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三
九
しおりを挟む慌てふためき甲冑姿で籠のところまできた三人を、義はじろりと睨んだ。
「この! 周囲も穏やかでないこの時期に! 何を考えて争うのです!?」
義が最上から伊達へ嫁いだ。その理由が分からぬ三人ではない。
「義が一切里帰りをせぬから、伊達に人質に取られたと噂が」
「そのような噂、父上が止めればよろしいのです。噂の出どころは兄上でしょうし」
図星のようだ。義光はいつも都合が悪くなると相手を睨む。それが通用する義ではない。
「いくら伊達と最上の結びつきを見せつけるにしても、戦では意味をなさないことくらい、父上も我が君も分からないのですか? 兄上の思うつぼです」
もっとも嫁いだ時点で、二家が険悪になれば間違いなく矛先は義に来る。だからこそ、義はそれなりに大人しくしていた。
「さすが、義だ。私が動くよりも効率よく戦を止める」
「……我が君。そういう問題ではないのです」
頭を抱えつつ、仮の和睦を結ぶ席に義も参加することになった。
それをじっと見ていた梵天丸が、何を考えていたかなど知る由もなく。
そして帰り際、それまで大人しくしていた梵天丸が動いた。
「父上、母上。頼みがあります」
きりっとした顔で、梵天丸が言い放った。時折山形に竺丸と滞在すると。
「なっ!?」
「双方の橋渡しが必要なのでしょう? だったら伊達と最上、二つの血を引いた私たちにしかできないと思うのです」
「しかしじゃ!」
「母上、あなたが一番和睦を望んでいるのでしょう。なのにどうしてそこで躊躇なさるのですか?」
ぎりっと、奥歯がなるのが分かった。
「ははは。梵天丸は義に似て己が意思を強く持っておるようだ」
めでたいことのように、輝宗が笑う。
そういう問題ではない。
だが、どういう問題なのだと言われると、義は答えられない。
「私たちだけで行こうとは思っておりません。小十郎や綱元たちにも手伝ってもらうことになるかと」
「はっはっはっ。いいかもしれぬな」
「兄上!」
別れの挨拶に来たという、義光が梵天丸を抱え上げた。
「来るならこればよい。某が其方の齢に持ち上げられた石を、果たして持ち上げられるか否か」
無茶を言うな。あれは大人でも持ち上げられない岩だ。
それを知らず、梵天丸は持ち上げるべく、なおさら行くと言い出した。それを訂正しようにも、できなくなっていた。
「互いの家で行き来があればこのようなことは起きない」
この言葉が、重石となった。
かくして、梵天丸たちの山形行きが決まった。
年に一度から二度。供は最低でも三人。その中に必ず小十郎か綱元が入ること。そして、伊達のお家筋の子供が同行することになった。
同行する子供こそ、のちの伊達 成実だ。
後々になって思うのは、これが成実の「最上嫌い」の発端ではなかったのかと。
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