4 / 18
第一部 風の魔物と天狗の子
第三話 刻(とき)渡りの時計
しおりを挟む
三、
「刻渡りの時計」
「亀の甲より年の功。やはり僧正坊だけは師匠とも義兄さんとも付き合いが長いだけはあるね」
もう遅いけどと付け足して、黒髪の青年――最澄はカラカラとホテルのベランダから室内に入る。僧正坊の読み通り、真っ先に伏見稲荷を訪れた最澄は、伏見から遠く離れた東海道は静岡県の秋葉山近郊に位置するホテルに宿泊していた。言うまでも無く、人間用のホテルである。
長らく外に居た最澄が部屋に戻ると、室内は食事の匂いがする。テーブルの上に目をやると立派な夕飯が整えられていた。ミョウガが添えられた焼き鯖の匂いに胃がくるると鳴く。
「これ、全部葉っぱだとは言わないよね? 双葉」
「ちゃあんと市場で買い物をしてきましたとも。お金も主様が貯めていらした人間の貨幣を使いました。ほんの少し、お漬物屋のお兄さんが大根を多めに入れてくださって」
初めての買い物が楽しかったのか、双葉と呼ばれた若葉色の着物姿の女は、着物の袖で口元を隠してころころと笑う。
「ふふ、狐の式神は便利なものだ。お師匠様に言われた通り、霊符を何年も伏見稲荷の明神に預けておいて正解だったな。頂きます」
のんびりと「召し上がれ」と告げ、双葉はするりと霊符で折られた紙人形に戻ってしまった。雪のように透き通る肌のたおやかな女が、まさか紙人形だとは誰も思うまい。電子レンジやポットと言った近代機器も使え、食事まで用意してくれる。式神がここまで人間染みているのはひとえに清明の屋敷仕えの賜物だろう、と最澄はほっくりと湯気を立てる塩鯖を白飯と共に頬張った。
あの無精者の清明の屋敷では茶汲みから呪殺まで、この十年で様々なことを学んだ。おかげで髪の色を変えて人間に紛れる事など朝飯前だ。そして稲荷明神の通力を得た霊符は人間の姿となり、風と同時に最澄の手足となってくれる。実にありがたい。
豆腐と油揚げだけのシンプルな味噌汁も、唐辛子を僅かに聞かせた白菜の浅漬けもぺろりと平らげてしまった。
箸を置いて手を合わせると、またどこからともなく双葉が現れる。手際よく食器を片付けて、いつの間にか淹れた煎茶が出された。最澄は久しぶりに肩の力が抜けた脱力感に浸る。双葉の料理は姉の料理を思い出させてくれたせいかもしれない。
「美味しかったよ。ありがとう。少し懐かしい味がした」
「あらまあ。捻くれ者の主様から御礼を頂戴できるなんて。明日は雪かしら」
双葉はすっとぼけて、わざとらしく明後日の方向に目をやる。
「……人が珍しく素直に褒めているのに、君って奴は……」
「狐が真っ直ぐな気性をしているとお思いで?」
「思わないね。君然り、お師匠様然り」
双葉の軽口に最澄は苦笑を返す。
あえて義兄の名は出さなかった。混血だからか、義兄は狐の割に実直な人柄だった、とまた感傷が芽生える。それを払拭したくて熱めの煎茶に口を付けながら、今後の行動予定に頭を切り替えた。
「それにしても、あの羅天とかいう子天狗は照魔鏡探しか」
羅天では簡単には見つけられないとは思うが、先に手にされれば厄介だ。
「仕方ない。僕が先に照魔鏡を押さえておくか……。滝丸も始末されたことだし、後手に回っているのはこちらも同じだ」
ぐいと湯呑みを呷った最澄は、空のそれをテーブルの上に置いて椅子に深く身体を預けた。すると切れ長の目をくりくりとさせて双葉が首を傾げた。
「主様が呼んだ風の映像を照魔鏡に映しだせば、封じられている『時計』はすぐに見つかりましょうに」
「それがそう簡単に行かないんだよ……。照魔鏡は僕の望む映像だけを映してくれる訳じゃないんだ。なにせ生きている妖だからね。風が運んでくる情報を全部暴いてくれるのさ」
「つまり、化け狐や小物の付喪神なども大量に映りこむ、と?」
