チートキャラで閉鎖されたVRMMOゲームにログインしたら神の代行者でした

トキオ

文字の大きさ
6 / 60
無自覚な神の代行者

4 ニアミス

しおりを挟む
 馬で移動を始めて2日目。

 遠くにぽつんぽつんと人家が見られるような開けた土地に出たあたりで、遠くから土煙を立てて近づく一団に気付いて、馬の進路を道端に寄せ路を譲る。

 20騎はいるだろうか。何故こんなところに装備を揃えた騎士団が馬を走らせて急いでいるのか、ヴィルフリートの眉が眉間に寄る。

 ちょうど目の前にきて、騎士団のリーダーらしきおとこがヴィルフリートの馬を引き止めた。

「そこの者!止まれ!このあたりの村人ではないな!?何ゆえこの地にいる!」

 この手合いの輩は、とにかく上から目線で物を言うのが気に食わないが、いちいち反発したり喧嘩を売っていてもしょうがないので、ヴィルフリートは顔には出さず能動的に答えるに限る。

「冒険者だ。このさきの森での依頼を受けて、その帰りだ」

「名前は!?」

「ヴィルフリート・バーバリア。冒険者ギルドのランクはS」

「何!?Sランク冒険者だと!?」

 冒険者ギルドのランクは一番下がEから始まり、一番上はSランクとなる。高ランク冒険者にもなると冒険者個人へ国から直接依頼を受けたり、冒険者ギルドと合同の魔物討伐を行う際の重要な戦力でもあり、将軍といえど下手に冒険者風情と侮ることはできない。

 そして数少ないSランク冒険者たちの名は各国に知れ渡り、ダルダーノもヴィルフリートの名前は聞いた覚えがあった。

「ダルダーノ将軍、その方はヴィルフリート殿に間違いございません!以前、ギルド合同での魔物討伐の折、自分はヴィルフリート殿の顔を見たことがございます!」

「では本人で間違いないと言うのだな」

「はっ!」

 部下の進言に、うむと鷹揚にダルダーノは頷く。この先のルノールの遺跡に現れたというレヴィ・スーンが目的で先に冒険者ギルドから依頼を受けてこの地にいたのかと真っ先に考えたのだ。

 だが、ルノールの遺跡のあるハムストレムからヴェニカの街まで転移し、そのまま馬を四六時中走らせたダルダーノたちより早くルアールの遺跡に辿り着き、その帰る途中というのは距離も時間も難しい。

 ヴィルフリートが既にダルダーノたちよりはやくレヴィ・スーンを確保しているのなら、尚更、堂々と国のはずれの村の道をのんびり馬で歩いているというのもおかしいだろう。

「わかった。引き止めてすまなかった。だがもし差し支えなければ、その後ろに乗っている者は何者か、教えてもらえまいか?貴殿は基本的にPTを組まず一人で依頼をこなすと聞いている。それにSランク冒険者が受けた依頼に同行するとはその者も冒険者か?」

「連れだ。今回の依頼でちょっと同行が必要だっただけでPTは組んでねぇよ。依頼内容についてはギルドの契約で話せねぇぜ」

 白々しくヴィルフリートが答える。依頼を終えた直後にはぐれグリーンドラゴンに遭遇し、その戦いをほんの少し手伝って貰っているから完全な嘘ではない。

「なるほど。では顔だけ見せてもらっても?」

 納得すると見せかけて、しつこく食い下がるダルダーノに、ヴィルフリートの表情がムッとする。
 ハムストレムの将軍ダルダーノの名前はヴィルフリートも聞いたことがあるが、随分と勘ぐってくる性格のようだ。

 この際、ダルダーノが疑り深い性格なのはどうでもいいが、冒険者ギルドを通しての冒険者への依頼内容は、国家であっても不干渉が暗黙の了解なのに、依頼同行者であると今しがた言ったばかりのシエルの隠した容姿に触れてくる。

 どう言い逃れようかと思案していたところで後ろに乗っていたシエル自らがフードを落し、その場にいた全員がシエルに見蕩れることになった。

 瑠璃色を帯びた銀糸の髪は太陽の日を浴びて、キラキラと反射している。伏せ目がちの瞳の色は濃い金色で、髪と同じ銀の睫がり、すっと伸びた鼻梁。目を引くのは白磁と見まがうような白肌だ。小さな顔に滑らかな白肌が唇の赤を際立たせる。

