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ローレス領ダンジョン攻略
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驚きはしなかった。むしろレイ自身、記憶を掘り起こして具現するなそうなるだろうと納得していた。
(潜在意識に干渉してくるなら、やっぱりこう来るのがセオリーだよなぁ)
大通りをしばらく歩いていると、ビルの向こうから聞こえてきた車やバイクの暴走音に、思わず笑ってしまいそうになった。けれど、近づいてくる爆音が何なのか分からず周囲を警戒するギィリの手前、笑うのを必死に堪える。
(あんなにうるさかった暴走音がこれだけ微笑ましく思える日がくるなら、そりゃあギィリより俺の望郷念の方が強くて、異世界の光景をギミックが具現しても当然か)
そんな懐古の気持ちに浸っていた俺に、ギィリが話しかけてきた。
「不気味な音が段々近づいてくる……。モンスターか何か分からないけれど、ひとまずどこかの建物に入って隠れましょう」
「わかりました」
そして2人して一番近くにあったビルに入ろうとして、ドアに手をかける必要なく自動ドアが開くことにギィリがまた驚き、受付らしい中央の机の中に潜んで、ガラス窓の外を伺う。
ヴォンヴォンヴォンと爆音をまき散らし、隠れているビルの前を走り抜けていく暴走車とバイク。けれど、どちらにも人は乗っていない。運転手不在で車やバイクが走る様は、B級ホラー映画のようだ。
「あれは魔導兵器か何かかしら?他国で魔石を動力として動く機械を開発していると聞いたことがあるわ。それが侵入者がいないか見回りしているとか?」
「確かに馬が引いてもいないのに荷馬車が動いてましたね、すごい音を出してました。見つかったら襲ってくると思います?」
「襲ってきたなら私の魔法が効けばいいわね。鉱物系のモンスターは魔法が効かないタイプもあって一概に言い切れないの」
ギィリの聞いた話は、既にレイも知っているものだ。ただし、国が大々的に宣伝するような兵器というのもおこがましい初期段階だという情報だ。一歩前に進むだけでも3秒かかるようでは実用にはほど遠い。
ただし、魔石を動力にして自動で動く兵器を作ろうという発想は面白いし、今後も研究を続けていけばそれなりの兵器を作れるようになるかもしれないとは思っている。
(俺がいた世界だって、魔法も魔石もなしに月にまでいけたんだ。それを考えたらズルみたいに魔法が使えるこの世界で機械が作れないなんてことはない)
となると次はあの自動車やバイクがどうやって動いているのかが気になる。電気であれ魔石であれ必ず動力が存在し、動くメカニズムが存在するのだ。元の世界で自動運転する車がでてきたが、あれも遠距離操作やプログラミングによって動いていた。
「ギィリさん。いいでしょうか?」
「何かしら?」
「あの機械たちがどこかへ行っている間に、少し建物の中の様子を確認しておきませんか?この建物の内部がまだ安全とは限りません」
提案するとギィリは照明に照らされた室内を見渡す。動くものはもちろん何もないが、はじめてこのビル群を見たときのような興奮が収まってきたのか、照明に照らされた明るいロビー内を見渡す。
「そうね、安全な場所を確保できるのなら確保しておくことはないわね。部屋を見ておきましょうか」
2人合意し、上階を探索しようとして、不意にレイの頭に不安がよぎった。
(いや!まて!まさかとは思うが、最上階まで階段でのぼっていくなんてことはないよな!?)
元の世界を知っているレイであれば、上階への移動にエレベーターを使えば楽に移動できると分かっている。だが、階段しかギィリは知らず、案の定、ロビー正面にあるエレベーターをスルーしていく。
外から見ただけでもパッと見で20階以上はあるビルだ。
それを階段で上り下りするなんて、想像しただけも恐ろしすぎる。
「何階あるか数えるのも億劫な建物だけれど、地道に調べていくしかないわね。私はあちらを調べるから、レイは階段がないか反対側を調べてちょうだい。少し離れるけれど、部屋に入るときは敵がいないか注意を怠らないでね」
「了解です」
内心の焦りは微塵も出さず、笑顔で頷く。
その内心は、
(ギィリが非常階段を見つけるより先に、正面エレベーターの存在にどうやって気づかせようか……。下手にエレベーターがあるなんて言ったら、どうして機械のことを知っているのか疑惑を持たれかねないぞ……?けど最上階まで階段で昇るとか断固勘弁だ!)
