人狼ゲーム『Selfishly -エリカの礎-』

『腸』――１６日目

170．『夜の時間（２）』

　――――PM10:00、空太の部屋

本堂 空太
（入浴を済ませた俺は、自室の扉を開けた。
　…………すると）
「…………果帆」

間宮 果帆
「おう…………悪い、ひとりじゃいられなくて。
　勝手に部屋入っちゃったけど…………ごめん」

本堂 空太
「いいよ、俺も、そうだったから。
　…………ありがとう」

間宮 果帆
「…………空太、こっちに、来てくれるか」

本堂 空太
「…………うん」
（俺たちはベッドに並ぶように座り込んだ。
　先に入浴を済ませた果帆からは、俺と同じ石鹸の良い香りがした。
　…………それだけでも、すこしは心強かった。

　…………果帆が、頭をそっと俺の肩に乗せた。
　珍しい、こんなことをするなんて）

間宮 果帆
「美海が…………」

本堂 空太
「…………うん」

間宮 果帆
「空太のこと、村人だって…………」

本堂 空太
「…………うん」

間宮 果帆
「…………あたしさ、サキよりも、美海を信じたいんだ。
　…………お前のこと、村人だって言ってくれたのもそうだけど、…………大切な親友だから」

本堂 空太
「…………うん」

間宮 果帆
「…………もう、誰も失いたくない。
　アキラと由絵みたいに…………あたしの大切なもの、なくしたくない」

本堂 空太
「…………うん」

間宮 果帆
「…………でもさ、もし目黒が人狼だったとしても、
　あと、二人も残ってるんだよな。
　最短でもあと、二日かかる。あと、４人死ぬ」

本堂 空太
「…………考えたくないけど、そうだね」

間宮 果帆
「…………人狼は今日誰を狙うんだろう。
　…………そして、用心棒は誰を守るんだろう」

本堂 空太
「人狼も…………初めて自分の意思で狙うんだもんね」

間宮 果帆
「…………うん。
　筒井、竜崎、直斗、朔也…………美海、サキ…………この中の誰かだろ。
　下手したら、美海か朔也か、直斗が死ぬんだ…………」

本堂 空太
（ぽとぽとと、俺の肩に温かい雫が零れ落ちていた。
　…………果帆は中々弱味を見せない。
　…………そんな彼女が俺にだけその姿をみせてくれるのは…………愛しくてたまらなかった）

間宮 果帆
「……………………空太」

本堂 空太
「…………大丈夫。きっと生きてる。
　ちゃんと人狼を探して、早くここから出よう。
　…………俺も、ちゃんとするから、だから…………」

間宮 果帆
「…………ありがとう、空太」
**（…………もし、嘘を吐いてるのが美海で、サキが本物の占い師だったら…………。
　美海に村人と認定された…………空太は…………）**

本堂 空太
（…………果帆はそうして、落ち着くまで俺の肩で泣いた。
　しばらくして落ち着いたら、涙を拭いて戻って行った。
　…………いつもの、気の強そうな凛とした表情をして）

本堂 空太
「……………………」
（…………初めての処刑。思い出すと、手が震える。
　みんなで目黒を押さえ付けて、勝平がスタンバトンで殴って、…………そして首を吊らせた。
　いつも、白百合、白百合って、露骨で、でも照れてるのがどこか憎めなくて、素直だったあいつを、俺たちは殺したんだ。
　…………俺は手を下してないけど、俺だって人殺しの仲間入りだ）

本堂 空太
「……………………」
（俺は目を閉じた。
　…………バカみたいに、泣けてきた。
　ひとしきり泣いていたら、いつの間にか、眠りに落ちていた……）





【残り：１３人】