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調合師教育計画
開き直ったヴァルッテリとマイヤの価値観
しおりを挟むこれである意味開き直ったヴァルッテリがマイヤに反撃をするとは誰が思っただろうか。
というか、ヴァルッテリの「反撃」を快く受け入れる住民はいても、反発する住民はいない。というわけで、マイヤは公衆面前で恥ずかしい思いをしていた。
「ヴァ……ヴァルッテリ様!?」
「ちょっと充電。休息だけじゃ気力が追い付かない」
現在、マイヤは集落のど真ん中でヴァルッテリに抱きしめられていた。
何がこうなった。そしてどうして誰も止めない。ベレッカとガイアもヴァルッテリが抱きしめるなり、どこかに行った。裏切者! と叫びたい気分だった。
「おお。近衛騎士様がとうとう」
「騎士様頑張れ~~」
この状態で何を頑張るの!? と思う位マイヤは鈍かった。それこそそのあたりにいる子供よりも鈍かった。
「は~な~し~て~~!!」
「もう少し。だって、部屋で抱きしめたら……ねぇ?」
意味が分かりません。そう言いたいのを堪えたのは、本能だった。
「騎士様~。盛るのあとにしてくんないかな~。貴族の姉ちゃんに新しい葉っぱ見てもらいたいんだ」
「仕方ない。俺も行こう」
「マジで? 余裕なくない?」
子供たちがここぞとばかりに揶揄うが、ヴァルッテリはどこ吹く風だった。
「余裕ないに決まってる。マイヤは……ほら」
「……うん。分かる」
手を合わせられるのは、数えるのも嫌になるくらいありすぎた。そして、一言二言子供たちと話すようになり、気づけば仲良くなっていたヴァルッテリである。こうなれば逃げ場をなくしてしまえと言わんばかりに、動き出したのだ。
マイヤがこの集落にいてくれるのは大変ありがたいと思う住民は、あっさりとヴァルッテリに味方した。今までの態度はどこに行った、と言わんばかりである。
もちろん、そんなことに全く気付いていないマイヤである。
ヴァルッテリが住民と話していても「あ、仲良くなったのね」としか思っていなかった。それはそれでどうよ、というのがウルヤナの言葉だった。
「お嬢様は恋愛どころか結婚もする気がありませんでしたからねー」
ガイアがのほほんと言った。
「どーするつもりだったのさ、男爵領」
アハトの言葉は尤もだった。そして、聞き耳を立てていた住民も驚くほどのことをベレッカは言い放った。
「え? お嬢様的には、ゾルターンに指南してもらって閏のことを学ぶつもりでいらっしゃいましたね。旦那様も了承していましたし。それで子を宿せればもうけもの。駄目ならば、染色できない御髪を剃って鬘を被って娼館で子種だけ貰ってくるつもりのようでしたよ」
「色々アウトだろ!!」
「ですが、浪費癖のあるどこぞの次男以降とかはごめんですし。婿養子を取ったとしても、相手方の実家から色々とたかられ、口を出されるのも嫌ですからね。男爵領のことを考えれば、それしか方法が」
「マイヤ嬢の幸せは?」
「お嬢様は元から、『領民の幸せこそ己の幸せ』と公言なさっておいででしたよ」
「そうじゃなくて!!」
……話が通じない。そうアハトは呟いた。それは住民も同じ気持ちだったという。
なおさら、ヴァルッテリを応援する空気が漂ったのは仕方のないことだった。
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