茶師のポーション~探求編

神無ノア

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富士樹海迷宮編

仕組まれた事件

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「あり得なくもありませんが、噴火までには時間がかかるかと」
「マスターの言うとおりだ。急いでしまっては、逆に命を落とす」
 迷宮に詳しいマスターとウーゴが言えば、そこにいたメンバーは黙った。
「火の精霊か、火属性の妖精の様子から見てもそうね。逆に急いで精霊たちを驚かせてしまったら、そちらの方が危険だわ」
 妖精や精霊と親和性の高いマイニの言葉が、あと押しとなった。

 その日、結界石の中で皆が寝静まったころ。

 二つの事件が起きた。

 一つは、しばらく出てこないと思っていた魔獣が出てきたこと。思っていただけで、魔獣が出てくるというのは時折ある。だから、誰しもが落ち着いて行動が出来た。

 もう一つが問題だった。ギルドで用意してもらった結界石の破損と、出て来た魔獣を暴走させる香を焚かれたことだ。
「……見事ですね。私たちを殺して『なかったこと』にしたいのでしょうが」
「師匠。こういう時は『馬鹿』でいいと思うよ。サブマスが動けないの納得だよ」
 あのギルドマスターはすべての責任をサブマスターに押し付けたかった。だから、魔獣に見せかけ、探求者を「処分」したかったのだろう。だからこそ、わざと最初の結界石を屑石に、そしてサブマスターが交換するのを見越して。

 長年探求者をやっているベテランを舐めている。探求者に何度喧嘩を吹っ掛ければ気が済むのか、問いただしたくなってくる。
「国際ランク持ちがごっそりいなくなったら、日本支部の責任になるんだけどねー」
 春麗もくすくすと笑っていた。春麗のこの笑い、実はかなりいっちゃっている時だと、パーティメンバーから教わっているマスターは、ため息しか出てこない。
「春麗さん、ひょっとしなくても」
「あちらに残ったメンバーがあっという間に証言と証拠集めちゃったわ」
 一部「オハナシアイ」に発展させたという、残留組。腹に据えかねているようである。
「よくもまぁ、証拠など取っておいたものですねぇ」
「そりゃぁねぇ。他の人たちにも色々、、入っているみたいよ」
 探求者の横のつながりを舐めてかかってはいけない。それぞれ、国ごとの繋がり、師弟関係の繋がり、依頼人の繋がり。様々あるのだ。
「世の中、ボイスレコーダーも、携帯電話も要らない探求者だってたくさんいるのにね」
「だってあの人、攻撃系と回復系以外、舐めてかかってるもん」
 弟子の一言に、ひと段落着いた探求者たちが、ここにギルドマスターを連れて来て置いていこうかと話し合い始めた。
「阿呆が。んなことしたら余計な仕事が増える。明日は迷宮の攻略方法をみっちり話し合って明後日には降りるようにするぞ」
 別パーティのリーダーがわざと口に出した。

 休むのも仕事ということで、鎮静効果のあるカモミールティを淹れていく。こちらを飲むのは、これから休む人だ。これから起きて警戒をする人には玉露だ。
 それぞれに渡せば、一息ついたようでぞろぞろと動き出した。
「お前には特製薬草茶を飲ませたい……」
「さっきマイニに無理やり飲まされたから、勘弁して」
「そうですか。マイニさんにはお礼を言っておかないと」
 なんか違うと弟子がほざいていたが、マスターは朝に飲むお茶数種類を選別始めた。
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