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第2章 学院生活の始まり

21.打ち上げは

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 観客席を出て準決勝へと向かう。

『あいつらと当たったら終わりだよね』『なんであんなに強いんだよ』『見なくても前回の強さ見せられたら向こうの負けだよね』等と観客席から声が上がる。しかし、油断はできない。

 前回のグループも普通に戦っていればなかなかいい勝負に持ち込まれるはずだったが俺による不意討ち、転移により間合いを詰められた結果として圧倒できた。
 そのままでは、成長できないので今回は剣術だけで殺ろうと思う。

 このことは昨日エンセリアたちと確認済みだ。

 ブザーの音が響く。

「では、今回はお互いに援護は期待しないように宜しく」

「うん」
「分かりました」
「そのつもりで頑張るぞ」

 音が止った。それを合図に闘技場を駆けながら自身に身体強化、剣にはもともと|魔法付与__マジック・エンチャント__#に更に俺以外による、魔法を大抵は打ち消せる魔法をかける。

 敵方も、黙って近づいてくるのを見ているわけもなく炎やら槍等が飛んでくる。どれも、殆どの魔物は一発で仕留められるくらいの威力だ。

 しかしそんなものは、俺たちに当たるわけもなく10秒ほどで敵は接近を許してしまう。

 最初は1番近くに居た俺を全員で集中的に狙っていたものの、他の3人も到着して一対一になる。

 魔法が俺に斬られていることに気づいたのか途中から剣に、俺の相手は変えた。そいつは同年代とは思えないほど背が高く、先生ほどではないがごついバリバリの漢だ。向こうは俺に負けないほど大きな大剣を構え斬りかかってくる。(威圧感半端ねーな)

 しかし、俺の今の見た目は可愛らしい小さな女の子だ。
 手を少し抜いていたのか、ダメージを押さえるためなのか、俺が割と本気目で剣を弾き返すと後方に飛んだ。

 立て続けに、崩れた姿勢を瞬時に再び直し、俺に大剣を振り下ろす。
 今度は弾かずに剣の勢いを後ろにやり、そのまま流れるような動作でやつの胴体切り飛ばした。(実際には直ぐに光の粒子になって、返り血を浴びるなどグロいことにはならずに済みました。良かった、良かった)

 まだ、金属がぶつかり合う、音が聞こえたので3人の様子を見ると全員上手く優勢にたっており俺が介入する必要は無さそうだ。

 俺はすぐに倒してしまったが、3人は数分かかるも倒した。


 これで決勝戦進出だ。

 俺たちの番が終わり観客席に戻るなり、『剣でも圧倒できるのか』『これは、優勝確実ですね』『あの剣は飾りじゃないのか……』 とざわついていた。
 しかし、俺たちに直接話しかけてくるものは居なかった。話しかけづらいのかな。

 まあ、それはさておき俺たちと戦うグループの戦いを見なければ。


 今、E対Cで戦っている。
 しかし、よく見ていると一人だけ可笑しなほど馬鹿げた魔力量を持つ奴がいる。昨日は目立った動きもせず特に意識していなかったが、準決勝ということもあり人の魔力保有量を見通す魔法を使って見た結果だ。

 俺と同じくらい小さい青い髪の女の子だ。

 気が付くと勝敗はすぐに着いていた。
 結果はやはり、青色の髪の子が居たグループだ。


 そして、俺たちの番が来る。

 カリスたちにその子の相手は俺がすると伝えた。カリスたちだと少し厳しい相手かもしれないからだ。



 試合は開始した。
 俺は真っ先にその子目掛けて、体当たりをしてそいつのグループから引き離した。これで一対一だ。

「っく……いてて」

 結構ダメージがいってしまったようだ。申し訳ない。

 回復魔法をかけてあげながら、自分の目の前に爆発を起こし、吹き飛ばされる振りをして距離をおいた。

 爆発によって視界が悪くなり、俺は後ろにまわられてしまった。(来てたの分かってましたけど)今まで圧勝してきたのに、パッとやられるよりは少し耐えてやられた方が向こうにとってもいいだろうし、俺としても攻撃とかがどんなものなのか少し気になる。というわけでこのような行動に至ったという訳だ。

 背後からの水の刃の魔法を攻撃を躱し、即死耐性を持つ人も9割方殺せる高位の即死魔法を放つ。これが1番痛みとか無さそうだしほぼ確実だしね。

 すぐに光の粒子となってしまった。
 カリスたちも終わらせていて、勝負は俺たちの圧勝だ。このグループ強すぎない?

