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第2章 学院生活の始まり

22.森で見つけたもの

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 今日は学校もなく、カルゼシアの森で4人で森の奥の方を探検している。
 これは、瞬間移動が可能だからできることだから、魔法に感謝だ。そうでなければ日帰りでというのはなかなか厳しいこととなる。

「どこか、暗いですね。魔物は手応えがありいいのですが……」

 風が森を吹き抜ける度に木がカサカサと音を立て、日もあまり差してこないので薄暗い。何か起きそうなくらい不気味だ。

「確かに少し不気味だな」

「あ、あれ洞窟!どうする入る?」

 カリスがなにやら、森の中に洞窟を見つけたらしい。魔法で罠ではないか確認するが特に異常はなく、入っても問題はなさそうだ。

「あの中に入るのか。ワクワクしてくるぞ」

「罠も無いようだし、入ってみるか」

 宝箱とかあるかな?勿論、罠じゃないか確認してからだけどね。



 魔法で辺りを照らしながら歩いていく。
 中に入って300メートルくらい歩いただろうか。しかし、魔物とはまだ何もあっていない。

 もしかしたら、昔の発掘跡地で今は使われてない坑道かな。



 ……っ!! 

「ボクの探知魔法に魔物が引っ掛かった。規模は3匹程だが魔力量が普通の魔物とは桁違いだから、気を付けろ」

 魔物の反応があったためみんなに注意するよう声を掛ける。

 通路を歩いていると、微かだが此方に何かが近づいてくる足音が聞こえてきた。ここに入ってきた魔物はこいつらに追い出されたか殺されて、入り口からいなかったということなら分からなくもない。

「そこの横に枝分かれしているところに3匹待ち伏せしている。今から囮の人形に先に行かせるから、それに引っ掛かったところを仕留めよう」

 即席で、シルエットだけは完全に人型で人間と同じくらいの赤外線も放つので大抵の獲物には見分けが殆どつかないだろう。

 そいつにスタスタと先を歩かせていく。

 枝分かれの地点にもうすぐ差し掛かる………あれ、通りすぎ―――?!

 まさか、背後から狙うとは。
 ここまで、手馴れていると過去にここに来た冒険者もこんな感じでやられていったのかもしれない。怖い、怖い。

「「ガブッ、ガブ、グジャ」」

 あー、音しないタイプの囮を作ればよかった。音がなんかグロいです。

「今のうちに、畳み掛けるからな」

 氷の槍やら、炎の球、風の刃等、兎に角攻撃をしまくった。こんなに攻撃しなくても……良かったんじゃないか?オーバーキルは極力控えた方がいい気がするけど、そこまで自分達自身を追い込む訓練にするつもりは無いので今回は安全第一ということで確実に仕留める方針にするつもりだったしこれでいいっか。

 攻撃の嵐で土煙が上がり見えなかった景色が段々と見えてくる。

 魔物が3匹倒れている。
 どうやら、さっきの魔物は倒せたようだ。

「どっちに行きますか?」

「ん~、真っ直ぐそのまま行こう。みんなそれでいい?」



 結果、今分岐点を真っ直ぐ進むことにした。


「ほんとになにもないな」

「そうだね」

 洞窟の中には俺たちの足音のみしか、聞こえない。

 しかし、その一方灯りの魔法が無ければ真っ暗なこの洞窟に遠くから光が見えてきた。出口の光だろうか。

「出口かな?」

「出口っぽいね」

 俺たちはその光に吸い込まれるように歩いて行くのであった。

 ◇

 光の先は…………森だ。

 特殊な森?全然違場所の森?
 どれも違う。ただ普通に山を掘ったトンネルらしい。

 入り口は蔦や木の葉で隠れてトンネルと言うことに気づかなかったが、出口にははっきりと[カルゼシアトンネル]と書いてあった。今までの期待返してくれよ。勝手に期待してたのはこっちだけどさ。

「普通のトンネルだったぞ……」

「そのようですね。最初にしっかりと確認しておくべきでした」

「今度は当たりが出て欲しいね。というか今何時頃?」

「今4時頃だけどどうする?瞬間移動を使って帰るか?」


 ということで街に戻りました。その後、みんなで早めの夕飯を食べるというのが恒例になっている。

 ギルドで魔物の換金をして、いつものように店に入る。

「まさか、ただのトンネルだったとは驚きだったね」

「よく見れば魔物も全然住み着いて無かったし、罠も無かったからダンジョンとかに続く道っていう感じじゃなかったぞ」

「そういえば、皆さんカルゼシアの森に居る魔物を倒すのが簡単になって来たのでダンジョンでも行きませんか?」

 ダンジョンだったら、レベルも上がりそうだしいいかもな。カルゼシアの森はスライムと1メートルくらいの狼くらいしかいないから、レベルが上がりにくかったし。


「ボクはいいと思うぞ」
「私も賛成」
「レベルも効率よく上がるしいいと思う」

 全員賛成と来ましたか。これで、レベルもどんどん上がりっていきそうだ。

 俺たちはダンジョン行ったことない設定でいくか。そっちの方がレベル1に対しての矛盾が生まれないし。


 明日からはダンジョンに行こう!ということで意見も纏まったところで、どこのダンジョンに行くか決めよう。とはいっても初めて行く場所には、転移魔法を使うのは危ないので、一回自分の足で行かなければ最初は行けない。  

