のんきな男爵令嬢

神無ノア

文字の大きさ
92 / 99
夫婦になります(一応)

閑話:宴の裏側

しおりを挟む

宴の裏側では、従者たちがこんな話を。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 客人からの祝福を主たちが受けている頃、従者や侍女たちは裏でせっせと動きながらも、会話は途切れない。
「不思議なもんだなーー」
 主たちはお披露目でせわしない中、従者たちは交代で休憩が取れるという摩訶不思議な状態。思わずウルヤナは呟いてしまった。

 それを聞き逃すことがなかったのはベレッカである。
「グラーマル王国を憎んでたはずなんだけどなーー」
 先を無言で促され、ウルヤナは続けた。
「そりゃ、お嬢様と旦那様の毒気にあれだけあてられれば。ある程度の恨みつらみは消えますよ」
 ベレッカの言い方も酷いが、何となく納得してしまうウルヤナだった。
「当のご本人たちが先頭で頑張っているというのもあるでしょうけど」
 休憩の交代を言いに来たアハトまでもが会話に加わった。

 ちなみに、あの集落に行ってからヴァルッテリの従者は二人増えた。そして結婚するにあたり、また二人増えた。つまり、従者は六人いる。
 ……そのうちの三人は密偵らしい。あっさりとマイヤたちにばれていたが、現在は泳がせている真っ最中だ。
「ウルヤナ、間違ってもアベスカ男爵様の傍に寄るなよ」
 急にアハトが話をかえた。
「どした?」
「絡まれる」
「……懲りてないんですか? 旦那様」
「懲りてないってか、諦めてない」
 交代の時の申し送りがこれというのも如何なものだろうか。

 アベスカ男爵は未だ娘を己の領地に戻すことを諦めていないらしい。

 あとでゾルターンの説教ですね、と笑うベレッカが少しばかり怖いと思うウルヤナとアハトだった。

「まぁ、あれほどの規格外、、、はそうそういらっしゃいませんしね」
「女傑ではなく?」
「……あんたらの『女傑』基準が知りたくなります。因みに帝国基準では王太后陛下、オヤヤルヴィ公爵夫人が基準ですが」
「……」
 自分ひとの主を規格外扱いするな、という意味合いも込めてアハトの言葉を非難したベレッカだったが、あっさりと返された言葉に言い返せなくなってしまった。
 うん。王太后陛下と公爵夫人あのふたりが女傑というのに間違いはない。そして、ベレッカの中ではマイヤも「女傑」として扱っていたが、「女傑」という括りにするには若すぎる気もしてしまうのである。
「いや、あんたも大概だから」
「俺的には規格外というか無鉄砲」
「失礼な従者ばかりですね」
 さらりと言ってきたのはウルヤナだ。まったくもって失礼である。

 否定できないのが痛いところではあるが。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

因みに
女傑……気性・言動などが思い切りがよく、大胆で、すぐれた働きをする女性。女丈夫じよじようふ
規格外……製品や農作物などが、定められた基準に当てはまらないこと。
無鉄砲……〔「むてんぽう(無点法)」の転とも、「むてほう(無手法)」の転ともいう。「無鉄砲」は当て字〕どうなるか先のことをよく考えず強引に事を行う・こと(さま)。むこうみず。

多分マイヤは規格外(ヲイ)
異論は認めます
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる

しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。 いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに…… しかしそこに現れたのは幼馴染で……?

もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

いまさら謝罪など

あかね
ファンタジー
殿下。謝罪したところでもう遅いのです。

処理中です...