 幼さが垣間見える15、6ほどと思われ、性別は少女とも少年とも判断つきかねる。
 顔を見せて欲しいと言った張本人であるダルダーノも言葉が出ないようで、目を大きく見開きシエルに魅入る。

 一番に我に戻ったのはヴィルフリートだ。自ら我を取り戻したのではなく、体調不良で声を出すのも億劫なシエルが後ろからヴィルフリートのコートを力なく握った感触で我に戻ったといったほうが正確だろう。
 浅い呼吸でまた俯き加減になったシエルに、ハッとして、

「コイツは少し体調が悪いんだ。他に用がなければ行ってもいいか?」

「あ、ごほんっ、もう行ってもらって構わない」

 ヴィルフリートに声をかけられたダルダーノもハッとして我に戻り、場を取り繕う。任務の最中に一瞬でも気を取られてしまったことを隠すように、ひとつ咳払いして変に声が堅くなってしまう。

「いくぞ!」

「はっ」

 ダルダーノの掛け声と共に、付き従う騎士たちも一斉に再び馬を駆け出す。馬が地を蹴る土煙に、ヴィルフリートは顔を顰め、シエルも口元にケープの裾を当てて土煙を吸わないようにする。

 土煙が収まった頃には、一団の姿が遠くに消え、ヴィルフリートは盛大な溜息を付いて背後のシエルを気遣う。

「ほら、フード被ってろ。日差しもキツイんだろう?」

 馬に乗るのが初めてだと言っていた通りに、シエルは馬酔いした。非常にゆっくりのスピードでも常に揺られ、馬から下りても体が揺れている感覚が消えることはない。

 馬に乗って平気だったのは最初の1時間だけだった。

 次第にシエルは顔面蒼白となり、途中途中で休憩をするため、なかなかヴェニカの街に辿りつかない。
 回復アイテムを試してはみたが、基本的に回復アイテムは怪我や魔法による障害に対して効果を発揮するため、馬酔いには全く効かなかった。
 顔色が悪いシエルにフードをかぶりなおさせてから再び馬をゆっくり歩かせ始める。

「あれ、誰……?」

「ハムストレムの将軍だ。あんな大物がこんな辺境までやってくるなんて、戦争か何か起こるんじゃねぇか?もっともお前はそんなのに構ってる余裕は全くないか」

 あまり気持ちが悪いときは背中に持たれていいとヴィルフリートが申し出てからは、最初こそは出会ったばかりで遠慮していたのだが、二日目の今朝からはたまに額をもたれるようになった。

 本当につらいのだろう。

 そこへあの騎士団の集団にからまれて、シエルまで顔を見せろを言われたときはどう言い逃れたものかと一瞬思案したが、思いがけずシエルはすんなりと自分からフードを下ろしたことがヴィルフリートには意外だった。

「顔、見せて大丈夫だったのか?」

「え?」

「ずっと隠してただろうが。見られたくなかったんじゃないのか?」

「隠してたというか、なんとなく………うっ、気持ち悪い………」

 はじめはヴィルフリートを念のため警戒してのことだったが、それよりも黒歴史の容姿を見られるのが恥ずかしくてとは言えず、話しているうちに胃から何かせりあがってくる気配を感じて咄嗟に口元を押さえる。
 
 昨日から馬酔いの気持ち悪さでほとんど食事は食べていないせいか、口の中は胃液独特の甘酸っぱいようなすえた味しかしない。

「少し休むか?それとも水でウガイするか?」

「休みはもういいから歩く。そっちの方が楽」

 馬から下りたところで馬に揺られている感覚は抜けないが、少しでも早くヴェニカの街に辿り着きたい。

「周り誰も見当たらないし、歩くよりしばらくエアーボード乗ってろ。どうせ持ってるんだろ?誰か人を見つけたら教えるから隠せよ」

「そうする……」

 ほら、と馬から先に下りたヴィルフリートに手伝って貰いシエルは馬から下りると、エアーボードを何もない空間から取り出す。
 エアーボードが何もない空間にいきなり現れてもヴィルフリートは驚かない。昨夜、野宿の準備をしている時にいきなり2人分の簡易軽食と寝袋をシエルが同じように出現させた瞬間は驚いた。
 驚くなと言うほうが無理だ。

