【完結】だって、今度こそ愛されたい ~巻き戻った世界で、 侯爵令嬢は自分だけを見てくれる人を探します~

乙原ゆん

文字の大きさ
61 / 70

61.屋敷の庭で

 クロード様にエスコートされるのは初めてだったが、とても手慣れている感じだった。

「どうした?」
「いえ、慣れていらっしゃるのだと思って」

 促されて答えると、クロード様は一瞬息を詰まらせ首を振る。

「そんなことはない。今、オレはとても緊張している。慣れているように感じるなら、それは、ジュリアの侍女にしごかれているからだ」
「えっ」

 そんなこと、ケイトは一言も言っていなかったのに。

「安心した?」

 金色の瞳を悪戯げにきらめかせて尋ねるクロード様に、私はなんとか言葉を絞り出す。

「安心も何も、驚いただけです」
「そうか」

 どうしてかご機嫌なクロード様に連れられて、庭に向かう。
 白や黄色、ピンク色の色とりどりの花が咲き乱れていた。

「綺麗ですね」
「そうだな。前の持ち主の趣味がよかったみたいだ」
「前の持ち主?」
「オレもこの屋敷を貰ったのはつい最近だ」
「ということは、エリアス殿下から?」
「あぁ。報酬の前払いだと下賜された」

 クロード様の言葉に頷くものの、それでは今までどうしていたのだろうという疑問が湧いてくる。

「以前、王宮で魔術師をしていらっしゃった時はどこに住まわれていたのですか?」
「王宮の独身者用の寮だな。その後は師匠のところで世話になって、今度は学園の独身者用の寮に入っていた」
「寮とは、どんなところなのですか?」

 イメージが湧かなくて尋ねると、クロード様は肩をすくめる。

「寝て、体を休めるだけの部屋という感じだな。大きさは、今、ジュリアの部屋についている侍女が休む小部屋くらいの部屋だ」
「えっ、それでは、食事などはどうなさるのですか?」
「食事は食堂でまとめて作ったものを食べていたな。あとは、王宮に官吏用の食堂があって、そちらで摂るかだった。驚いただろう?」
「……はい」

 頷いた私に、クロード様は優しく微笑む。
 ふと、クロード様が立ち止まり、私に向き直った。

「オレは平民の出で、生まれも育ちも、ジュリアとは全然違う」

 クロード様が何を言うのかと思い、彼を見上げた。

「けど、筆頭魔術師の仕事に復帰したし、エリアス殿下が魔法伯という新しい爵位を作って、オレに授けてくださるそうだ。だから、前のような暮らしとはいかなくとも、ジュリアに不自由な思いはさせない。だから」

 金色の瞳が真っ直ぐに私を見つめる。

「どうか、オレの妻になってくれないか?」
「妻……」

 呆然とする私に、クロード様は困ったように微笑む。

「やはり、元平民では、ジュリアには釣り合わないだろうか」

 その言葉に、慌てて首を振った。

「違います! 私でいいのかと思って」
「いいもなにも、オレはジュリアがいいんだ」
「私が……?」

 クロード様は、気まずげに口を開く。

「一目惚れだ。もう十年ほど経つからから覚えていないかもしれないが、王宮の時計塔で。あの時のオレは、まだ見習いで師匠に連れられていた。その時に」

 驚く私に、クロード様は続ける。

「ずっと、好きだったんだ。でも、諦めていた。筆頭魔術師になれば貴族のご令嬢に婚約を申し込んでも無碍にされないと思って頑張ったが、オレが地位を手に入れた時にはジュリアは王太子の婚約者で。オレには、手の届かない人だと諦めるしかなかった。それでも、王妃となった貴女を、近くで支えられたらと思っていた」

