復させるのに何年かかると思っているのですか……普通に考えて無理です」
「……無理じゃない……」
「えっ……?」
エミリオは立ち上がってロドリゴに背を向け、数歩出口に向かって歩いてからおもむろに振り返った。
「……この数日のうちに完全回復して必ず王都へ帰ると誓う。ロドリゴ、お前が馬車で王都へ戻るころには俺も転移で王都へ帰る」
「な……どうやって……ま、まさか」
「ロドリゴ、頼みがある。俺が帰るまで、なんとか上にかけあってクアスの自害を思いとどまらせてくれないか?」
「師団長……?」
「頼む……」
「おはようございますシュクラ様」
「おお、おはよう。ドラゴネッティ卿に客人じゃ」
聖堂に入ったエミリオを見たシュクラに手招きされて入る。シュクラは葬儀前のため、司祭帽は脇に置いて、司祭服はシャツのボタンを第三ボタンくらいまで開け放ったちょっとだらしない恰好をしていた。相変わらずオンとオフの差が激しい神様だなあとエミリオは思う。
祭壇前の椅子にシュクラ、その向かいにある席に座った男性がエミリオを見て立ちあがった。
「お久しぶりです、師団長。ああ、ご無事で何よりです」
「お前は……ロドリゴじゃないか!」
客人というのは、王都騎士団の魔法第三師団、つまりエミリオの師団に所属している魔術師で、副師団長ロドリゴ・エッカルトその人であった。
エミリオがシャガ地方のモンスター討伐隊に抜擢されたあと、エミリオに代わって第三師団を任されていた、エミリオの頼りになる部下である。
「あれから師団長より手紙が届くまで生きた心地がしませんでした。魔法師団の皆もエミリオ師団長が死ぬわけないと信じておりましたが、何より大けがをして転移してきた討伐隊の数人が今からでも助けにいくと聞かなくて治療院で暴れたとのことで……」
「その、王都へ転移させた連中は、皆無事か?」
「ええ。師団長のおかげで、皆大けがではありましたが命に別状はありませんとのことでした。皆治療院で必死にリハビリをしております。そんな中、師団長から無事との手紙が届いて皆安堵しておりましたよ」
「魔力枯渇で死にかけたがな」
一度は二割程度まで回復したが、昨日のサルベージで再び一割を切ってしまってカツカツ状態だと言うエミリオの顔色はやや青い。ロドリゴは「そうでしたか……」と悲痛そうに肩を落とした。
「というわけで、まだ療養が必要らしく、王都へ戻るのは先になると思う。お前にはまた負担をかけてしまうことになるが、第三師団を頼むな」
「ええ、お任せください。でも、ちゃんと戻られますよね?」
「え? ああ……」
「なんですか、その気のない返事」
「いや、戻るよ。戻るけど」
エミリオは、ロドリゴを見て自分が王都へ残してきたものを今頃思い出してきた。
そうだ、自分は王都の騎士団所属の魔術師であり、ずっとこのシャガ地方に居られるわけではないのだ。魔力さえ回復したら、王都に戻って、国のために魔術研究の仕事に戻らないといけない。
改めて考えると、やたらとこの地を離れがたい思いが沸き上がる。
――スイのこと。
――彼女は、俺が王都へ帰るとなったら喜ぶだろうか、寂しがるだろうか。
「シュクラ様のところに滞在されているということで、今日はシュクラ様にまずご挨拶をと。その……師団長は今シュクラ様のご令嬢のところでご厄介になっていらっしゃるとか……」
「ぶふっ……」
「はっはっはっは。照れることはあるまい、ドラゴネッティ卿。我が娘も憎からず思うておるわ」
「は、はあ……」
相変わらず底抜けの明るさで、神の一柱とはいえ人に対して気さくすぎるくらいなシュクラがカラカラと笑う。ロドリゴが困ったような変な顔をしたけれど、それ以上のことは掘り下げないで欲しいと思ったエミリオであった。
気を取り直して話題をさりげなく変えるとエミリオはロドリゴに話を向けた。
「ああ、ロドリゴ丁度良かった。これから亡くなった討伐隊の葬儀があるんだ。騎士団として一緒に参加してくれないか?」
「ええ、もちろんです。詳細は聞いております。準備はこれからでしょうか。何かお手伝いを」
「そうだな……」
「あと、師団長もう一つ」
「うん?」
「のちほどお話が。葬儀のあとでかまいませんので、お時間をいただけますか」
「え、ああうん」
シュクラ神殿において行う討伐隊の犠牲者の葬儀は、当初参列するのはエミリオただ一人であったのだが、こうして同じ騎士団所属のエミリオの部下も参列してくれることとなった。王都ではないためたった二人しか参列者のいない葬儀ではあるけれど、あの暗いダンジョンで人知れず葬られて忘れられるよりはよっぽどいいだろう。
祭壇前に昨日サルベージしてきて、その後綺麗に清拭された犠牲者たちの遺骨、装備などの遺品、そしてミスリル銀製のネームプレートのネックレスが並べられて、葬儀は始まった。
土地神シュクラによるパブロ聖典の朗読、犠牲者たちのプロフィールを読み上げてから彼らの魂に永遠なれと聖人、聖女たちによる鎮魂の祈りの言葉がささげられた。
そのあと遺骨や遺品それぞれに、シュクラ自らが祈りをささげた聖水を、邪気を払うシダの葉に含ませて振りかけた。