もし本当にギィリが非常階段を見つけて最上階まで階段で昇ると言い出した時は、もう最悪自分がオル元帥本人であるとバラして、エレベーターを使ってもいいんじゃないかとまで、心の天秤が揺らいでいる。
階段で昇るというからには、つまり階段で下るまでがセットなのだから。
ロビーの部屋という部屋に入って中を確認するが、考えていた通り、人は誰も見当たらない。元の世界にいたころはまだ学生だったが、教授の紹介で企業インターンを受けた経験があったので、大広間をパーテンションで区切った小さな部屋が、商談室や面談室と呼ばれる場所なのが分かる。
ここも自分の記憶が反映されているのだろう。
そして自分の記憶が反映されたビルならばと、ギィリが近くにいないことを確認してから、当たりをつけた扉を開けば非常階段を見つけた。
見上げればどこまでも階段が上まで連なっている。
窓1つない冷え冷えとした無機質な空間。
(やばいな……こんなのを上まで昇るとか罰ゲームよりもヤバいぞ。いくらダンジョン調査だっていっても現実的じゃない……)
そっと見なかったことにして非常階段の扉を閉じ、ロビーの正面にまで戻る。
「どう?そっちに階段はあった?これだけ大きい建物ですもの。かなり大きい階段があるはずなんだけれど、あるのは机がいっぱい置かれた変な部屋ばかりで」
「すいません。こちらにも階段らしきものは見当たらなかったです」
非常階段の存在はなきものとして黙っておく。
「じゃあどうやってこの建物は上の階へ行くのかしら……。私考えたのだけれど、この建物の一番上の部屋まで階段を昇っていくのって辛そうじゃない……?」
困ったように僅かに首を傾げてこちらを覗き込んでくるギィリの仕草に、思わずドキリとし、何度も<相手は部下>と心の中で念仏よろしく唱えて沸き起こる煩悩を打ち消す。
何歳、年をとってもこういうところは男だ。同じ部下でも前任者はよぼよぼの爺。そして目の前の後任者は色気駄々洩れの美人。どちらがいいかと問われたら迷わず後者を取る。しかしここで煩悩に流されたら元帥としての威厳が地に落ちるのは確実だ。
「言われてみればそうですね……」
「どうしたの?レイ、顔が赤いわよ?」
「気にしないでください。一時的なものです……。それより階段がないのだとしたら、何か転送装置でもあって階を移動するのでしょうか。これだけ凄い街なら、移動を簡単に出来る装置もありそうです」
「じゃあ、その移動装置を探すところ………、待って、アレは何かしら?」
話すのを途中でやめたギィリがまっすぐに自分の背後にあったロビー正面エレベーターの方へ歩いていく。心の中は期待で高まってくる。
(えらいぞ!ギィリ!そのボタンに気づいたのならもう今回の評価は及第点突破だ!)
内心ガッツポーズだ。
「この部屋、レイはもう中を見た?」
「いいえ。まだ見てないです」
「この部屋、扉はあるのに取っ手がなくてどうにも開かなかったんだけれど……、この三角ボタンのマークは……」
ぽち、っとギィリがエレベーター横の壁に設置されていたボタンを押す。
ーガチャ、ウィーン
エレベーター独特の開閉音をたてて開いた。
「開いたわ!」
自らの目の付け所が当たっていたのをギィリが子供のように喜ぶ。その様子を見る限り、やはり魔導軍団長とは思えない。
(魔法の技量は十分なんだけど精神面がどうもな~。なんか魔導士たちの長に立つには、あと少し経験や自信が必要な気がしなくもないんだが)
前任者ほどの貫禄は求めていないし、ギィリ自身のお年齢もまだ若いのでそのせいかもしれないが、あとひとつ欲が出てしまう。
エレベーターの中に入り、
「小さい部屋ですね、中は何もない……。けど、また壁にボタンがあります。今度はたくさんついてます」
「もしかしてこの部屋が階の移動装置なんじゃないかしら?王宮や屋敷でも、階を移動する階段は建物に入って正面にあるものよ。だとするならこの建物も、入口から入って正面にあるこの部屋が移動する部屋だというのはありえるわ」
「じゃあこのボタンが!?」
ちょっとわざとらしいくらいに驚いて見せると、こくりと頷きギィリが上階のボタンを押す。これで階段を使わずに済むを思って、一瞬油断してしまった。
『ガタン』と微かに揺れて、エレベーター特有の浮遊感にギィリの体が傾く。
「きゃっ!!」
「あぶないっ!」
ーむにっ
倒れかけたギィリを支えようとしたレイの手が、大きくて柔らかな双丘を掴んでしまった。はっと気づいてすぐに離れたけれど、目を見開いたギィリの頬に朱が走っている。
(やばいっ!!)