「そういうこと」
頬杖をついて嘆息する最澄に、双葉が辛辣に言い捨てる。
「犬の方がよほど使えますわね」
「同感だが調教している時間がない。……それよりも、僕が知りたいのは『時計』を滝丸に盗ませた奴の正体と目的だ」
「変えたい過去がある、としか強奪する理由が見当たりませんわ? 違うのですか?」
「十中八九、それだろうね。ああ、君も知らなくて当然か。あの『時計』にはね、過去を変える力なんて無いんだ――それを知っているのは義兄さん亡き今となっては師匠と僕くらいだろうな」
『刻渡りの時計』などと銘をうたれたせいで、あの時計が過去に干渉できる妖力を持つと思い込んでいる連中の多いことに最澄はうんざりしている。真実は多少異なるのだ。最澄も子供の頃に村で一番の長寿だった老爺から聞いた話である。
義兄の母は風魔一族である。彼女は風を読む力に非常に長けていたそうだ。その力は一族の中でも群を抜いていた、と老爺は彼女を褒めちぎっていたものだ。
当時は風魔一族の里も京都にあったという。しかし、同族殺しが日常茶飯事だった風魔は、古来より妖や魔族内でも鼻つまみ者だった。そこに過去の出来事まで読み解いてしまう彼女が現れた。
老爺は絵巻物の話でもするように、姉と最澄に語ってきかせてくれた。
「あの子はなあ、器量よしで、気立てのいい闊達な子じゃった。風と本当に仲が良うて、風で親兄弟を殺す一族を常に憂いては涙する。じゃが、失せ物が生じれば過去から風を呼んで失せ物の場所を言い当てたり、風魔の一族の物よりも他の妖や人間にも分け隔てなく接したりと、少々変わった一面も持っていた。それが災いしてのお……。ただでさえ、人間は風魔の生首には不老不死の力があるなどと根も葉もない言い伝えを信じておる。その内に、当時の風魔の長だけでなく、京に集う妖族たちから脅威と見なされ、里ごとあの子は追放されてしもうた」
最澄は、後に清明から狐の子供を身籠っていた彼女を口実に、妖狐一族と風魔一族の結託または対立を恐れた京都の大妖怪たちに体よく追い出されたのだと真実を教えてもらった。その彼女が遊び心で持っていたのが、左回りに秒針が動く懐中時計――つまり『刻渡りの時計』である。
清明曰く「あれも妖狐の遊び道具の一つや」と酒の席で種明かしをしてくれた。
「時計が反対に動けば時間を巻き戻しとるように見えるやろ。噂に尾ひれがついて誇張された結果が」
「あの時計を使えば過去に触れられる、と」
最澄が呆れ心地でそう返せば、清明はまた酒を杯に注いでは乾かしていた。
「そういうこっちゃ。実際、過去に手を加えられたとしてもそれができたんは風魔の女だけやろなあ」
真実を耳にした双葉も「開いた口が塞がらないとはこの事ですわね」と、今現在『刻渡りの時計』を手にしている黒幕がまぬけに感じられて仕方がない。その様子に最澄はくすりと笑うが、すぐに目つきを刃物のそれに変えるので双葉の背筋にぞくりと寒気が走る。
「本当にまぬけだろう? 真実も知らない無知蒙昧はこの世に影すら遺してやらない」
にっこりと口だけで笑う主人に、双葉は一抹の寂しさを覚えた。どんなに亡き姉の料理を真似ても、軽口を叩いても、復讐の怨鬼と化してしまった最澄には温もりは届かない。稲荷明神も随分と最澄を案じていた。
双葉は紙人形だ。しかし、彼女に命を吹き込んだのはこの哀しい風魔に他ならない。死なば諸共、と覚悟はできている。そもそも紙人形には必要のないものだが、例えるならば最澄は紙人形さえ畏怖させる抜き身の妖刀そのものだ。
「ところで主様。この秋葉山にいつまで滞在なさるおつもりですの? ただでさえ、天狗伝承の多い土地ですのに……」