そして土地神シュクラからの説法、シュクラと聖人、聖女たちによる鎮魂の歌の斉唱。
光あれ。光あれ。永遠なれ。永遠なれと。
葬儀のあと、遺品はロドリゴが王都へ持ち帰ってくれることになった。それぞれ埋葬布をかけて名前を書いた紙を貼り、丁重にロドリゴの乗ってきた馬車に積まれていく。
葬儀が終わってからエミリオはようやく気が抜けた状態になり、仲間を失った悲しみと今までの疲れがどっと押し寄せる感じと、魔力枯渇による頭痛で、聖堂の席に座り込んでしまった。
「師団長、大丈夫ですか? はい、お水をもらってまいりました」
「ああ、すまん。ありがとう……」
「お疲れのところ申し訳ありませんが、今お話よろしいでしょうか」
「ああ……そんなこと言ってたな。一体なんだ?」
「実は……騎士団第二部隊長、クアス・カイラード卿の処罰についてです」
「クアスの……処罰?」
クアス・カイラードというのは、今回のモンスター討伐隊の隊長を任じられた騎士で、エミリオの親友でもある男だ。金髪碧眼の見目麗しい男だが、剣の腕は折り紙付きで、騎士団でも実力ナンバー1の騎士であった。
先日のモンスター討伐においての総隊長を任じられていた男で、大勢の仲間が犠牲になったあの現場において、エミリオが王都へ転移魔法を使って緊急脱出させたメンバーの中で、最後まで残ると言い張っていて、「無茶だエミリオやめろ、やめてくれ!」と泣き叫びながら王都へ転移していった。
あれから彼はどうなったのか。
「カイラード卿は、今回のモンスター討伐隊の任務失敗による責任を取らされて、地下牢へ入れられました」
「ち、地下牢だと!?」
「エミリオ師団長、貴方をただ一人置いてのこのこと帰還してきたと、国王陛下と騎士団長が大層お怒りで……」
「なっ……あれは仕方が無かったことなのに……! 総隊長であるクアスが死んだらそれこそ士気が下がってしまうから、残った皆を救うにはああするしかなかったというのに……!」
「貴方は王国でも稀な規格外の魔力持ちの大魔術師です。言ってみればカイラード卿よりも代えの効かないお方と、上の方々の見解でしょう。そんなあなたを犠牲にして帰ってきたとして、相当に叱咤されておりました」
「し、しかし、俺はこうして生きている! それを知らせたというのに何故クアスが牢に繋がれねばならない!」
「……師団長の魔力枯渇」
「はっ?」
「その魔力枯渇を起こさせて、死ぬ寸前まで陥らせたと。貴方程の魔力を持つ人が魔力枯渇を起こしたら、回復させるのに何年かかるとお思いですか。貴方の損失は王国における大損害でしょう」
「……ロドリゴ、お前もクアスが悪いと思っているのか」
「……だってそうでしょう! 聞けばこちらの冒険者ギルドにマッパーのサポートなど不要と啖呵を切ったそうじゃありませんか」
「……」
確かに王都騎士団のプライドというか、辺境のダンジョンを侮ってギルドのサポートを断ったのは問題であったかもしれない。功を焦ったクアスに問題があったのは確実だ。
しかしあのダンジョンが二重ダンジョンになっていたなんて情報は一切なかったし、モンスターは想定外に強敵だったのだ。
それにエミリオは自分の意思で転移魔法を使ったのであって、クアスは最後まで反対していたのだ。罰せられるならそれだけの魔力を持ちながら三十人以上の仲間を守れなかったエミリオも同罪だろう。なぜクアスのみが罰せられるのか。
「後程カイラード卿は毒杯を賜ることになるそうです。処刑ではなく自害をさせるのは今まで国に貢献してきたことに敬意を表してのことですが」
「……そんなもの、処刑と変わらないじゃないか!」
「三十人近い仲間を失い、さらに貴方という貴重な大魔術師の力をこの先何年も失わせたのですから、仕方ないことだと。それに、カイラード卿も既に覚悟の上だそうです」
「そんな……なんてことだ」
パブロ王国は魔法を使う能力を持つ魔術師をとても大切にしている。その中でも、パブロ王国屈指の魔力を持つエミリオの存在は大きかったらしい。騎士団第一師団長の命よりも。
「……俺が、王都へ無事に戻ればクアスは助かるのか。俺が無事に帰って、それで上を説得しさえすれば……!」
「……貴方が魔力枯渇に陥っていなければあるいは、助かるかもしれませんが。……ですが無理でしょう。普通に考えてすぐに回復させるのは。六万強もある貴方の魔力を回復させるのに何年かかると思っているのですか……普通に考えて無理です」
「……無理じゃない……」
「えっ……?」
エミリオは立ち上がってロドリゴに背を向け、数歩出口に向かって歩いてからおもむろに振り返った。
「……この数日のうちに完全回復して必ず王都へ帰ると誓う。ロドリゴ、お前が馬車で王都へ戻るころには俺も転移で王都へ帰る」
「な……どうやって……ま、まさか」
「ロドリゴ、頼みがある。俺が帰るまで、なんとか上にかけあってクアスの自害を思いとどまらせてくれないか?」
「師団長……?」
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