人狼ゲーム『Selfishly -エリカの礎-』

半沢柚々

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『腸』――15日目

146.『投票と夜の時間(8)』

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 ――――PM23:30、岬の部屋

和歌野 岬
「…………狂人の……振る舞い方」
(わたしは冊子を眺めていた。
 …………『裏切り者』は『狂人』でもある。
 わたしは、これから…………積極的に嘘を吐いていかなければならないんだわ。
 …………人狼を、勝利に導くために)

和歌野 岬
「……………………花菜」
(わたしは花菜のことを考えた。
 ……彼女はただの村人なんだろうか。
 …………たぶん、あの子はわたしに隠し事や嘘なんて吐けないから、村人なのだろう。
 だからこそ、そんな花菜だからこそ、わたしは彼女をこんなにも信頼しているんだから…………)

和歌野 岬
「……………………」
(でも…………彼女が村人なんだとしたら、
 一緒に生き残ることはできないんだわ。
 わたしか、花菜か…………どちらかは死ななければならないんだから)

和歌野 岬
「…………………………花菜」
(彼女はわたしの太陽だった。
 朗らかで清らかで、…………花菜と一緒にいると、わたしは自由になれた。
 ありのままのわたしでいられた)

和歌野 岬
「……………………」



 ――――ミサキ

 ――――ミサちゃん



和歌野 岬
(…………父親と、母親の声がする。
 教育熱心な母と、放任主義の父。

 父親の無関心さに反発するように、わたしは幼い頃からいつも習い事をさせられてた。
 ピアノ、バイオリン、華道、習字、塾…………。
 …………ピアノだけは好きだけど、……母といると、プレッシャーで息が詰まった)

 ――――ミサちゃん

(そう言って、母はわたしを呼ぶ)

和歌野 岬
「……………………」

 ――――ミサキ

(今度は、父親の声が聞こえる。
 放任主義なんて言い方は聞こえが良い方で、実態は不倫に明け暮れる毎日だった父。
 …………繰り返される不倫に激怒する母親。
 まったく母を省みない父親。

 …………わたしは、いつの日が両親が大嫌いになっていた。
 彼らに呼ばれる名前すらも、全てが)

和歌野 岬
「………………」
(自分の名前が嫌いだった。彼らに呼ばれるから。

 …………でも。花菜は。
 …………わたしに、『サキ』と言う名を与えてくれた。

 ミサキと呼ばれると、父親を思い出して嫌いだった。
 ミサやミサちゃんと呼ばれると、母親を思い出して嫌いだった。

 そのわたしに、新たな名を与えてくれた、あなた。
 …………花菜、とてもとても、大切な友達だわ。わたしの、太陽だわ)

和歌野 岬
「…………でも」
(……死にたくない。わたしはまだ、生きていたい)

和歌野 岬
「……………………ど、して」
(どうして…………あなたと生き残る道が見付からないんだろう。
 …………花菜が、人狼だったら良いのに。
 …………いや、ありえない。もしそうだとしたら、あの子のことだ。
 いくら自白は禁止だと言っても、何らかの場面で…………隙をついて、わたしにだけは打ち明けてくれるはず。
 それがないってことは、やっぱり彼女は村人なんだわ。…………間違い、ないわ)

和歌野 岬
「…………花菜」
(たぶん、由絵は今夜、死ぬ。
 生き延びれるはずがないわ、もうアキラは殺されてるんだから。
 …………明日からはきっと、ゲームが始まる……)

和歌野 岬
「…………わたしは、生き残りたい」
(例え…………あなたを犠牲にしたとしても、こんな軟弱な体だけど、……まだ生きていたいの。
 だから…………だから…………)

和歌野 岬
「……………………花菜、許して」
(わたしはあなたを殺す。
 せめて、地獄に溺れる前に…………あなたに安らかな死を、わたしが、必ず)

和歌野 岬
「……………………いたい」
(胃が…………痛い。
 …………………………花菜)
**





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