10 / 19
魔法授業、請け負います
しおりを挟む
「ウィルアス弟いるかー?」
「ここにいまーす」
お昼休みの為食堂に向かう途中、先生に呼び止められた。
ウィルアス弟。
先生達の大半はそう呼んでくる。
兄が教員組にいるせいだと思うけど…、まあ学校に通っちゃえば先生の方が偉いのはどこも一緒だしね。
特に不自由も感じてないから訂正とかは何もしない。
さて、お呼び出しの件はなんだろう?
テストの点数はそこそこ戻せた筈だけど…。
「どうかしましたか?」
「いやな、ウィルアス先生が今日休みだろう。それで一部授業が出来ないクラスがあるんだ」
そう、今日は珍しくレオンが休みの日…という訳ではなく、風邪の為有給を消化し寝ているところである。
学校での俺が見えないのが不安だ嫌だと言うレオンを宥め賺し、俺はいつも通り登校して来たということだった。
……ブラコン具合もここまでくるといっそ清々しい。あの時のレオンは、本当に大きな子供と称してもおかしくなかった。
しかし、それと俺となぜ関係があるのだろう。
「魔法科が受けられないのは一クラスなんだ。魔法に関して秀でているのは学園内ではウィルアス弟しか居なくてな、そのクラスで授業をして欲しいんだ」
「……はい??」
どういう事かと言う前に、単位は保証すると言われてしまい断る機会を失った…。
─────────────────────
「…と、言う訳で、今日は兄の代わりに自分が授業を担当する事になりました。今日は実技みたいなので、皆さん指定の場所まで集まってください」
俺はレオンの使っていた教科書を借り、今日の授業内容を確認した後生徒達…一年のクラスの子達にそう案内した。
周りはザワついてる。
本当に代わりが勤まるのかとか、ただのコネじゃないかとか。
その中で唯一満面の笑みで手を振ってくれている、セシル。
…、そう。受け持ったのはセシルのクラス。
つまり主人公が居るクラスだ……。
あまり視線を上げたくない…。
なんとなく訝しげな視線に混ざって、刺さる様な視線を感じるのは勘違いじゃないだろう。
こんなイベントあったかな、と思いながらも、俺は生徒達を誘導して練習場まで歩いたのであった。
さて、実技と言っても色々ある。
それぞれの属性に合った魔力を伸ばしていくこと。
実際の敵を想定して模擬戦をすること。
今回は……。
「あの、ウィルアス伯爵令息」
「なに?」
「他の先生方からの推薦で選ばれたらしいですね、正直レオン先生と同様の授業を受けられるか不安なのですが…」
ふむ。一理ある。
レオンの程の魔力がある訳ではないのは重々承知しているけれど、こちとらその先生からお墨付きを頂いているんだよね。
意外にも魔法というものは構造を知ってしまえば面白い。
俺はのめり込んでしまい、寧ろ程々にしとけと言われてしまう始末。
「みんなの意見はご最もだ。論より証拠。本日は模擬戦を開始します」
まあそんな事みんなは知らないからね。
それならその不安を拭えばいい。
俺は魔力を集中させ、液体状のゴーレムの様な物を作ってみせた。
「な……!あんな大きいのを一瞬で!?」
「信じられない…」
「少しは納得してもらえたかな?」
論より証拠。これはレオンの口癖。いつの間にか移ってしまった。
…それにしても、こんなモノ一つ作っただけで驚かれるとは思わなかった。
「じゃあこれから模擬戦を開始します。人数分作ってもいいけど、流石に全員見られないからこれを三体作ります。それをみんなで協力して倒してみて」
そう言って残り二体を生成したところで、セシルの視線に気付いた。
あれは頑張るから見ててください!…って言ってるみたいな目だ。うんうん、やっぱり後輩は可愛いな。
「それでは、始め!」
各々がゴーレムに突っ込んで行くところを確認し、後方から見守る事にした。
「ここにいまーす」
お昼休みの為食堂に向かう途中、先生に呼び止められた。
ウィルアス弟。
先生達の大半はそう呼んでくる。
兄が教員組にいるせいだと思うけど…、まあ学校に通っちゃえば先生の方が偉いのはどこも一緒だしね。
特に不自由も感じてないから訂正とかは何もしない。
さて、お呼び出しの件はなんだろう?