 クロード様の言葉に、私は声を詰まらせながらも言う。

「でも、私は、これから平民として生きていくことになるのだと……。クロード様は折角、貴族になられるのに」
「そんなの気にするわけがないだろ!」
「ですが……」

 平民出身ということで、かなり苦労してきたと聞いているのに、私のせいで余計な苦労をかけてしまわないのだろうか。

「もしジュリアがそこを気にするのなら、師匠が養子にしてくれると言っている。…………ジュリアは、オレが、嫌いか?」
「違います! 好きだから、私のせいで迷惑をかけたくなくて」
「何も考えなくて良い。ジュリアの気持ちだけで良いんだ」

 クロード様の言葉に、私の中に残っていた躊躇いが消えてしまう。

「私も、クロード様が好きです――」

 だから、結婚してください、と言おうとしたところで、クロード様に抱きしめられる。

「絶対、絶対、大切にする」

 クロード様に抱きしめられ、私も腕をクロード様の背中に回した。

「私も、沢山クロード様のこと、幸せにしたいです」

 お互いの気持ちが落ち着くまで、ずっとそうしていた。
感想 24

あなたにおすすめの小説

全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。

彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。

あなた方には後悔してもらいます!

風見ゆうみ
恋愛
私、リサ・ミノワーズは小国ではありますが、ミドノワール国の第2王女です。 私の国では代々、王の子供であれば、性別や生まれの早い遅いは関係なく、成人近くになると王となるべき人の胸元に国花が浮き出ると言われていました。 国花は今まで、長男や長女にしか現れなかったそうですので、次女である私は、姉に比べて母からはとても冷遇されておりました。 それは私が17歳の誕生日を迎えた日の事、パーティー会場の外で姉の婚約者と私の婚約者が姉を取り合い、喧嘩をしていたのです。 婚約破棄を受け入れ、部屋に戻り1人で泣いていると、私の胸元に国花が浮き出てしまったじゃないですか! お父様にその事を知らせに行くと、そこには隣国の国王陛下もいらっしゃいました。 事情を知った陛下が息子である第2王子を婚約者兼協力者として私に紹介して下さる事に! 彼と一緒に元婚約者達を後悔させてやろうと思います! ※史実とは関係ない異世界の世界観であり、話の中での色々な設定は話の都合、展開の為のご都合主義、ゆるい設定ですので、そんな世界なのだとご了承いただいた上でお読み下さいませ。 ※話が合わない場合は閉じていただきますよう、お願い致します。

君を愛するつもりはないと言われた私は、鬼嫁になることにした

せいめ
恋愛
美しい旦那様は結婚初夜に言いました。 「君を愛するつもりはない」と。 そんな……、私を愛してくださらないの……? 「うっ……!」 ショックを受けた私の頭に入ってきたのは、アラフォー日本人の前世の記憶だった。 ああ……、貧乏で没落寸前の伯爵様だけど、見た目だけはいいこの男に今世の私は騙されたのね。 貴方が私を妻として大切にしてくれないなら、私も好きにやらせてもらいますわ。 旦那様、短い結婚生活になりそうですが、どうぞよろしく! 誤字脱字お許しください。本当にすみません。 ご都合主義です。

ジェリー・ベケットは愛を信じられない

砂臥 環
恋愛
ベケット子爵家の娘ジェリーは、父が再婚してから離れに追いやられた。 母をとても愛し大切にしていた父の裏切りを知り、ジェリーは愛を信じられなくなっていた。 それを察し、まだ子供ながらに『君を守る』と誓い、『信じてほしい』と様々な努力してくれた婚約者モーガンも、学園に入ると段々とジェリーを避けらるようになっていく。 しかも、義妹マドリンが入学すると彼女と仲良くするようになってしまった。 だが、一番辛い時に支え、努力してくれる彼を信じようと決めたジェリーは、なにも言えず、なにも聞けずにいた。 学園でジェリーは優秀だったが『氷の姫君』というふたつ名を付けられる程、他人と一線を引いており、誰にも悩みは吐露できなかった。 そんな時、仕事上のパートナーを探す男子生徒、ウォーレンと親しくなる。 ※世界観はゆるゆる ※ざまぁはちょっぴり ※他サイトにも掲載

どうしてあなたが後悔するのですか?~私はあなたを覚えていませんから~

クロユキ
恋愛
公爵家の家系に生まれたジェシカは一人娘でもあり我が儘に育ちなんでも思い通りに成らないと気がすまない性格だがそんな彼女をイヤだと言う者は居なかった。彼氏を作るにも慎重に選び一人の男性に目を向けた。 同じ公爵家の男性グレスには婚約を約束をした伯爵家の娘シャーロットがいた。 ジェシカはグレスに強制にシャーロットと婚約破棄を言うがしっこいと追い返されてしまう毎日、それでも諦めないジェシカは貴族で集まった披露宴でもグレスに迫りベランダに出ていたグレスとシャーロットを見つけ寄り添う二人を引き離そうとグレスの手を握った時グレスは手を払い退けジェシカは体ごと手摺をすり抜け落下した… 誤字脱字がありますが気にしないと言っていただけたら幸いです…更新は不定期ですがよろしくお願いします。

婚約破棄を申し入れたのは、父です ― 王子様、あなたの企みはお見通しです!

みかぼう。
恋愛
公爵令嬢クラリッサ・エインズワースは、王太子ルーファスの婚約者。 幼い日に「共に国を守ろう」と誓い合ったはずの彼は、 いま、別の令嬢マリアンヌに微笑んでいた。 そして――年末の舞踏会の夜。 「――この婚約、我らエインズワース家の名において、破棄させていただきます!」 エインズワース公爵が力強く宣言した瞬間、 王国の均衡は揺らぎ始める。 誇りを捨てず、誠実を貫く娘。 政の闇に挑む父。 陰謀を暴かんと手を伸ばす宰相の子。 そして――再び立ち上がる若き王女。 ――沈黙は逃げではなく、力の証。 公爵令嬢の誇りが、王国の未来を変える。 ――荘厳で静謐な政略ロマンス。 (本作品は小説家になろう、カクヨムにも掲載中です)

婚約破棄してくださって結構です

二位関りをん
恋愛
伯爵家の令嬢イヴには同じく伯爵家令息のバトラーという婚約者がいる。しかしバトラーにはユミアという子爵令嬢がいつもべったりくっついており、イヴよりもユミアを優先している。そんなイヴを公爵家次期当主のコーディが優しく包み込む……。 ※表紙にはAIピクターズで生成した画像を使用しています

【完結】私を捨てて駆け落ちしたあなたには、こちらからさようならを言いましょう。

やまぐちこはる
恋愛
パルティア・エンダライン侯爵令嬢はある日珍しく婿入り予定の婚約者から届いた手紙を読んで、彼が駆け落ちしたことを知った。相手は同じく侯爵令嬢で、そちらにも王家の血筋の婿入りする婚約者がいたが、貴族派閥を保つ政略結婚だったためにどうやっても婚約を解消できず、愛の逃避行と洒落こんだらしい。 落ち込むパルティアは、しばらく社交から離れたい療養地としても有名な別荘地へ避暑に向かう。静かな湖畔で傷を癒やしたいと、高級ホテルでひっそり寛いでいると同じ頃から同じように、人目を避けてぼんやり湖を眺める美しい青年に気がついた。 毎日涼しい湖畔で本を読みながら、チラリチラリと彼を盗み見ることが日課となったパルティアだが。 様子がおかしい青年に気づく。 ふらりと湖に近づくと、ポチャっと小さな水音を立てて入水し始めたのだ。 ドレスの裾をたくしあげ、パルティアも湖に駆け込んで彼を引き留めた。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ 最終話まで予約投稿済です。 次はどんな話を書こうかなと思ったとき、駆け落ちした知人を思い出し、そんな話を書くことに致しました。 ある日突然、紙1枚で消えるのは本当にびっくりするのでやめてくださいという思いを込めて。 楽しんで頂けましたら、きっと彼らも喜ぶことと思います。