嘘つきは泥棒の始まり〜裏切りの代償〜

HARUKA

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第1章

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一色 香(26)は、輸入雑貨の会社に勤めて4年になる。

同僚にも恵まれ、充実した毎日を送っていた。

1年前、外資系アパレル会社に勤める一色 大和(28)と結婚。

子どもはまだいないが、二人の生活は穏やかで心地よい。

ラブラブというわけではないけれど、
一緒に食事をしたり、時間が合えばデートを楽しんだり。

新婚だけど、恋人のような関係が続いている。

大和はまさに私の理想の男性。

背が高くてかっこよく、アパレル業界で働くだけあってセンスも抜群。

今住んでいるマンションのインテリアも、大和がコーディネートしたものだ。

居心地のいい空間に、二人で選んだソファもよく馴染んでいる。

「私は雑貨くらいしか選んでないけどね。」

細かいものが好きな私は、部屋のあちこちにお気に入りの小物を飾っている。

その中でも特に大切なのが、ハワイで挙げた結婚式の写真。

お気に入りの一枚だ。

「本当に結婚するなんて、今でも信じられない。」

付き合って1年で結婚。

大和がプロポーズしてくれたときは、夢のようだった。

元々、あまり結婚に乗り気ではなかった大和。

だからこそ、彼の「結婚しよう」という言葉が信じられなかった。

会社の同僚、小川 鈴にもよく言われる。

「旦那さん、かっこいいよね。香とお似合い。」

嬉しい言葉だけど、私はそんなにモテるタイプじゃない。

見た目も“中の上”くらいだと思ってる。
強いて言えば、胸が大きいのが取り柄かな……。

でも鈴はいつも言う。

「香は女優になれるくらい美人なんだよ。」

「旦那さんもかっこいいけど、香のほうがそれ以上に綺麗なの! わかってる?」

「それに、旦那に尽くしてばかりじゃなくて、もっと尽くされる女になりなよ。」

そう冗談めかして言われるけど、
さすがにそれは言いすぎだと思う。

私たちの新居は会社から2駅離れた場所にある。大和の通勤にも便利な距離だ。

今日は「一緒にご飯を食べて帰ろう」と大和からメールが届いた。

待ち合わせは、いつもの居酒屋。

私が先に着いたので、ビールと焼き鳥を注文し、ひと足先に楽しむことにした。

焼き鳥を頬張っていると、大和が店に入ってくる。

居酒屋の雰囲気には似つかわしくない洗練されたファッションと、どこか品のある佇まい。
こんな素敵な人が私の旦那だなんて、今でも信じられない。

「お疲れさま。」

「乾杯!」

グラスを合わせ、一口飲んだ瞬間、ふたり同時に声を揃える。

「あー、美味しい!」

「今日、仕事忙しかった?」

「ああ、バタバタしてたよ。来週は海外出張になりそうだ。」

「えっ、どこに?」

「フランス。」

「フランス!?すごい!」

「コレクションの視察も兼ねてるからな。でも、新婚なのにごめん。」

「仕事だから仕方ないよ。」

「ありがとう。」

大和は申し訳なさそうに微笑み、グラスを傾けた。

その横顔を見つめながら、私はふと、この人と一緒にいる幸せを噛みしめた。
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