336 / 389
『腸』――15日目
146.『投票と夜の時間(8)』
しおりを挟む**
――――PM23:30、岬の部屋
和歌野 岬
「…………狂人の……振る舞い方」
(わたしは冊子を眺めていた。
…………『裏切り者』は『狂人』でもある。
わたしは、これから…………積極的に嘘を吐いていかなければならないんだわ。
…………人狼を、勝利に導くために)
和歌野 岬
「……………………花菜」
(わたしは花菜のことを考えた。
……彼女はただの村人なんだろうか。
…………たぶん、あの子はわたしに隠し事や嘘なんて吐けないから、村人なのだろう。
だからこそ、そんな花菜だからこそ、わたしは彼女をこんなにも信頼しているんだから…………)
和歌野 岬
「……………………」
(でも…………彼女が村人なんだとしたら、
一緒に生き残ることはできないんだわ。
わたしか、花菜か…………どちらかは死ななければならないんだから)
和歌野 岬
「…………………………花菜」
(彼女はわたしの太陽だった。
朗らかで清らかで、…………花菜と一緒にいると、わたしは自由になれた。
ありのままのわたしでいられた)
和歌野 岬
「……………………」
――――ミサキ
――――ミサちゃん
和歌野 岬
(…………父親と、母親の声がする。
教育熱心な母と、放任主義の父。
父親の無関心さに反発するように、わたしは幼い頃からいつも習い事をさせられてた。
ピアノ、バイオリン、華道、習字、塾…………。
…………ピアノだけは好きだけど、……母といると、プレッシャーで息が詰まった)
――――ミサちゃん
(そう言って、母はわたしを呼ぶ)
和歌野 岬
「……………………」
――――ミサキ
(今度は、父親の声が聞こえる。
放任主義なんて言い方は聞こえが良い方で、実態は不倫に明け暮れる毎日だった父。
…………繰り返される不倫に激怒する母親。
まったく母を省みない父親。
…………わたしは、いつの日が両親が大嫌いになっていた。
彼らに呼ばれる名前すらも、全てが)
和歌野 岬
「………………」
(自分の名前が嫌いだった。彼らに呼ばれるから。
…………でも。花菜は。
…………わたしに、『サキ』と言う名を与えてくれた。
ミサキと呼ばれると、父親を思い出して嫌いだった。
ミサやミサちゃんと呼ばれると、母親を思い出して嫌いだった。
そのわたしに、新たな名を与えてくれた、あなた。
…………花菜、とてもとても、大切な友達だわ。わたしの、太陽だわ)
和歌野 岬
「…………でも」
(……死にたくない。わたしはまだ、生きていたい)
和歌野 岬
「……………………ど、して」
(どうして…………あなたと生き残る道が見付からないんだろう。
…………花菜が、人狼だったら良いのに。
…………いや、ありえない。もしそうだとしたら、あの子のことだ。
いくら自白は禁止だと言っても、何らかの場面で…………隙をついて、わたしにだけは打ち明けてくれるはず。
それがないってことは、やっぱり彼女は村人なんだわ。…………間違い、ないわ)
和歌野 岬
「…………花菜」
(たぶん、由絵は今夜、死ぬ。
生き延びれるはずがないわ、もうアキラは殺されてるんだから。
…………明日からはきっと、ゲームが始まる……)
和歌野 岬
「…………わたしは、生き残りたい」
(例え…………あなたを犠牲にしたとしても、こんな軟弱な体だけど、……まだ生きていたいの。
だから…………だから…………)
和歌野 岬
「……………………花菜、許して」
(わたしはあなたを殺す。
せめて、地獄に溺れる前に…………あなたに安らかな死を、わたしが、必ず)
和歌野 岬
「……………………いたい」
(胃が…………痛い。
…………………………花菜)
**
【残り:15人】
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる