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23.陰陽師って?
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私の質問に土御門君が答える。
「陰陽師が使う、退魔――悪霊を祓うための呪法だよ。基本の形はあるけど、流派ごとに違いがあるんだ」
「へぇ……」
なんだか、全然知らない世界の話だ。
「あれ、でも。陰陽師って占いをする人だと思ってたんだけど、悪霊を祓ったりもするの?」
よく覚えてないけど、最初にハムアキラから聞いたイメージでは、占い師さんみたいな感じだと思っていた。
「占い師っていうのは、間違ってはいないけど、十分ではないかな」
土御門君が首を傾げる。
「うーん、どこから話そう」
考え込んだ土御門君に、ハムアキラが前足を挙げる。
「その話、長くなるなら、こっちのクッキーを貰ってもよいか?」
「はい。もちろんです」
「あっ、私も食べたい」
ハムアキラに一枚とってあげて、私も一枚いただく。
「美味しいのじゃ!」
「うん! 美味しいね!」
私達のやりとりに、戸惑いながら土御門君が説明を始めた。
「まだ学校では歴史は習ってないから簡単に話すけど、千年以上前の日本では、陰陽師って天皇陛下に仕える役職の一つだったんだ」
「なんだか、すごそうだね」
「うん。今で言う国家公務員かな」
「うーん?」
と言われても、いまいち想像がつかない私に、土御門君が言う、
「あんまり普段、馴染みがないもんね。国が決めた試験に合格して、普段は霞が関や全国各地でお仕事をされている人のことを国家公務員と言うんだけど、えっと、僕達が見たことがあるのは、大雨や災害の時にテレビで気象情報を発表したりする人達かな」
「あぁ! それならわかるかも。ニュースを見たことある」
土御門君はほっと息を吐く。
「あれ、てことは、陰陽師ってすごいの?」
私の言葉に、ハムアキラが反応する。
「もちろんじゃ!」
クッキーをカリカリかじりながら言うハムアキラは全然すごそうに見えないけど、土御門君は頷く。
「そうだね。昔は時計なんてなかったから、時間を計ったり、天文学を学んで暦――カレンダーを作ったりしていたんだ」
「えぇ⁉」
時計がないなんて想像できない。
「カレンダーも今とは違う考え方で作られてて、一年分の日の出の時刻や日没の時刻、吉凶や、やってはいけないことなんかが書かれていたんだ。毎年、それを天皇陛下に献上していた」
「すごい、大変そう」
「うん。当時は今みたいに気象衛星とか望遠鏡とかなかったから、今よりとても大変だったと思う」
「どうやって、そんなことわかったんだろう」
「実際に星を見て、観察していたと聞いているよ」
「へぇ……」
大変そうという言葉以外に思い浮かばない。
「何か、全然占い師と違うイメージなんだけど」
私の発言に、土御門君は頷く。
「そうだね。そこだけ聞いたらそうかも。でもさ、天体の運行から、毎日の吉凶を占うって今でも身近な考え方だよね。朝のテレビでも占いってやってるよね?」
そんなのあったかなと思うけど、テレビでもやってるって聞いて、閃いた。
「……あ、星座占い!」
「そう。あれは、西洋占星術って言って西洋で生まれた占いだけど、生まれた日の天体の配置から、その人の星座を出して、その日の天体の配置と比べて吉凶を出してるんだ」
「そうなんだ。知らなかった……」
「西洋占星術とは色々考え方は違うけど、陰陽師の占いもそれと同じことをしてるんだよ」
「陰陽師のお仕事と、占いが繋がった……」
頷くと、土御門君は嬉し気に頷いた。陰陽師のこと、好きなんだろうな。
「もぐ……、なかなか、もぐ、……上手な説明だったのじゃ」
もぐもぐしながらハムアキラが言う。あれっと思っておやつのお皿を見ると、クッキーがなくなっている。
「あっ! ハムアキラ! 全部食べちゃってる!」
気が付くと、ハムアキラがクッキーを食べつくし、チョコレートを食べているところだった。
「チョコレートはまだ残しておるぞ」
「チョコは貰うけど、クッキーは一枚しか食べてないのに!」
そのやり取りを見て、土御門君が言う。
「クッキー、まだないか聞いてくるね」
「あっ、そこまでは……」
咄嗟に断ろうとするけど、ハムアキラが「なら、わしの分のお茶も欲しいのじゃ」と言い出したため、口をつぐむ。