テストの点数はそこそこ戻せた筈だけど…。
「どうかしましたか?」
「いやな、ウィルアス先生が今日休みだろう。それで一部授業が出来ないクラスがあるんだ」
そう、今日は珍しくレオンが休みの日…という訳ではなく、風邪の為有給を消化し寝ているところである。
学校での俺が見えないのが不安だ嫌だと言うレオンを宥め賺し、俺はいつも通り登校して来たということだった。
……ブラコン具合もここまでくるといっそ清々しい。あの時のレオンは、本当に大きな子供と称してもおかしくなかった。
しかし、それと俺となぜ関係があるのだろう。
「魔法科が受けられないのは一クラスなんだ。魔法に関して秀でているのは学園内ではウィルアス弟しか居なくてな、そのクラスで授業をして欲しいんだ」
「……はい??」
どういう事かと言う前に、単位は保証すると言われてしまい断る機会を失った…。
─────────────────────
「…と、言う訳で、今日は兄の代わりに自分が授業を担当する事になりました。今日は実技みたいなので、皆さん指定の場所まで集まってください」
俺はレオンの使っていた教科書を借り、今日の授業内容を確認した後生徒達…一年のクラスの子達にそう案内した。
周りはザワついてる。
本当に代わりが勤まるのかとか、ただのコネじゃないかとか。
その中で唯一満面の笑みで手を振ってくれている、セシル。
…、そう。受け持ったのはセシルのクラス。
つまり主人公が居るクラスだ……。
あまり視線を上げたくない…。
なんとなく訝しげな視線に混ざって、刺さる様な視線を感じるのは勘違いじゃないだろう。
こんなイベントあったかな、と思いながらも、俺は生徒達を誘導して練習場まで歩いたのであった。
さて、実技と言っても色々ある。
それぞれの属性に合った魔力を伸ばしていくこと。
実際の敵を想定して模擬戦をすること。
今回は……。
「あの、ウィルアス伯爵令息」
「なに?」
「他の先生方からの推薦で選ばれたらしいですね、正直レオン先生と同様の授業を受けられるか不安なのですが…」
ふむ。一理ある。
レオンの程の魔力がある訳ではないのは重々承知しているけれど、こちとらその先生からお墨付きを頂いているんだよね。
意外にも魔法というものは構造を知ってしまえば面白い。
俺はのめり込んでしまい、寧ろ程々にしとけと言われてしまう始末。
「みんなの意見はご最もだ。論より証拠。本日は模擬戦を開始します」
まあそんな事みんなは知らないからね。
それならその不安を拭えばいい。
俺は魔力を集中させ、液体状のゴーレムの様な物を作ってみせた。
「な……!あんな大きいのを一瞬で!?」
「信じられない…」
「少しは納得してもらえたかな?」
論より証拠。これはレオンの口癖。いつの間にか移ってしまった。
…それにしても、こんなモノ一つ作っただけで驚かれるとは思わなかった。
「じゃあこれから模擬戦を開始します。人数分作ってもいいけど、流石に全員見られないからこれを三体作ります。それをみんなで協力して倒してみて」
そう言って残り二体を生成したところで、セシルの視線に気付いた。
あれは頑張るから見ててください!…って言ってるみたいな目だ。うんうん、やっぱり後輩は可愛いな。
「それでは、始め!」
各々がゴーレムに突っ込んで行くところを確認し、後方から見守る事にした。
154
あなたにおすすめの小説
これはハッピーエンドだ!~モブ妖精、勇者に恋をする~
ツジウチミサト
BL
現実世界からRPGゲームの世界のモブ妖精として転生したエスは、魔王を倒して凱旋した勇者ハルトを寂しそうに見つめていた。彼には、相思相愛の姫と結婚し、仲間を初めとした人々に祝福されるというハッピーエンドが約束されている。そんな彼の幸せを、好きだからこそ見届けられない。ハルトとの思い出を胸に、エスはさよならも告げずに飛び立っていく。
――そんな切ない妖精に教えるよ。これこそが、本当のハッピーエンドだ!
