1 / 24
第1章
一色 香(26)は、輸入雑貨の会社に勤めて4年になる。
同僚にも恵まれ、充実した毎日を送っていた。
1年前、外資系アパレル会社に勤める一色 大和(28)と結婚。
子どもはまだいないが、二人の生活は穏やかで心地よい。
ラブラブというわけではないけれど、
一緒に食事をしたり、時間が合えばデートを楽しんだり。
新婚だけど、恋人のような関係が続いている。
大和はまさに私の理想の男性。
背が高くてかっこよく、アパレル業界で働くだけあってセンスも抜群。
今住んでいるマンションのインテリアも、大和がコーディネートしたものだ。
居心地のいい空間に、二人で選んだソファもよく馴染んでいる。
「私は雑貨くらいしか選んでないけどね。」
細かいものが好きな私は、部屋のあちこちにお気に入りの小物を飾っている。
その中でも特に大切なのが、ハワイで挙げた結婚式の写真。
お気に入りの一枚だ。
「本当に結婚するなんて、今でも信じられない。」
付き合って1年で結婚。
大和がプロポーズしてくれたときは、夢のようだった。
元々、あまり結婚に乗り気ではなかった大和。
だからこそ、彼の「結婚しよう」という言葉が信じられなかった。
会社の同僚、小川 鈴にもよく言われる。
「旦那さん、かっこいいよね。香とお似合い。」
嬉しい言葉だけど、私はそんなにモテるタイプじゃない。
見た目も“中の上”くらいだと思ってる。
強いて言えば、胸が大きいのが取り柄かな……。
でも鈴はいつも言う。
「香は女優になれるくらい美人なんだよ。」
「旦那さんもかっこいいけど、香のほうがそれ以上に綺麗なの! わかってる?」
「それに、旦那に尽くしてばかりじゃなくて、もっと尽くされる女になりなよ。」
そう冗談めかして言われるけど、
さすがにそれは言いすぎだと思う。
私たちの新居は会社から2駅離れた場所にある。大和の通勤にも便利な距離だ。
今日は「一緒にご飯を食べて帰ろう」と大和からメールが届いた。
待ち合わせは、いつもの居酒屋。
私が先に着いたので、ビールと焼き鳥を注文し、ひと足先に楽しむことにした。
焼き鳥を頬張っていると、大和が店に入ってくる。
居酒屋の雰囲気には似つかわしくない洗練されたファッションと、どこか品のある佇まい。
こんな素敵な人が私の旦那だなんて、今でも信じられない。
「お疲れさま。」
「乾杯!」
グラスを合わせ、一口飲んだ瞬間、ふたり同時に声を揃える。
「あー、美味しい!」
「今日、仕事忙しかった?」
「ああ、バタバタしてたよ。来週は海外出張になりそうだ。」
「えっ、どこに?」
「フランス。」
「フランス!?すごい!」
「コレクションの視察も兼ねてるからな。でも、新婚なのにごめん。」
「仕事だから仕方ないよ。」
「ありがとう。」
大和は申し訳なさそうに微笑み、グラスを傾けた。
その横顔を見つめながら、私はふと、この人と一緒にいる幸せを噛みしめた。
あなたにおすすめの小説
愛する貴方の心から消えた私は…
矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。
周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。
…彼は絶対に生きている。
そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。
だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。
「すまない、君を愛せない」
そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。
*設定はゆるいです。
【完結】冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない
くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、
軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。
言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。
――そして初めて、夫は気づく。
自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。
一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、
「必要とされる存在」として歩き始めていた。
去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。
これは、失ってから愛に気づいた男と、
二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。
――今さら、遅いのです。
【完結】愛する人はあの人の代わりに私を抱く
紬あおい
恋愛
年上の優しい婚約者は、叶わなかった過去の恋人の代わりに私を抱く。気付かない振りが我慢の限界を超えた時、私は………そして、愛する婚約者や家族達は………悔いのない人生を送れましたか?
【完結】旦那は堂々と不倫行為をするようになったのですが離婚もさせてくれないので、王子とお父様を味方につけました
よどら文鳥
恋愛
ルーンブレイス国の国家予算に匹敵するほどの資産を持つハイマーネ家のソフィア令嬢は、サーヴィン=アウトロ男爵と恋愛結婚をした。
ソフィアは幸せな人生を送っていけると思っていたのだが、とある日サーヴィンの不倫行為が発覚した。それも一度や二度ではなかった。
ソフィアの気持ちは既に冷めていたため離婚を切り出すも、サーヴィンは立場を理由に認めようとしない。
更にサーヴィンは第二夫妻候補としてラランカという愛人を連れてくる。
再度離婚を申し立てようとするが、ソフィアの財閥と金だけを理由にして一向に離婚を認めようとしなかった。
ソフィアは家から飛び出しピンチになるが、救世主が現れる。
後に全ての成り行きを話し、ロミオ=ルーンブレイス第一王子を味方につけ、更にソフィアの父をも味方につけた。
ソフィアが想定していなかったほどの制裁が始まる。
夫は私を愛してくれない
はくまいキャベツ
恋愛
「今までお世話になりました」
「…ああ。ご苦労様」
彼はまるで長年勤めて退職する部下を労うかのように、妻である私にそう言った。いや、妻で“あった”私に。
二十数年間すれ違い続けた夫婦が別れを決めて、もう一度向き合う話。
旦那様に愛されなかった滑稽な妻です。
アズやっこ
恋愛
私は旦那様を愛していました。
今日は三年目の結婚記念日。帰らない旦那様をそれでも待ち続けました。
私は旦那様を愛していました。それでも旦那様は私を愛してくれないのですね。
これはお別れではありません。役目が終わったので交代するだけです。役立たずの妻で申し訳ありませんでした。
【完結】他の人が好きな人を好きになる姉に愛する夫を奪われてしまいました。
山葵
恋愛
私の愛する旦那様。私は貴方と結婚して幸せでした。
姉は「協力するよ!」と言いながら友達や私の好きな人に近づき「彼、私の事を好きだって!私も話しているうちに好きになっちゃったかも♡」と言うのです。
そんな姉が離縁され実家に戻ってきました。
【完結】裏切られたあなたにもう二度と恋はしない
たろ
恋愛
優しい王子様。あなたに恋をした。
あなたに相応しくあろうと努力をした。
あなたの婚約者に選ばれてわたしは幸せでした。
なのにあなたは美しい聖女様に恋をした。
そして聖女様はわたしを嵌めた。
わたしは地下牢に入れられて殿下の命令で騎士達に犯されて死んでしまう。
大好きだったお父様にも見捨てられ、愛する殿下にも嫌われ酷い仕打ちを受けて身と心もボロボロになり死んでいった。
その時の記憶を忘れてわたしは生まれ変わった。
知らずにわたしはまた王子様に恋をする。