 ◇

 実はこの頃はカリスは勿論、ティアナ、エンセリアまでもが、俺たちと同じ宿に泊まっている。
 そして、毎晩のようにボードゲームをして盛り上がっている。しかし、今日はある予定が入っているので、一緒に遊ぶのをやめて街に来ている。

 何をしに来たか?それは前からお金に余裕があまりなくてできなかったがショッピング、買い物だ。

 最初は魔道具屋で、目覚まし時計でも買おう。他にもいろいろいいものがある可能性もあるので楽しみだ。さて、此方の技術はどのくらい進んでいるかな?

「いらっしゃいませ。本日はどのような商品をお探しですか?」

 店員さんが早速丁寧に出迎えてくれた。店内の照明はシャンデリア等で壁も俺とは無縁のお洒落な絵画や宝石で装飾されている。
 客層も俺のような冒険者は見当たらず、貴族のような豪華な衣服に身を包む人や代理なのかよく知らないが、執事のようなダンディーな男性ばかりだ。

 しかし、この様子だと滅茶苦茶高いんじゃ………。6,000ゴールド(日本円だと600,000)持って来たけど足りないかな。

「予算は3500ゴールドくらいでお願いできますか?」

 全部使うわけにもいかないし、このあともまだ買いたいものがあるのでこのくらいにした。

「そのぐらいでしたら、此方にあります」

 店内の入口付近のモダンな店の看板に相応しいものから、どんどん店の奥に入っていく。


「ここら辺が3000ゴールド前後の商品となっています」

 えーと、目覚まし時計はどこかな。

 アラーム昨日がついているものはここか。デジタル表示と普通の時計と同じタイプがある。

「此方の商品は幾らですか?」

 俺は、黒い三角柱を横に倒したような目覚まし時計にした。
 地球に居たとき俺の部屋にあったものとそっくりだ。

「そちらの商品は3250ゴールドとなっております」

 予算内で済ませられるか。なら、これを買おう。
 他の魔道具は諦めるか。

「はい、ではそれでお願いします」


 先ず、目覚まし時計をゲット!
 次はこの世界の地図だ。
 できるだけ範囲が大きいものを手に入れたい。

 通りの看板を眺めて探してみる。

 お、あの店だな。



 チリン、チリーン

「いらっしゃい。どんな地図をお探しだ?」

 店は、一軒家を店に改装したくらいの広さだ。
 壁には、たくさんの地図が貼られていて、棚には丸められた地図が積み重なっている。

「できるだけ広範囲の物を頼みます」

 地図も高いかな?

 カウンター越しにある棚の中を店主が探してくれてる。

「これでいいかい?世界の全部の国が大まかだけどここに全部載ってるよ。値段は2000ゴールドだよ」

 凄いなー。地図には結構精密に描かれている。
 現代とまでではないが、近世くらいである。ここでも魔法が一役をかっているのだろうか。

「では、それを買います」

 これで今日の買い物は終わりにしよう。


 宿へ転移をした。

「あー、おかえり」

「なに買ったか気になるぞ」 

 早速、これに食いついたか。

「2つ買ってきた。目覚まし時計と世界地図だ」

 買ったものを部屋にあったテーブルの上に置く。

「この地図大きいですね。全部の国が載ってるなんて凄いです」

「結構細かいところまで描いてあるー」

 そうなんだよね。
 俺も良くできてるな、と思ったし。

「こっちは目覚まし時計だぞ」

「すいません、これ普通のものと違いませんか?」

 ティアナが目覚まし時計を手に取りまじまじと見ている。
 アラーム機能も付いて割りとしっかりしてる方だと思うけど。

「魔道具屋で普通に買ったものだが?特に変に改造とかをしてはいない」

 だって普通に時計コーナーにあったものだし。

「ま、魔道具屋?!幾らしました?」

「3500ゴールド」

「高いです!普通の目覚まし時計はそこまでの値段はしませんよ」

 そうなのかな?
 でも、この宿にも普通に置いてあるから言われてみればそうかもしれない。
 まさか、俺。騙されたのか?

「やっぱり。これ目覚まし時計型のレーザービームが打てるやつです」

 ……ん?なにそれ。
 冒険者だから、こういう目当てで来たと思われた?
 そんな物騒な目覚まし時計だったのか。

「普通の用途で使えるものなのか?」

 これが大事だ。
 高いかったから、使えませんとか勘弁してよね。

「目覚まし時計として使えるみたいです。次は普通は雑貨店に行けばいいんですよ」

 今度からはどの店に行けばいいかもしっかり考えた方がいいかもしれないな。


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これでこの章は終わりです。
明日からは新しい章に入ります。
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