「だからこそ留まっているんだよ。人間の人口が爆発的に増えている昨今、人間に踏み荒らされた霊山なんか古来の力は無いに等しい。けれど、かつて魔所だったのは事実だ。微かだが、確かに魔力は地に残っているから、僕も力を蓄えられた。君もそれは感じるだろう?」
「ええ、八大天狗が鞍馬に集っている間に信州諏訪方面に行かれるのでしたね」
「照魔鏡を探しながらね。信州はここよりも天狗伝承が多い。英気は養っておかないと。これから対峙するのは、天狗や妖なんか足元にも及ばない御方に謁見するのだから」
清明に連れ回されて様々な大妖怪から神々に名を売ってきた最澄でさえ、次に逢う相手を口説きおとす自信は湧かない。下手をすれば命が危うい。復讐どころではないのだが、逢わなければならない。
――存在が天災そのものの相手に挑もうなんて、自分でもどうかしていると思うよ。
最澄は黒いシャツの首元を押さえた。そこには姉の遺品である黄玉のネックレスが眠っている。
「僕はいつも姉さんを護る側だったのに、いつの間に立場が逆転してしまったのかなあ」
僕もヤキがまわったものだ、と微笑む最澄を双葉は見るに耐えられず、するりと黙って紙人形に戻ってしまった。
続...
「刻渡りの時計」
「亀の甲より年の功。やはり僧正坊だけは師匠とも義兄さんとも付き合いが長いだけはあるね」
もう遅いけどと付け足して、黒髪の青年――最澄はカラカラとホテルのベランダから室内に入る。僧正坊の読み通り、真っ先に伏見稲荷を訪れた最澄は、伏見から遠く離れた東海道は静岡県の秋葉山近郊に位置するホテルに宿泊していた。言うまでも無く、人間用のホテルである。
長らく外に居た最澄が部屋に戻ると、室内は食事の匂いがする。テーブルの上に目をやると立派な夕飯が整えられていた。ミョウガが添えられた焼き鯖の匂いに胃がくるると鳴く。
「これ、全部葉っぱだとは言わないよね? 双葉」
「ちゃあんと市場で買い物をしてきましたとも。お金も主様が貯めていらした人間の貨幣を使いました。ほんの少し、お漬物屋のお兄さんが大根を多めに入れてくださって」
初めての買い物が楽しかったのか、双葉と呼ばれた若葉色の着物姿の女は、着物の袖で口元を隠してころころと笑う。
「ふふ、狐の式神は便利なものだ。お師匠様に言われた通り、霊符を何年も伏見稲荷の明神に預けておいて正解だったな。頂きます」
のんびりと「召し上がれ」と告げ、双葉はするりと霊符で折られた紙人形に戻ってしまった。雪のように透き通る肌のたおやかな女が、まさか紙人形だとは誰も思うまい。電子レンジやポットと言った近代機器も使え、食事まで用意してくれる。式神がここまで人間染みているのはひとえに清明の屋敷仕えの賜物だろう、と最澄はほっくりと湯気を立てる塩鯖を白飯と共に頬張った。
あの無精者の清明の屋敷では茶汲みから呪殺まで、この十年で様々なことを学んだ。おかげで髪の色を変えて人間に紛れる事など朝飯前だ。そして稲荷明神の通力を得た霊符は人間の姿となり、風と同時に最澄の手足となってくれる。実にありがたい。
豆腐と油揚げだけのシンプルな味噌汁も、唐辛子を僅かに聞かせた白菜の浅漬けもぺろりと平らげてしまった。
箸を置いて手を合わせると、またどこからともなく双葉が現れる。手際よく食器を片付けて、いつの間にか淹れた煎茶が出された。最澄は久しぶりに肩の力が抜けた脱力感に浸る。双葉の料理は姉の料理を思い出させてくれたせいかもしれない。
「美味しかったよ。ありがとう。少し懐かしい味がした」
「あらまあ。捻くれ者の主様から御礼を頂戴できるなんて。明日は雪かしら」
双葉はすっとぼけて、わざとらしく明後日の方向に目をやる。
「……人が珍しく素直に褒めているのに、君って奴は……」
「狐が真っ直ぐな気性をしているとお思いで?」
「思わないね。君然り、お師匠様然り」
双葉の軽口に最澄は苦笑を返す。