「この戦いはBグループの優勝だ。明日からは普通に座学もやっていくからそのつもりで。早いかもしれないが今日はこれで授業は終わりだ」

 座学とか面倒過ぎる……。まあ、テキトーに頑張っておくか。


「余裕で優勝しちゃったね!」

「ボクたちで夕方打ち上げでもしようよ」

 楽しそうになってきたな。

「いいですね。どこでやりましょうか?」

「あの店でやろう!私たちが入っても違和感なさそうだし」

 打ち上げか。会社のときは俺は上司に気を使ってばかりで正直負担の方が大きかったが、今日の打ち上げはそうはならない。

「そうだな。ボクもそれでいいと思うな」

「二人もそれでいい?」

「ボクは打ち上げが出来るなら構わないぞ」

「私も、そのお店でいいと思います」

 エンセリアとティアナもどうやら賛成のようだ。


 ◇

 カラッ、カラン

「いらっしゃいませ!今、お席の方にご案内致します」

 俺たちはまだ、4時を過ぎた頃なのにもう店に来ている。理由としては、学院が午前中で終わりだったことと、特にやることもあまり無かったからだ。

 店員さんに4人掛けのボックス席に案内される。

 言ってなかったがこの店は《サラマン》という店名で今はこうして、パッと席に案内されたが夕方頃からは行列がどんどん出来てしまい、整理券を配ってラストオーダーより大分前にその日の分を締め切ってしまうことはザラにあるらしい。

 まあ、偶然ではあったが非常にラッキーなことだ。

 内装は落ち着いた雰囲気の喫茶店のようだ。前行ったTHE男の酒場とは違い、まだ人はあまり多くないものの騒がしい感じはなく、お洒落である。だからと言って、堅苦しい感じも無く、店員さんもみんな明るく接しやすいので、気軽に足を運べそうだ。
 よし、ここの常連になろうか。

 観察もここまでにしてそろそろ、何を食べるか決めないとな。

 俺は、全員に1つずつ配られたオーダー表を手に取りどんなものがあるか目を通してみる。

 なるほど、なるほど。
 メニューには、パスタ、サンドイッチ、オムライス、ビーフチシュー、パンケーキ―――ってカフェメニューかよ!しかも、どれも女性向けのようだな。減塩とか低脂肪まで書いてあるし。
 昔、たまには会社の昼休みに食堂に向かわずに外の店に向かったことがある。そのときに行ったカフェと似ている気がする。しかし、ではなくこれがこの世界でいうカフェなのかもしれない。
 実際客層も、女性の方が多い気がする。

 取り敢えず、俺はオムライスにする。それと飲み物は、本日おすすめの紅茶にした。流石に、カフェ・ラテとかハーブティーは無かった。さて、どんな紅茶が来るかな?

 みんなも決まったようなので、俺たちは注文をした。

 カリスはパスタ、エンセリアはローストビーフ、ティアナはサンドイッチ。
 なんか、打ち上げというか女子会っぽくない?いや、行ったことないからよく知らないけどさ。


 しばらくして、料理と飲み物が届く。どれも、サラダがセットで付いてくるんだね。

 すると、なんか皆俺の方を見て待ってる。

「え?どうしたんだ?」

 俺は、いきなり自分に視線が集まったことに対しての理由が見つからず尋ねる。

「だって、こういうときって活躍した人が乾杯とか言うんじゃないの?」

「そうですよ。セシリアさんがこのパーティーで1番強いと私は思います」

「そうだぞ。セシリアが音頭をとらないと始まらないぞ」

 そういう、幹事みたいな経験無いんですが。まあ、しょうがないか。

「じゃあ、飲み物を持ってくれ。今日は、学校のクラス内の対抗戦において優勝したことを祝して乾杯!」

「「乾杯!」」


 やっぱ、このみんなといると楽しいな。



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ありがとうございます。今後も頑張って書いていこうと思うので、どうぞよろしくお願いします。
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