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Episode 2
桃子は、デスクの上に散らばった資料を片付けながら、大きく息をついた。
外資系企業での仕事は刺激的で、充実した日々を送っている。
海外クライアントとのやり取りに追われ、終電帰りが当たり前になった頃から、涼介とのすれ違いは深まっていった。
それでも、別れるという選択肢を選べないまま、彼との関係を続けていた。
大学時代、あれほど情熱的に自分を求めた彼の存在が、今では重く絡みつく鎖のように感じることがある。
スマホが震えた。画面には「涼介」の名前が表示されている。時計は23時を指していた。
「遅いね。今日は何時に帰れる?」
メッセージには、いつもと変わらぬ短い言葉が並ぶ。
彼は桃子の行動を常に気にしていた。仕事で誰と会ったのか、どこに行ったのか、細かく確認するようになっている。
「誰と話した? 何をしていた? 俺より大事なの?」
その問いかけは、彼の独占欲を示す一方で、涼介の心の奥に潜む不安を映し出していた。
「今日は資料整理が長引いてるの。もう少ししたら帰るね」
そう返信しながら、ふと、大学時代の彼の笑顔を思い出す。
初めて出会った春の日、彼は周囲から「王子様」と呼ばれるほど完璧だった。
明るく社交的で、気配り上手。誰に対しても平等に接する彼に、桃子は特別な感情を抱くことはなかった。
少なくとも、彼がしつこく声をかけてくるまでは。
「榛名さん、彼氏いるの?」
「なんでそんなこと聞くの?」
「君、俺のタイプなんだよね。正直、一目惚れ。」
自信満々な態度に最初は戸惑ったが、何度も誘われるうちに、彼の不器用な優しさが心をほぐしていった。
二人で過ごす時間は楽しくて、気づけば彼に惹かれていた。
けれど、付き合い始めてから彼の執着が顔を出した。
桃子が他の男性と話すだけで機嫌を損ね、サークルの打ち上げでは遅くまで飲むことを許さなかった。
「俺以外の男と楽しそうにしないで」
そう言う涼介を、桃子は愛情の深さだと信じていた。
けれど今はどうだろう。
涼介は忙しい桃子に不満を募らせ、わざと他の女性と遊ぶようになった。
「俺だって暇じゃないし、会えないなら仕方ないよな?」
そう言いながら、女と写る写真をSNSに載せる。
嫉妬してほしいのが見え透いていて、情けなく思う反面、心の奥に刺さる痛みを無視できなかった。
涼介が他の女性と過ごしている間、自分だけが一方的に涼介を想い続けているのだろうか。
そう思うと、無性に虚しくなる。
「まだ、愛してるのかな……」
ふと呟いた言葉が、深夜のオフィスに虚しく響いた。
マンションに帰り着いたのは、日付が変わる頃だった。
「おかえり」
玄関先で待っていた涼介が、笑顔を浮かべて迎えた。
黒いシャツを無造作に着こなす涼介は相変わらず魅力的で、思わず目を奪われる。
「待ってたの?」
「当たり前だろ? 桃子が帰ってくるの、ずっとここで待ってたんだから」
涼介はそう言いながら、桃子を強く抱き寄せた。
「もう他の奴に笑いかけるなよ」
耳元で囁く声は甘く、けれど冷たい執着が滲んでいた。
その夜、涼介は獣のように私を抱き潰す。
「もうダメ········」
「お仕置きしないとだろ。こんなに濡らして、いやらしいな」
私の脚を開き舌で攻めてくる。涼介は何かに囚われたように舐めてくる。
蜜がトロトロになると吸い取る。
「涼介······そんなにしたら······」
「漏らしちゃうか? 漏らしていいぞ。飲んでやるよ。」
壊れるほどに吸われてる。指を入れて私を何度もイカせる。
涼介の愛撫は長く甘く続く····
それが愛なのだろうか。逃れられないものになる予感がしていた。
たっぷり愛させれてからは避妊もせずに入れてくる。
「涼介······お願い·····避妊して」
「する訳ないだろ。ピルなんて飲んでないよな?」
鋭い目つきなった涼介に恐怖を覚えた。
「飲んでない。」
本当の事なんて言える訳がない。
「ならいい。飲んだらどうなるかわかってるんだろ?」
私は怖くなり「はい」としか言えなかった。
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