あえて義兄の名は出さなかった。混血だからか、義兄は狐の割に実直な人柄だった、とまた感傷が芽生える。それを払拭したくて熱めの煎茶に口を付けながら、今後の行動予定に頭を切り替えた。
「それにしても、あの羅天とかいう子天狗は照魔鏡探しか」
羅天では簡単には見つけられないとは思うが、先に手にされれば厄介だ。
「仕方ない。僕が先に照魔鏡を押さえておくか……。滝丸も始末されたことだし、後手に回っているのはこちらも同じだ」
ぐいと湯呑みを呷った最澄は、空のそれをテーブルの上に置いて椅子に深く身体を預けた。すると切れ長の目をくりくりとさせて双葉が首を傾げた。
「主様が呼んだ風の映像を照魔鏡に映しだせば、封じられている『時計』はすぐに見つかりましょうに」
「それがそう簡単に行かないんだよ……。照魔鏡は僕の望む映像だけを映してくれる訳じゃないんだ。なにせ生きている妖だからね。風が運んでくる情報を全部暴いてくれるのさ」
「つまり、化け狐や小物の付喪神なども大量に映りこむ、と?」
「そういうこと」
頬杖をついて嘆息する最澄に、双葉が辛辣に言い捨てる。
「犬の方がよほど使えますわね」
「同感だが調教している時間がない。……それよりも、僕が知りたいのは『時計』を滝丸に盗ませた奴の正体と目的だ」
「変えたい過去がある、としか強奪する理由が見当たりませんわ? 違うのですか?」
「十中八九、それだろうね。ああ、君も知らなくて当然か。あの『時計』にはね、過去を変える力なんて無いんだ――それを知っているのは義兄さん亡き今となっては師匠と僕くらいだろうな」
『刻渡りの時計』などと銘をうたれたせいで、あの時計が過去に干渉できる妖力を持つと思い込んでいる連中の多いことに最澄はうんざりしている。真実は多少異なるのだ。最澄も子供の頃に村で一番の長寿だった老爺から聞いた話である。
義兄の母は風魔一族である。彼女は風を読む力に非常に長けていたそうだ。その力は一族の中でも群を抜いていた、と老爺は彼女を褒めちぎっていたものだ。
当時は風魔一族の里も京都にあったという。しかし、同族殺しが日常茶飯事だった風魔は、古来より妖や魔族内でも鼻つまみ者だった。そこに過去の出来事まで読み解いてしまう彼女が現れた。
老爺は絵巻物の話でもするように、姉と最澄に語ってきかせてくれた。
「あの子はなあ、器量よしで、気立てのいい闊達な子じゃった。風と本当に仲が良うて、風で親兄弟を殺す一族を常に憂いては涙する。じゃが、失せ物が生じれば過去から風を呼んで失せ物の場所を言い当てたり、風魔の一族の物よりも他の妖や人間にも分け隔てなく接したりと、少々変わった一面も持っていた。それが災いしてのお……。ただでさえ、人間は風魔の生首には不老不死の力があるなどと根も葉もない言い伝えを信じておる。その内に、当時の風魔の長だけでなく、京に集う妖族たちから脅威と見なされ、里ごとあの子は追放されてしもうた」
最澄は、後に清明から狐の子供を身籠っていた彼女を口実に、妖狐一族と風魔一族の結託または対立を恐れた京都の大妖怪たちに体よく追い出されたのだと真実を教えてもらった。その彼女が遊び心で持っていたのが、左回りに秒針が動く懐中時計――つまり『刻渡りの時計』である。
清明曰く「あれも妖狐の遊び道具の一つや」と酒の席で種明かしをしてくれた。
「時計が反対に動けば時間を巻き戻しとるように見えるやろ。噂に尾ひれがついて誇張された結果が」
「あの時計を使えば過去に触れられる、と」
最澄が呆れ心地でそう返せば、清明はまた酒を杯に注いでは乾かしていた。
「そういうこっちゃ。実際、過去に手を加えられたとしてもそれができたんは風魔の女だけやろなあ」