※ノリと勢いで書いた30分くらいでさくっと読めるハッピーエンドです。全3話。他サイトにも掲載しています。
悪役を幸せにしたいのになんか上手くいかないオタクのはなし
はかまる
BL
転生してみたものの気がつけば好きな小説のモブになっていてしかもストーリーのド終盤。
今まさに悪役が追放されそうになっているところを阻止したくなっちゃったオタクの話。
悪役が幸せに学園を卒業できるよう見守るはずがなんだか――――なんだか悪役の様子がおかしくなっちゃったオタクの話。
ヤンデレ(メンヘラ)×推しが幸せになってほしいオタク
乙女ゲームが俺のせいでバグだらけになった件について
はかまる
BL
異世界転生配属係の神様に間違えて何の関係もない乙女ゲームの悪役令状ポジションに転生させられた元男子高校生が、世界がバグだらけになった世界で頑張る話。
彼の至宝
まめ
BL
十五歳の誕生日を迎えた主人公が、突如として思い出した前世の記憶を、本当にこれって前世なの、どうなのとあれこれ悩みながら、自分の中で色々と折り合いをつけ、それぞれの幸せを見つける話。
この俺が正ヒロインとして殿方に求愛されるわけがない!
ゆずまめ鯉
BL
五歳の頃の授業中、頭に衝撃を受けたことから、自分が、前世の妹が遊んでいた乙女ゲームの世界にいることに気づいてしまったニエル・ガルフィオン。
ニエルの外見はどこからどう見ても金髪碧眼の美少年。しかもヒロインとはくっつかないモブキャラだったので、伯爵家次男として悠々自適に暮らそうとしていた。
これなら異性にもモテると信じて疑わなかった。
ところが、正ヒロインであるイリーナと結ばれるはずのチート級メインキャラであるユージン・アイアンズが熱心に構うのは、モブで攻略対象外のニエルで……!?
ユージン・アイアンズ(19)×ニエル・ガルフィオン(19)
公爵家嫡男と伯爵家次男の同い年BLです。
【完結済】氷の貴公子の前世は平社員〜不器用な恋の行方〜
キノア9g
BL
氷の貴公子と称えられるユリウスには、人に言えない秘めた想いがある――それは幼馴染であり、忠実な近衛騎士ゼノンへの片想い。そしてその誇り高さゆえに、自分からその気持ちを打ち明けることもできない。
そんなある日、落馬をきっかけに前世の記憶を思い出したユリウスは、ゼノンへの気持ちに改めて戸惑い、自分が男に恋していた事実に動揺する。プライドから思いを隠し、ゼノンに嫌われていると思い込むユリウスは、あえて冷たい態度を取ってしまう。一方ゼノンも、急に避けられる理由がわからず戸惑いを募らせていく。
近づきたいのに近づけない。
すれ違いと誤解ばかりが積み重なり、視線だけが行き場を失っていく。
秘めた感情と誇りに縛られたまま、ユリウスはこのもどかしい距離にどんな答えを見つけるのか――。
プロローグ+全8話+エピローグ
小学生のゲーム攻略相談にのっていたつもりだったのに、小学生じゃなく異世界の王子さま(イケメン)でした(涙)
九重
BL
大学院修了の年になったが就職できない今どきの学生 坂上 由(ゆう) 男 24歳。
半引きこもり状態となりネットに逃げた彼が見つけたのは【よろず相談サイト】という相談サイトだった。
そこで出会ったアディという小学生? の相談に乗っている間に、由はとんでもない状態に引きずり込まれていく。
これは、知らない間に異世界の国家育成にかかわり、あげく異世界に召喚され、そこで様々な国家の問題に突っ込みたくない足を突っ込み、思いもよらぬ『好意』を得てしまった男の奮闘記である。
注:主人公は女の子が大好きです。それが苦手な方はバックしてください。
*ずいぶん前に、他サイトで公開していた作品の再掲載です。(当時のタイトル「よろず相談サイト」)
異世界にやってきたら氷の宰相様が毎日お手製の弁当を持たせてくれる
七瀬京
BL
異世界に召喚された大学生ルイは、この世界を救う「巫覡」として、力を失った宝珠を癒やす役目を与えられる。
だが、異界の食べ物を受けつけない身体に苦しみ、倒れてしまう。
そんな彼を救ったのは、“氷の宰相”と呼ばれる美貌の男・ルースア。
唯一ルイが食べられるのは、彼の手で作られた料理だけ――。
優しさに触れるたび、ルイの胸に芽生える感情は“感謝”か、それとも“恋”か。
穏やかな日々の中で、ふたりの距離は静かに溶け合っていく。
――心と身体を癒やす、年の差主従ファンタジーBL。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる