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四
二
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政宗への説教は小十郎たちの乱入により、ほどほどで切り上げさせられた。
間もなく戦があるという。
戦が嫌いだと言いながらも、輝宗も義光も戦をする。それが義は嫌だった。仕掛けられた戦以外するな。仕掛けられても、阻止する方法はあるはずだ。
だが、それが理想論であるということも、重々承知している。だから、敢えて口に出さなかった。
だから、義が出来るのは伊達と最上が戦をしないように止めること。
そして、愛がすべきなのは血の気の多い政宗の手綱を握ること。十を少し過ぎたばかりの少女には重荷なのは分かっている。だから、それを義も見守る。
愛の味方に表立ってつくわけでもなく、政宗をたしなめる義を、伊達の一部の家臣は「政宗を疎んじている」と噂し始めた。
疎んじているわけではない。ただ、己に掴みかからんばかりの勢いで反論してくるのが嫌なだけだ。そして、それを見て輝宗が「二人はそっくりだ」と笑うのも。
似ていない。断じて似ていない。やんわりとそれを輝宗に伝えれば、なおのこと笑う。
「母上と兄上は似ていらっしゃいますよね」
朗らかに言うのは、まだ元服していない竺丸だ。己の元服が決まらないのに、それに文句をつけることがない。
「母上も兄上も、互いに『似てる』と言われると不機嫌になるところまで似ています」
「……そういう其方は我が君に似ておりますわよ」
嬉しそうにはにかむ竺丸の頭を、義は優しく撫でた。
竺丸に両の目がそろっているのを見るのが、辛い。
その思いを振り切り、愛も交えて囲碁をする。
そこに政宗たちが加わるようになるのは、二つの事件の後だった。
間もなく戦があるという。
戦が嫌いだと言いながらも、輝宗も義光も戦をする。それが義は嫌だった。仕掛けられた戦以外するな。仕掛けられても、阻止する方法はあるはずだ。
だが、それが理想論であるということも、重々承知している。だから、敢えて口に出さなかった。
だから、義が出来るのは伊達と最上が戦をしないように止めること。
そして、愛がすべきなのは血の気の多い政宗の手綱を握ること。十を少し過ぎたばかりの少女には重荷なのは分かっている。だから、それを義も見守る。
愛の味方に表立ってつくわけでもなく、政宗をたしなめる義を、伊達の一部の家臣は「政宗を疎んじている」と噂し始めた。
疎んじているわけではない。ただ、己に掴みかからんばかりの勢いで反論してくるのが嫌なだけだ。そして、それを見て輝宗が「二人はそっくりだ」と笑うのも。
似ていない。断じて似ていない。やんわりとそれを輝宗に伝えれば、なおのこと笑う。
「母上と兄上は似ていらっしゃいますよね」
朗らかに言うのは、まだ元服していない竺丸だ。己の元服が決まらないのに、それに文句をつけることがない。
「母上も兄上も、互いに『似てる』と言われると不機嫌になるところまで似ています」
「……そういう其方は我が君に似ておりますわよ」
嬉しそうにはにかむ竺丸の頭を、義は優しく撫でた。
竺丸に両の目がそろっているのを見るのが、辛い。
その思いを振り切り、愛も交えて囲碁をする。
そこに政宗たちが加わるようになるのは、二つの事件の後だった。
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