鬼子母神

神無ノア

文字の大きさ
上 下
16 / 25

しおりを挟む
 政宗への説教は小十郎たちの乱入により、ほどほどで切り上げさせられた。
 間もなく戦があるという。

 戦が嫌いだと言いながらも、輝宗も義光も戦をする。それが義は嫌だった。仕掛けられた戦以外するな。仕掛けられても、阻止する方法はあるはずだ。
 だが、それが理想論であるということも、重々承知している。だから、敢えて口に出さなかった。
 だから、義が出来るのは伊達と最上が戦をしないように止めること。

 そして、愛がすべきなのは血の気の多い政宗の手綱を握ること。十を少し過ぎたばかりの少女には重荷なのは分かっている。だから、それを義も見守る。
 愛の味方に表立ってつくわけでもなく、政宗をたしなめる義を、伊達の一部の家臣は「政宗を疎んじている」と噂し始めた。

 疎んじているわけではない。ただ、己に掴みかからんばかりの勢いで反論してくるのが嫌なだけだ。そして、それを見て輝宗が「二人はそっくりだ」と笑うのも。
 似ていない。断じて似ていない。やんわりとそれを輝宗に伝えれば、なおのこと笑う。
「母上と兄上は似ていらっしゃいますよね」
 朗らかに言うのは、まだ元服していない竺丸だ。己の元服が決まらないのに、それに文句をつけることがない。
「母上も兄上も、互いに『似てる』と言われると不機嫌になるところまで似ています」
「……そういう其方は我が君に似ておりますわよ」
 嬉しそうにはにかむ竺丸の頭を、義は優しく撫でた。

 竺丸に両の目がそろっているのを見るのが、辛い。

 その思いを振り切り、愛も交えて囲碁、、をする。

 そこに政宗たちが加わるようになるのは、二つの事件の後だった。
しおりを挟む
1 / 4

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

無能を装って廃嫡された最強賢者は新生活を満喫したい!

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:49pt お気に入り:3,294

湖に還る日

歴史・時代 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:11

偽典尼子軍記

歴史・時代 / 連載中 24h.ポイント:498pt お気に入り:11

処理中です...