 本人は旅の道具を魔法で最小限まで小さくして持ち運び、必要なときに元の大きさに戻しているだけだと説明したが、馬酔いの気持ち悪さで何も食べずにすぐに横になってしまい、説明もおなざりで本当かどうか分かったものじゃないだろう。

 とにかく、ヴィルフリートはそれなりに冒険者として世界中を旅し様々なものを見てきたが、シエルのように物を突然空間に出現させるという魔法ははじめて見た。

(こいつ貴族のガキかと思っていたが、どっかの国専属の魔術師とかそっち系なのか?そこを黙って抜けてきたとか?)

 だとするなら、ヴィルフリートのグロウ武器を一目で見抜いたことも納得できる。しかし、アイテムを自由に出し入れできる貴重な魔術師を国が簡単に手放すだろうか。下手をして他国へ仕えてしまえば、自国の脅威になるというのに。むしろ刺客を向けて暗殺せんとする方がヤツラらしい。

 ヴィルフリートの思考を他所にのろのろとした動きで電源を入れたボードの上にシエルは座る。そしてヴィルフリートも馬に再度乗って歩き始めると、馬と同じ速度で、馬のように揺れることなく、一定の高さを保ち宙に浮いたまま進んでいく。

「まだ揺れてる感覚がする……」

「これだけ馬酔いして、どうやって魔物しかいねぇ森の奥まで行ったんだよ。俺にはそっちが不思議でなんねぇよ」

 溜息一つこぼして貴族であれ国の専属魔術師であれ、こんな旅慣れていない世間知らずをよくぞ外に放流したものだと、ヴィルフリートは呆れるしかできなかった。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

ゲーム内転移ー俺だけログアウト可能!?ゲームと現実がごちゃ混ぜになった世界で成り上がる!ー

びーぜろ
ファンタジー
ブラック企業『アメイジング・コーポレーション㈱』で働く経理部員、高橋翔23歳。 理不尽に会社をクビになってしまった翔だが、慎ましい生活を送れば一年位なら何とかなるかと、以前よりハマっていたフルダイブ型VRMMO『Different World』にダイブした。 今日は待ちに待った大規模イベント情報解禁日。その日から高橋翔の世界が一変する。 ゲーム世界と現実を好きに行き来出来る主人公が織り成す『ハイパーざまぁ!ストーリー。』 計画的に?無自覚に?怒涛の『ざまぁw!』がここに有る! この物語はフィクションです。 ※ノベルピア様にて3話先行配信しておりましたが、昨日、突然ログインできなくなってしまったため、ノベルピア様での配信を中止しております。

『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』

チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。 その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。 「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」 そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!? のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

出戻り勇者は自重しない ~異世界に行ったら帰って来てからが本番だよね~

TB
ファンタジー
中2の夏休み、異世界召喚に巻き込まれた俺は14年の歳月を費やして魔王を倒した。討伐報酬で元の世界に戻った俺は、異世界召喚をされた瞬間に戻れた。28歳の意識と異世界能力で、失われた青春を取り戻すぜ! 東京五輪応援します! 色々な国やスポーツ、競技会など登場しますが、どんなに似てる感じがしても、あくまでも架空の設定でご都合主義の塊です!だってファンタジーですから!!

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばす 規格外ダンジョンに住んでいるので、無自覚に最強でした

むらくも航
ファンタジー
旧題:ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばして大バズりしてしまう~今まで住んでいた自宅は、最強種が住む規格外ダンジョンでした~ Fランク探索者の『彦根ホシ』は、幼馴染のダンジョン配信に助っ人として参加する。 配信は順調に進むが、二人はトラップによって誰も討伐したことのないSランク魔物がいる階層へ飛ばされてしまう。 誰もが生還を諦めたその時、Fランク探索者のはずのホシが立ち上がり、撮れ高を気にしながら余裕でSランク魔物をボコボコにしてしまう。 そんなホシは、ぼそっと一言。 「うちのペット達の方が手応えあるかな」 それからホシが配信を始めると、彼の自宅に映る最強の魔物たち・超希少アイテムに世間はひっくり返り、バズりにバズっていく──。

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

処理中です...