全力で離れて、全力で頭を下げた。
「ああああああ!すいません!!わざとじゃないです!すいません!ごめんなさい!」
「……い、いまのは事故だと思うから、そんなに謝らないで。私も気にしていないから。まさかこんな形で階を移動する装置だとは思わなくて……。人を乗せた箱が上下に移動する装置なのね」
つまり、ボタンを押せば瞬間移動のように階を移動するのだろうとギィリは考えていたらしく、人が入った小部屋が上下に動いて移動するとは思っておらず、動いた浮遊感でバランスを崩し倒れそうになったらしい。
確かにこれだけデカい建物が並んで、人を乗せず、馬にもひかれていない車やバイクが走っているなら、大きな箱に人を入れて階を移動するという原始的な発想はないだろう。
それからエレベーターがボタンを押した上階へと着いて、『チン』とお決まりの到着音を告げる。ギィリが無言でエレベーターを出ていくあたり、やはり事故でも男に胸を掴まれるのは恥ずかしかったようで申し訳なく思う。
しかし、ついギィリが見てない後ろで、
(胸、すっげー柔らかかった)
偶然、胸を掴んでしまった左手をにぎにぎした。
(潜在意識に干渉してくるなら、やっぱりこう来るのがセオリーだよなぁ)
大通りをしばらく歩いていると、ビルの向こうから聞こえてきた車やバイクの暴走音に、思わず笑ってしまいそうになった。けれど、近づいてくる爆音が何なのか分からず周囲を警戒するギィリの手前、笑うのを必死に堪える。
(あんなにうるさかった暴走音がこれだけ微笑ましく思える日がくるなら、そりゃあギィリより俺の望郷念の方が強くて、異世界の光景をギミックが具現しても当然か)
そんな懐古の気持ちに浸っていた俺に、ギィリが話しかけてきた。
「不気味な音が段々近づいてくる……。モンスターか何か分からないけれど、ひとまずどこかの建物に入って隠れましょう」
「わかりました」
そして2人して一番近くにあったビルに入ろうとして、ドアに手をかける必要なく自動ドアが開くことにギィリがまた驚き、受付らしい中央の机の中に潜んで、ガラス窓の外を伺う。
ヴォンヴォンヴォンと爆音をまき散らし、隠れているビルの前を走り抜けていく暴走車とバイク。けれど、どちらにも人は乗っていない。運転手不在で車やバイクが走る様は、B級ホラー映画のようだ。
「あれは魔導兵器か何かかしら?他国で魔石を動力として動く機械を開発していると聞いたことがあるわ。それが侵入者がいないか見回りしているとか?」
「確かに馬が引いてもいないのに荷馬車が動いてましたね、すごい音を出してました。見つかったら襲ってくると思います?」
「襲ってきたなら私の魔法が効けばいいわね。鉱物系のモンスターは魔法が効かないタイプもあって一概に言い切れないの」
ギィリの聞いた話は、既にレイも知っているものだ。ただし、国が大々的に宣伝するような兵器というのもおこがましい初期段階だという情報だ。一歩前に進むだけでも3秒かかるようでは実用にはほど遠い。
ただし、魔石を動力にして自動で動く兵器を作ろうという発想は面白いし、今後も研究を続けていけばそれなりの兵器を作れるようになるかもしれないとは思っている。
(俺がいた世界だって、魔法も魔石もなしに月にまでいけたんだ。それを考えたらズルみたいに魔法が使えるこの世界で機械が作れないなんてことはない)
となると次はあの自動車やバイクがどうやって動いているのかが気になる。電気であれ魔石であれ必ず動力が存在し、動くメカニズムが存在するのだ。元の世界で自動運転する車がでてきたが、あれも遠距離操作やプログラミングによって動いていた。
「ギィリさん。いいでしょうか?」
「何かしら?」
「あの機械たちがどこかへ行っている間に、少し建物の中の様子を確認しておきませんか?この建物の内部がまだ安全とは限りません」
提案するとギィリは照明に照らされた室内を見渡す。動くものはもちろん何もないが、はじめてこのビル群を見たときのような興奮が収まってきたのか、照明に照らされた明るいロビー内を見渡す。
