のんきな男爵令嬢

領地育成計画？

怒る、マイヤ

「魔境だなんて、失礼ですわね」
　聞いたマイヤがぷんすかと怒っていた。

　いや、魔境なのは事実だろ、というツッコミをしたのは店主で、そのツッコミに皆が心から同意していた。
「当り前のことを、当たり前にしているだけですのに、どうして魔境扱いされるのでしょう」
「普通は魔獣を飼いならしたりしねぇからな？」
「だって、人手がなかったのですもの」
　理由はそれだけ、そうマイヤは突っぱねたものの、誰一人賛同しない。否、賛同しようがないのだ。
「きちんと魔獣かれらにも報酬を与えておりますのよ？」
　ご飯や寝床という報酬だというが、それ自体が非常識である。
「さすがに無償で働いていただくのは……」
「そういう問題じゃねぇよ！！」
　その場にいた住民の声がはもった。

　そして、通常の常識、、、、をマイヤに教える羽目になったのは店主だったという。
「通常の常識とは堅苦しいものですのね」
「……お前さんらが常識の枠組みから外れているだけだから、な？」
　……どっと疲れた店主だった。


　さてさて、逆に子供たちから見ればマイヤの動きが「常識」と捉えられがちである。何せ、自分たちを救ってくれた救世主であり、様々な知識を与えてくれる恩人なのだ。
「魔獣ってすげぇのな」
「それをあっさり飼いならすお嬢はもっとすごいってこと？」
「だよね～～。あたしも早くお嬢のちからになりたい」
「俺も！」
　そこにいた子供たちがそろって賛同し始める。こうなると手に負えない。

　普通は飼いならせないからね？　という大人の言い分は「魔獣がすごいから飼いならせない」と子供達には変換されているらしい。なので、それができるマイヤは「もっとすごい」という図式が成り立っている……らしい。
　らしいというのも、大人たちが子供たちへの説明を諦めたが故、そのあたりが放置されているからだ。
「いつか現実が見えるだろう」という希望的楽観で見ている大人もいるとか、いないとか。

　その希望的楽観が正しいのか否かは、神々のみが知ることである。