真実を耳にした双葉も「開いた口が塞がらないとはこの事ですわね」と、今現在『刻渡りの時計』を手にしている黒幕がまぬけに感じられて仕方がない。その様子に最澄はくすりと笑うが、すぐに目つきを刃物のそれに変えるので双葉の背筋にぞくりと寒気が走る。
「本当にまぬけだろう? 真実も知らない無知蒙昧はこの世に影すら遺してやらない」
にっこりと口だけで笑う主人に、双葉は一抹の寂しさを覚えた。どんなに亡き姉の料理を真似ても、軽口を叩いても、復讐の怨鬼と化してしまった最澄には温もりは届かない。稲荷明神も随分と最澄を案じていた。
双葉は紙人形だ。しかし、彼女に命を吹き込んだのはこの哀しい風魔に他ならない。死なば諸共、と覚悟はできている。そもそも紙人形には必要のないものだが、例えるならば最澄は紙人形さえ畏怖させる抜き身の妖刀そのものだ。
「ところで主様。この秋葉山にいつまで滞在なさるおつもりですの? ただでさえ、天狗伝承の多い土地ですのに……」
「だからこそ留まっているんだよ。人間の人口が爆発的に増えている昨今、人間に踏み荒らされた霊山なんか古来の力は無いに等しい。けれど、かつて魔所だったのは事実だ。微かだが、確かに魔力は地に残っているから、僕も力を蓄えられた。君もそれは感じるだろう?」
「ええ、八大天狗が鞍馬に集っている間に信州諏訪方面に行かれるのでしたね」
「照魔鏡を探しながらね。信州はここよりも天狗伝承が多い。英気は養っておかないと。これから対峙するのは、天狗や妖なんか足元にも及ばない御方に謁見するのだから」
清明に連れ回されて様々な大妖怪から神々に名を売ってきた最澄でさえ、次に逢う相手を口説きおとす自信は湧かない。下手をすれば命が危うい。復讐どころではないのだが、逢わなければならない。
――存在が天災そのものの相手に挑もうなんて、自分でもどうかしていると思うよ。
最澄は黒いシャツの首元を押さえた。そこには姉の遺品である黄玉のネックレスが眠っている。
「僕はいつも姉さんを護る側だったのに、いつの間に立場が逆転してしまったのかなあ」
僕もヤキがまわったものだ、と微笑む最澄を双葉は見るに耐えられず、するりと黙って紙人形に戻ってしまった。
続...
0
あなたにおすすめの小説
郷守の巫女、夜明けの嫁入り
春ノ抹茶
キャラ文芸
「私の妻となり、暁の里に来ていただけませんか?」
「はい。───はい?」
東の果ての“占い娘”の噂を聞きつけ、彗月と名乗る美しい男が、村娘・紬の元にやってきた。
「古来より現世に住まう、人ならざるものの存在を、“あやかし”と言います。」
「暁の里は、あやかしと人間とが共存している、唯一の里なのです。」
近年、暁の里の結界が弱まっている。
結界を修復し、里を守ることが出来るのは、“郷守の巫女”ただ一人だけ。
郷守の巫女たる魂を持って生まれた紬は、その運命を受け入れて、彗月の手を取ることを決めた。
暁の里に降り立てば、そこには異様な日常がある。
あやかしと人間が当たり前のように言葉を交わし、共に笑い合っている。
里の案内人は扇子を広げ、紬を歓迎するのであった。
「さあ、足を踏み入れたが始まり!」
「此処は、人と人ならざるものが共に暮らす、現世に類を見ぬ唯一の地でございます」
「人の子あやかし。異なる種が手を取り合うは、夜明けの訪れと言えましょう」
「夢か現か、神楽に隠れたまほろばか」
「──ようこそ、暁の里へ!」
椿の国の後宮のはなし
犬噛 クロ
キャラ文芸
架空の国の後宮物語。
若き皇帝と、彼に囚われた娘の話です。
有力政治家の娘・羽村 雪樹(はねむら せつじゅ)は「男子」だと性別を間違われたまま、自国の皇帝・蓮と固い絆で結ばれていた。
しかしとうとう少女であることを気づかれてしまった雪樹は、蓮に乱暴された挙句、後宮に幽閉されてしまう。
幼なじみとして慕っていた青年からの裏切りに、雪樹は混乱し、蓮に憎しみを抱き、そして……?