「そうね、安全な場所を確保できるのなら確保しておくことはないわね。部屋を見ておきましょうか」
2人合意し、上階を探索しようとして、不意にレイの頭に不安がよぎった。
(いや!まて!まさかとは思うが、最上階まで階段でのぼっていくなんてことはないよな!?)
元の世界を知っているレイであれば、上階への移動にエレベーターを使えば楽に移動できると分かっている。だが、階段しかギィリは知らず、案の定、ロビー正面にあるエレベーターをスルーしていく。
外から見ただけでもパッと見で20階以上はあるビルだ。
それを階段で上り下りするなんて、想像しただけも恐ろしすぎる。
「何階あるか数えるのも億劫な建物だけれど、地道に調べていくしかないわね。私はあちらを調べるから、レイは階段がないか反対側を調べてちょうだい。少し離れるけれど、部屋に入るときは敵がいないか注意を怠らないでね」
「了解です」
内心の焦りは微塵も出さず、笑顔で頷く。
その内心は、
(ギィリが非常階段を見つけるより先に、正面エレベーターの存在にどうやって気づかせようか……。下手にエレベーターがあるなんて言ったら、どうして機械のことを知っているのか疑惑を持たれかねないぞ……?けど最上階まで階段で昇るとか断固勘弁だ!)
もし本当にギィリが非常階段を見つけて最上階まで階段で昇ると言い出した時は、もう最悪自分がオル元帥本人であるとバラして、エレベーターを使ってもいいんじゃないかとまで、心の天秤が揺らいでいる。
階段で昇るというからには、つまり階段で下るまでがセットなのだから。
ロビーの部屋という部屋に入って中を確認するが、考えていた通り、人は誰も見当たらない。元の世界にいたころはまだ学生だったが、教授の紹介で企業インターンを受けた経験があったので、大広間をパーテンションで区切った小さな部屋が、商談室や面談室と呼ばれる場所なのが分かる。
ここも自分の記憶が反映されているのだろう。
そして自分の記憶が反映されたビルならばと、ギィリが近くにいないことを確認してから、当たりをつけた扉を開けば非常階段を見つけた。
見上げればどこまでも階段が上まで連なっている。
窓1つない冷え冷えとした無機質な空間。
(やばいな……こんなのを上まで昇るとか罰ゲームよりもヤバいぞ。いくらダンジョン調査だっていっても現実的じゃない……)
そっと見なかったことにして非常階段の扉を閉じ、ロビーの正面にまで戻る。
「どう?そっちに階段はあった?これだけ大きい建物ですもの。かなり大きい階段があるはずなんだけれど、あるのは机がいっぱい置かれた変な部屋ばかりで」
「すいません。こちらにも階段らしきものは見当たらなかったです」
非常階段の存在はなきものとして黙っておく。
「じゃあどうやってこの建物は上の階へ行くのかしら……。私考えたのだけれど、この建物の一番上の部屋まで階段を昇っていくのって辛そうじゃない……?」
困ったように僅かに首を傾げてこちらを覗き込んでくるギィリの仕草に、思わずドキリとし、何度も<相手は部下>と心の中で念仏よろしく唱えて沸き起こる煩悩を打ち消す。
何歳、年をとってもこういうところは男だ。同じ部下でも前任者はよぼよぼの爺。そして目の前の後任者は色気駄々洩れの美人。どちらがいいかと問われたら迷わず後者を取る。しかしここで煩悩に流されたら元帥としての威厳が地に落ちるのは確実だ。
「言われてみればそうですね……」
「どうしたの?レイ、顔が赤いわよ?」
「気にしないでください。一時的なものです……。それより階段がないのだとしたら、何か転送装置でもあって階を移動するのでしょうか。これだけ凄い街なら、移動を簡単に出来る装置もありそうです」
「じゃあ、その移動装置を探すところ………、待って、アレは何かしら?」
話すのを途中でやめたギィリがまっすぐに自分の背後にあったロビー正面エレベーターの方へ歩いていく。心の中は期待で高まってくる。
(えらいぞ!ギィリ!そのボタンに気づいたのならもう今回の評価は及第点突破だ!)
