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異世界の住人
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どうしよう。
二人きりになった途端沈黙が流れる。
そうなる事はままあったのに、今は気まずくて逃げ出したい。
ここは俺から切り出すべきかな…。
「…リオ」
「おひゃああ!?」
そんな事を考えていると、突然名前を呼ばれてしまい驚いた。
まだ心の準備とか言い訳とか考えてないのに…!
頭を抱えている俺を、アルはふわりと抱き寄せた。
「そんなに緊張しないで、ただ私の話を聞いて欲しい」
優しい声色で、優しい手つきで、俺を安心させようとしてくれるアルに俺はただ頷く。
するとアルはこれまでの事を話そうとしているのか口を開いた。
「リオ、君が異世界から来たのは知っていたよ」
「待って何で!?!」
思わず口を挟む。
というか本当に待って。
異世界から来たって知ってたって何!?
「あの廊下の曲がり角を覚えているかい?」
「うん…、覚えてる」
「ある日、私がそこを通ろうとしたら、突然君が目の前に現れたんだよ」
「……はい?」
訳が分からない。
いや、その時訳が分からなかったのは俺じゃなくてアルなんだろうけど…。
「本当に唐突だった。あの日のことは今でも覚えているよ。それから君は事ある毎に私の前に現れた。移動教室、中庭、帰り道…他にもたくさん、ね?」
驚いた。どれもアルを攻略する為のルートだ。
他にもルートはある。そこに俺が現れたのだろう。
本当はそんな話、有り得ないんだろうけど。
アルはさら、と俺の髪を撫でて梳く。
ああ…好きな人に撫でられるってこんな感じなんだ。
…なんて、考えてる場合ではないのに、一度感じた事を忘れる事も出来なくて、俺はその心地良さを感じながら、アルの話に耳を傾けた。
「もう根負けしてね、君の想いを受け入れたんだ。……そしたら、不思議なことに彼の背後にある映像が浮かんだんだよ」
「黒い何かを持っていて、眼鏡をかけている青年が、私の告白を何度も喜んでいる映像が」
一瞬、時が止まった。
前世の俺は確かに眼鏡をかけていた。何度も何度もゲームをしていたせいか、視力が落ちたのだ。
でも、それを知っているのは今この場で俺だけの筈。
それをアルが知っているという事は、…本当に…?
「でも、それだけじゃ俺が異世界から来たって話には繋がらないんじゃ…」
「嗚呼もちろん。ただ不思議な事があってね。…リオ、君は本来この世界に居なかったんだよ」
……は?
この世界に、居なかった?
「…どういうこと?」
「ウィルアス先生に弟が居て、尚且つ同じ学園の生徒だなんて聞いたことがなかったんだ。実際君のクラスにもそんな生徒が居なかった事は確認済みだ。…でも君が現れてから、変わった。クラス名簿には君の名前があるし、先生は突然君を弟と呼び仲睦まじい姿を見せ始めた。本当に驚いたよ、変化に気付いてるのは、私だけなんだから」
確実に、俺という存在が世界に干渉し始めていた。一体いつから?
「それから時折青年の姿を見るようになったんだ。…何度も、飽きずに同じシーンを繰り返し見ているだけなのに、彼は私を好いてくれていた。私は、…そんな彼を、欲してしまったんだ」
「アルが、俺を呼んだって事…?」
「…もし私が欲してしまったせいなら、そうなってしまうね。」
突然現れたリオは、きっと俺の分身みたいなものだったのだろう。
そこに前世の記憶として、俺がリオの魂に入ってしまった…。
そう考えれば、リオがアルと付き合っていた記憶を持ってる事にも、アルがずっと待ってた…と言っていた事にも、納得がいく。
「俺、本当に、…本当に、アルの事が好きだったんだ」
「うん」
「でもアルはゲームの中の人で、一生手に入る事がない人で…、それでも、ずっとアルを好きなまま生きてた」
「…うん」
「だから、俺の事、…りおも、好きになってくれてありがとう…アル、大好き」
「リオ、…それは私のセリフだよ。私をずっと好きでいてくれてありがとう。…愛してるよ」
そう言ってアルは、俺にキスをしてくれた。
一つだけ、アルに言っていないことは秘密にしておこう。
姉ちゃん、置いて逝ってごめんな。
アルと出会わせてくれた事、本当に感謝してる。
ありがとう。
二人きりになった途端沈黙が流れる。
そうなる事はままあったのに、今は気まずくて逃げ出したい。
ここは俺から切り出すべきかな…。
「…リオ」
「おひゃああ!?」
そんな事を考えていると、突然名前を呼ばれてしまい驚いた。
まだ心の準備とか言い訳とか考えてないのに…!