「わかりました」
そうして、土御門君はお皿を持って席を立った。
「陰陽師が使う、退魔――悪霊を祓うための呪法だよ。基本の形はあるけど、流派ごとに違いがあるんだ」
「へぇ……」
なんだか、全然知らない世界の話だ。
「あれ、でも。陰陽師って占いをする人だと思ってたんだけど、悪霊を祓ったりもするの?」
よく覚えてないけど、最初にハムアキラから聞いたイメージでは、占い師さんみたいな感じだと思っていた。
「占い師っていうのは、間違ってはいないけど、十分ではないかな」
土御門君が首を傾げる。
「うーん、どこから話そう」
考え込んだ土御門君に、ハムアキラが前足を挙げる。
「その話、長くなるなら、こっちのクッキーを貰ってもよいか?」
「はい。もちろんです」
「あっ、私も食べたい」
ハムアキラに一枚とってあげて、私も一枚いただく。
「美味しいのじゃ!」
「うん! 美味しいね!」
私達のやりとりに、戸惑いながら土御門君が説明を始めた。
「まだ学校では歴史は習ってないから簡単に話すけど、千年以上前の日本では、陰陽師って天皇陛下に仕える役職の一つだったんだ」
「なんだか、すごそうだね」
「うん。今で言う国家公務員かな」
「うーん?」
と言われても、いまいち想像がつかない私に、土御門君が言う、
「あんまり普段、馴染みがないもんね。国が決めた試験に合格して、普段は霞が関や全国各地でお仕事をされている人のことを国家公務員と言うんだけど、えっと、僕達が見たことがあるのは、大雨や災害の時にテレビで気象情報を発表したりする人達かな」
「あぁ! それならわかるかも。ニュースを見たことある」
土御門君はほっと息を吐く。
「あれ、てことは、陰陽師ってすごいの?」
私の言葉に、ハムアキラが反応する。
「もちろんじゃ!」
クッキーをカリカリかじりながら言うハムアキラは全然すごそうに見えないけど、土御門君は頷く。
「そうだね。昔は時計なんてなかったから、時間を計ったり、天文学を学んで暦――カレンダーを作ったりしていたんだ」
「えぇ⁉」
時計がないなんて想像できない。
「カレンダーも今とは違う考え方で作られてて、一年分の日の出の時刻や日没の時刻、吉凶や、やってはいけないことなんかが書かれていたんだ。毎年、それを天皇陛下に献上していた」
「すごい、大変そう」
「うん。当時は今みたいに気象衛星とか望遠鏡とかなかったから、今よりとても大変だったと思う」
「どうやって、そんなことわかったんだろう」
「実際に星を見て、観察していたと聞いているよ」
「へぇ……」
大変そうという言葉以外に思い浮かばない。
「何か、全然占い師と違うイメージなんだけど」
私の発言に、土御門君は頷く。
「そうだね。そこだけ聞いたらそうかも。でもさ、天体の運行から、毎日の吉凶を占うって今でも身近な考え方だよね。朝のテレビでも占いってやってるよね?」
そんなのあったかなと思うけど、テレビでもやってるって聞いて、閃いた。
「……あ、星座占い!」
「そう。あれは、西洋占星術って言って西洋で生まれた占いだけど、生まれた日の天体の配置から、その人の星座を出して、その日の天体の配置と比べて吉凶を出してるんだ」
「そうなんだ。知らなかった……」
「西洋占星術とは色々考え方は違うけど、陰陽師の占いもそれと同じことをしてるんだよ」
「陰陽師のお仕事と、占いが繋がった……」
頷くと、土御門君は嬉し気に頷いた。陰陽師のこと、好きなんだろうな。
「もぐ……、なかなか、もぐ、……上手な説明だったのじゃ」
もぐもぐしながらハムアキラが言う。あれっと思っておやつのお皿を見ると、クッキーがなくなっている。
「あっ! ハムアキラ! 全部食べちゃってる!」
気が付くと、ハムアキラがクッキーを食べつくし、チョコレートを食べているところだった。
「チョコレートはまだ残しておるぞ」
「チョコは貰うけど、クッキーは一枚しか食べてないのに!」
そのやり取りを見て、土御門君が言う。
「クッキー、まだないか聞いてくるね」
「あっ、そこまでは……」
咄嗟に断ろうとするけど、ハムアキラが「なら、わしの分のお茶も欲しいのじゃ」と言い出したため、口をつぐむ。
「わかりました」
そうして、土御門君はお皿を持って席を立った。
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