あまり暗くなり過ぎない後宮物語。
雪樹と蓮、ふたりの関係がどう変化していくのか見守っていただければ嬉しいです。
※2017年完結作品をタイトルとカテゴリを変更+全面改稿しております。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
付喪神狩
やまだごんた
キャラ文芸
古い道具には年月と共に人の情念が蓄積され、それが意思を持ったものが付喪神と呼ばれる。
容姿端麗だが口も性格も女癖も悪い大和御門は日本で唯一の付喪神狩として、付喪神を祓う能力者。
自分に取り憑いた大口真神を引き連れ、同居中の相方・棚橋亨と繰り広げる現代異能バトル
幽縁ノ季楼守
儚方ノ堂
キャラ文芸
「季楼庵当主の代理を務めてもらう」
幼少期、神隠しにあった過去を待つ青年ユメビシ。
迷い込んだ先で、事件に巻き込まれ両手を失い、生死を彷徨うことに。
ただ「死にたくない」と望んだ願いは、ある故人の手を移植することで実現した。
これを境に不死の体質へと変貌したユメビシは、約70年の時を経て、因縁の土地『瞑之島(みんのとう)』へ帰還する。
しかし、どうして今自分がここにいるのか、その理由となる記憶がすっぽり抜け落ちた状態で……。
奇妙な忘却に焦りを抱えながら、手がかりを求め探索するさなか、島の中枢を担う組織『季楼庵(きろうあん)』の面々と関わりを持ち、次々と巻き起こる騒動に身を投じていくのだった。
現代において、人と人ならざる者が共存する瞑之島を舞台に、半ば強制的に当主代理に据えられたユメビシの非日常。
異色の現代ファンタジー✖️和風奇譚✖️ミステリー
様々な思惑が交錯する中、彼の帰還を以て、物語は一つの結末へ動き出す。
その約束は、何十年何百年経ち、たとえ本人達が覚えていなくとも。
幽かな縁で繋がり続け、決して解けない糸となる。
それを人は、因縁――またの名を『呪い』と呼ぶのだった。
私の守護霊さん
Masa&G
キャラ文芸
大学生活を送る彩音には、誰にも言えない秘密がある。
彼女のそばには、他人には姿の見えない“守護霊さん”がずっと寄り添っていた。
これは——二人で過ごした最後の一年を描く、かけがえのない物語。
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
煙草屋さんと小説家
男鹿七海
キャラ文芸
※プラトニックな関係のBL要素を含む日常ものです。
商店街の片隅にある小さな煙草屋を営む霧弥。日々の暮らしは静かで穏やかだが、幼馴染であり売れっ子作家の龍二が店を訪れるたびに、心の奥はざわめく。幼馴染としてでも、客としてでもない――その存在は、言葉にできないほど特別だ。
ある日、龍二の周囲に仕事仲間の女性が現れ、霧弥は初めて嫉妬を自覚する。自分の感情を否定しようとしても、触れた手の温もりや視線の距離が、心を正直にさせる。日常の中で少しずつ近づく二人の距離は、言葉ではなく、ささやかな仕草や沈黙に宿る。
そして夜――霧弥の小さな煙草屋で、龍二は初めて自分の想いを口にし、霧弥は返事として告白する。互いの手の温もりと目の奥の真剣さが、これまで言葉にできなかった気持ちを伝える瞬間。静かな日常の向こうに、確かな愛が芽吹く。
小さな煙草屋に灯る、柔らかく温かな恋の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる