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調合師教育計画
未知の葉とマイヤ
しおりを挟む子供たちが「新しい葉っぱ」と称したそれは、マイヤも見覚えがなかった。採取スキルがある程度高いとはいえ、全く分からない。
「しばらくこれに触れないで。それから、どなたかヘイノを呼んできてもらえないかしら」
「爺ちゃん医師になら、先に見せた。貴族の姉ちゃんに聞いてみろって」
ということは、現在薬として使っているものではないということだ。こういう時誰も「鑑定」スキルを持っていないのが痛い。
「ヴァルッテリ様」
「何だい?」
「どなたか信頼のおける鑑定士ご存知ですか?」
「公爵家で抱えている鑑定士はいない。アハトは?」
「俺の知り合いに頼むと、もれなく冒険者ギルドを通じて色んな所に広まるぞ」
ここに集落を構えているというのは、既に知られている。色んなところに広まろうが関係ないのだが。
「ん。とりあえず領都行って指名依頼出しとく。緊急ってつけとくわ」
「そちらでお願いします」
すぐにアハトはいなくなり、鑑定できるまで触らないでおくことと、厳命した。
アベスカ男爵家で雇っている鑑定士でもいいのだが、それだと帝国にお金が回らないし、余計に敵を作ることになる。
ギルドで依頼を握りつぶした時にアベスカ男爵家から連れてこればいいのだ。そろそろ引退したいとぼやいていた高齢の鑑定士を教師として呼び寄せる予定でいたのだが、早めなくてはいけないようである。
案の定、握りつぶされた指名依頼に、さすがのマイヤもため息をついた。
「お馬鹿ですの?」
大人しくしていれば、こちらの動向も掴みやすいというのに。
「馬鹿だからこそ、聖獣様を保護していても煩くない」
ヴァルッテリがあっけらかんとして言う。毎日のように帝都で働いているにも関わらず、そのあたりは探られてすらいないという。
一応、聖獣を保護しているという話は聖国にも帝国にも伝えてある。それでも動かないのは「解呪できない」という思い込みがあるからだろうが。
「そのままにしておきましょう。一応ギルドと国を通して話はしておきます」
「今日中に連れてくるよ。義父殿もマイヤに会いたいって言ってたけど、どうする?」
いつの間にダニエルを義父と呼ぶようになったのか、問い詰めたい気分だ。これが公爵夫妻に知られたら「結婚結婚」と煩くなるのが目に見えている。
「今日は遠慮しておきますわ。薬草が足りませんもの」
「……うん。そういうと思ったけど」
そう言うなり公衆面前でまたしても抱きしめて来た。もう、いい加減にして欲しい。
「最低一日に一度こうやってマイヤ分を補給しないと、俺無理だから」
どんな栄養分だ。ニマニマとウルヤナまで笑っているのが小憎らしい。昔のようにキィキィ言って欲しいものである。
「主の幸せを祈るだけですので」
さらりとウルヤナが言ってのけた。
マイヤののん気さと、おおらかさが移っだけだということに、マイヤ一人だけ気づいていなかった。
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