内心ガッツポーズだ。
「この部屋、レイはもう中を見た?」
「いいえ。まだ見てないです」
「この部屋、扉はあるのに取っ手がなくてどうにも開かなかったんだけれど……、この三角ボタンのマークは……」
ぽち、っとギィリがエレベーター横の壁に設置されていたボタンを押す。
ーガチャ、ウィーン
エレベーター独特の開閉音をたてて開いた。
「開いたわ!」
自らの目の付け所が当たっていたのをギィリが子供のように喜ぶ。その様子を見る限り、やはり魔導軍団長とは思えない。
(魔法の技量は十分なんだけど精神面がどうもな~。なんか魔導士たちの長に立つには、あと少し経験や自信が必要な気がしなくもないんだが)
前任者ほどの貫禄は求めていないし、ギィリ自身のお年齢もまだ若いのでそのせいかもしれないが、あとひとつ欲が出てしまう。
エレベーターの中に入り、
「小さい部屋ですね、中は何もない……。けど、また壁にボタンがあります。今度はたくさんついてます」
「もしかしてこの部屋が階の移動装置なんじゃないかしら?王宮や屋敷でも、階を移動する階段は建物に入って正面にあるものよ。だとするならこの建物も、入口から入って正面にあるこの部屋が移動する部屋だというのはありえるわ」
「じゃあこのボタンが!?」
ちょっとわざとらしいくらいに驚いて見せると、こくりと頷きギィリが上階のボタンを押す。これで階段を使わずに済むを思って、一瞬油断してしまった。
『ガタン』と微かに揺れて、エレベーター特有の浮遊感にギィリの体が傾く。
「きゃっ!!」
「あぶないっ!」
ーむにっ
倒れかけたギィリを支えようとしたレイの手が、大きくて柔らかな双丘を掴んでしまった。はっと気づいてすぐに離れたけれど、目を見開いたギィリの頬に朱が走っている。
(やばいっ!!)
全力で離れて、全力で頭を下げた。
「ああああああ!すいません!!わざとじゃないです!すいません!ごめんなさい!」
「……い、いまのは事故だと思うから、そんなに謝らないで。私も気にしていないから。まさかこんな形で階を移動する装置だとは思わなくて……。人を乗せた箱が上下に移動する装置なのね」
つまり、ボタンを押せば瞬間移動のように階を移動するのだろうとギィリは考えていたらしく、人が入った小部屋が上下に動いて移動するとは思っておらず、動いた浮遊感でバランスを崩し倒れそうになったらしい。
確かにこれだけデカい建物が並んで、人を乗せず、馬にもひかれていない車やバイクが走っているなら、大きな箱に人を入れて階を移動するという原始的な発想はないだろう。
それからエレベーターがボタンを押した上階へと着いて、『チン』とお決まりの到着音を告げる。ギィリが無言でエレベーターを出ていくあたり、やはり事故でも男に胸を掴まれるのは恥ずかしかったようで申し訳なく思う。
しかし、ついギィリが見てない後ろで、
(胸、すっげー柔らかかった)
偶然、胸を掴んでしまった左手をにぎにぎした。
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