頭を抱えている俺を、アルはふわりと抱き寄せた。
「そんなに緊張しないで、ただ私の話を聞いて欲しい」
優しい声色で、優しい手つきで、俺を安心させようとしてくれるアルに俺はただ頷く。
するとアルはこれまでの事を話そうとしているのか口を開いた。
「リオ、君が異世界から来たのは知っていたよ」
「待って何で!?!」
思わず口を挟む。
というか本当に待って。
異世界から来たって知ってたって何!?
「あの廊下の曲がり角を覚えているかい?」
「うん…、覚えてる」
「ある日、私がそこを通ろうとしたら、突然君が目の前に現れたんだよ」
「……はい?」
訳が分からない。
いや、その時訳が分からなかったのは俺じゃなくてアルなんだろうけど…。
「本当に唐突だった。あの日のことは今でも覚えているよ。それから君は事ある毎に私の前に現れた。移動教室、中庭、帰り道…他にもたくさん、ね?」
驚いた。どれもアルを攻略する為のルートだ。
他にもルートはある。そこに俺が現れたのだろう。
本当はそんな話、有り得ないんだろうけど。
アルはさら、と俺の髪を撫でて梳く。
ああ…好きな人に撫でられるってこんな感じなんだ。
…なんて、考えてる場合ではないのに、一度感じた事を忘れる事も出来なくて、俺はその心地良さを感じながら、アルの話に耳を傾けた。
「もう根負けしてね、君の想いを受け入れたんだ。……そしたら、不思議なことに彼の背後にある映像が浮かんだんだよ」
「黒い何かを持っていて、眼鏡をかけている青年が、私の告白を何度も喜んでいる映像が」
一瞬、時が止まった。
前世の俺は確かに眼鏡をかけていた。何度も何度もゲームをしていたせいか、視力が落ちたのだ。
でも、それを知っているのは今この場で俺だけの筈。
それをアルが知っているという事は、…本当に…?
「でも、それだけじゃ俺が異世界から来たって話には繋がらないんじゃ…」
「嗚呼もちろん。ただ不思議な事があってね。…リオ、君は本来この世界に居なかったんだよ」
……は?
この世界に、居なかった?
「…どういうこと?」
「ウィルアス先生に弟が居て、尚且つ同じ学園の生徒だなんて聞いたことがなかったんだ。実際君のクラスにもそんな生徒が居なかった事は確認済みだ。…でも君が現れてから、変わった。クラス名簿には君の名前があるし、先生は突然君を弟と呼び仲睦まじい姿を見せ始めた。本当に驚いたよ、変化に気付いてるのは、私だけなんだから」
確実に、俺という存在が世界に干渉し始めていた。一体いつから?
「それから時折青年の姿を見るようになったんだ。…何度も、飽きずに同じシーンを繰り返し見ているだけなのに、彼は私を好いてくれていた。私は、…そんな彼を、欲してしまったんだ」
「アルが、俺を呼んだって事…?」
「…もし私が欲してしまったせいなら、そうなってしまうね。」
突然現れたリオは、きっと俺の分身みたいなものだったのだろう。
そこに前世の記憶として、俺がリオの魂に入ってしまった…。
そう考えれば、リオがアルと付き合っていた記憶を持ってる事にも、アルがずっと待ってた…と言っていた事にも、納得がいく。
「俺、本当に、…本当に、アルの事が好きだったんだ」
「うん」
「でもアルはゲームの中の人で、一生手に入る事がない人で…、それでも、ずっとアルを好きなまま生きてた」
「…うん」
「だから、俺の事、…りおも、好きになってくれてありがとう…アル、大好き」
「リオ、…それは私のセリフだよ。私をずっと好きでいてくれてありがとう。…愛してるよ」
そう言ってアルは、俺にキスをしてくれた。
一つだけ、アルに言っていないことは秘密にしておこう。
姉ちゃん、置いて逝ってごめんな。
アルと出会わせてくれた事、本当に感謝してる。
ありがとう。
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