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調合師教育計画
アベスカ風尋問
しおりを挟む尋問というが、肉体的苦痛はほとんどない。
「えっと?」
「聞くに堪えない罵詈雑言が多いので耳栓は必須ですわね」
ヴァルッテリとニーロに手渡しつつ、マイヤは早速つけている。
『ここからは筆談でお願いします』
牢獄は豪華でも粗末でもなかった。
複数で一つを使う方法をとってあり、各牢屋ごとに人数分のベッドが置いてあった。真ん中にはテーブル。ある意味至れり尽くせりだ。
監視用に作られたであろう、真ん中にもテーブルと椅子が置いてあり、そこに現在いるのは、ヴァルッテリの祖父とアヌが座っていた。
『何してんのさ』
確かに罵詈雑言が酷すぎて聞く気にもなれない。ヴァルッテリとニーロは早速耳栓をつけた。
『ポーカーじゃな』
『何で?』
他にもメンバーがおり、結構な賭けになっている。
『どこの囚人を尋問するか決めておる』
「何やってんの!?」
思わず声に出してしまった。ヴァルッテリは悪くないはずだ。
『アベスカ方式らしくての』
思わずマイヤを見るが、そ知らぬふりをしてベレッカに何かを指示していた。
結局、五人でポーカーをすることになり、ナニユエとヴァルッテリは思ってしまう。
「お、焼き菓子」
いい香りが食欲を刺激していく。
「一番乗り」
勝ったのはニーロで、負けたのはマイヤ。うふふふ、と楽しそうに笑うマイヤに、いやな予感がした。
『さて、お楽しみの尋問ですわ』
意味が分からずぽかんとしているヴァルッテリたちをよそに、ガイアたちが動いてく。
持って来たのは食事で、それを囚人の檻の前に置いていく。一か所以外、全員が慌ててそれを取り、口へ運んでいた。
「ちっくしょーー、あんたが負けたせいだ!」
「あら、わたくしのせいだとおっしゃるの? お門違いもいいところですわ。わたくしが担当になったのは、あなた方がそれを引いたからでしょう?」
そして、すいっとマイヤの手が挙げられた。
尋問の開始である。
温かく、匂いのするものが食事なのは扇いで匂いを囚人に送るため。手を抑えつけられた囚人は食事を出来ない。それだけではなく、羽箒を持った住民たちがそれはもう楽しそうに、囚人たちを痛めつけていた。俗にいうくすぐり攻撃である。
それがひと段落したらまた匂いが囚人を襲う。その繰り返し。空腹が酷くなれば、一口だけ口に入る。味わう暇もなく尋問が続けられる。
「……一口って言ってるけど、あれほんの少しじゃん。腹が逆に減るぞ」
「それが目的ですので」
ニーロの呟きにベレッカが返していた。その間にまた一人密偵が捕まったようである。
「……よく捕まえられるね」
「隠密スキルカンストの方がいて、捕まらないとでも?」
「マジ?」
「俺が移転で引っ張ってきたのにも気づかないって言ったら?」
ヴァルッテリの告白に、ニーロがドン引きしていた。
しかもあとで知らされた内容に、ヴァルッテリは驚かされた。他にも隠密スキルがあがっている住民がいるらしい。そのうちいいレベルになるのだろうと祖父に言われ、開いた口が塞がらなかった。
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