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第一章:旅の始まりと騎士の英雄
?話:旅の終わりと騎士の英雄
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「――終わらせに来た、あんたの英雄譚ってやつを」
月光の下、この世のものとは思えないほど美しい花畑。白い花弁を優雅に揺らす花たちは俺と、銀の鎧の英雄を静かに見つめている。木々は葉を風にのせて運び、そして英雄の鎧を滑っていく。
風が音を鳴らした。
汗が頬を滑り落ちた。
花畑の真ん中で、輝く銀の鎧が起き上がる。鎧の隙間から生える花は、はなびらを一枚散らした。顔を覆い隠すヘルムの中から、鋭い視線を感じる。土埃を舞わせながら英雄はゆっくり剣を抜いた。
俺も腰に提げる剣を抜く。柄を握る感触にはまだ慣れない。鉄の滑る音が響く。頭の中で重さを想像しながら持ち上げるが、それよりもさらにずっりしと手に張り付いてくる。両手で握りしめ、構える。いつか学んだことを一つ一つ試していく。
この世界は綺麗なくせに、ひどく我儘で残酷だ。
昼の砂漠に焼かれるように、冷たく深い海に溺れるように、空に空気を奪われるように。
ここはどうしようもない終着点。最期ってやつに、まるで待っていたといわんばかりの優しい笑みで抱きしめられる。必然の死を間近に感じながら、秒針の進む絶望に心が凍り付いていく。
少しだけ胸がいたくなった。
死がどうのなんていうのは、元の世界にいたときは考えたこともなかった。その答えをわざわざ探ろうとしなくとも、生きていけたから。
しかし、今がその時だ。
俺は数十秒後に死ぬ予定だ。
――赤城冬夜は、英雄に殺されるのだ。
「あんたを終わらせて、俺は、」
英雄と向かいあう。
それは、かつて滅びの神から世界を救った者。
それは、人類には到達しえない領域に踏み入った者。
それは、俺が殺さなくてはならない者。
鎧の隙間から殺気があふれているのがわかる。焦りが俺の肌をぴりぴりと焼いていく。英雄がだらりと提げた腕が、どの瞬間自分の喉元に来るのかわからない。
だがそれでいい。俺を殺してみろ。
英雄が膝を落とした。
俺は剣を上段に持ち上げる。
「――俺は帰るんだ、元の世界に」
月光の下、この世のものとは思えないほど美しい花畑。白い花弁を優雅に揺らす花たちは俺と、銀の鎧の英雄を静かに見つめている。木々は葉を風にのせて運び、そして英雄の鎧を滑っていく。
風が音を鳴らした。
汗が頬を滑り落ちた。
花畑の真ん中で、輝く銀の鎧が起き上がる。鎧の隙間から生える花は、はなびらを一枚散らした。顔を覆い隠すヘルムの中から、鋭い視線を感じる。土埃を舞わせながら英雄はゆっくり剣を抜いた。
俺も腰に提げる剣を抜く。柄を握る感触にはまだ慣れない。鉄の滑る音が響く。頭の中で重さを想像しながら持ち上げるが、それよりもさらにずっりしと手に張り付いてくる。両手で握りしめ、構える。いつか学んだことを一つ一つ試していく。
この世界は綺麗なくせに、ひどく我儘で残酷だ。
昼の砂漠に焼かれるように、冷たく深い海に溺れるように、空に空気を奪われるように。
ここはどうしようもない終着点。最期ってやつに、まるで待っていたといわんばかりの優しい笑みで抱きしめられる。必然の死を間近に感じながら、秒針の進む絶望に心が凍り付いていく。
少しだけ胸がいたくなった。
死がどうのなんていうのは、元の世界にいたときは考えたこともなかった。その答えをわざわざ探ろうとしなくとも、生きていけたから。
しかし、今がその時だ。
俺は数十秒後に死ぬ予定だ。
――赤城冬夜は、英雄に殺されるのだ。
「あんたを終わらせて、俺は、」
英雄と向かいあう。
それは、かつて滅びの神から世界を救った者。
それは、人類には到達しえない領域に踏み入った者。
それは、俺が殺さなくてはならない者。
鎧の隙間から殺気があふれているのがわかる。焦りが俺の肌をぴりぴりと焼いていく。英雄がだらりと提げた腕が、どの瞬間自分の喉元に来るのかわからない。
だがそれでいい。俺を殺してみろ。
英雄が膝を落とした。
俺は剣を上段に持ち上げる。
「――俺は帰るんだ、元の世界に」
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