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『腸』――17日目

198.『夜の時間(9)』

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 ――――AM01:05、小桃の部屋

佐倉 小桃
「……………………」
(わたしは夢の中を微睡んでいた。
 …………すると、ピピピピと目覚まし時計のような音を立てて、パソコンの電話が鳴った)

佐倉 小桃
「……………………」
(……乃木坂くん?
 ……こんな時間に、どうしたと言うんだろう)

佐倉 小桃
「……………………。
 …………はい、もしもし」

乃木坂 朔也
「≪…………佐倉。
 悪い、こんな時間に≫」

佐倉 小桃
「……いえ、平気よ。
 …………どうしたの?」

乃木坂 朔也
「≪…………人狼が、来た≫」

佐倉 小桃
「っ!! で、でも」

乃木坂 朔也
「≪ああ。……俺は、生きてる。
 たぶん用心棒に守られたんだ≫」

佐倉 小桃
「ほ、本当? また、来ることはないの?」

乃木坂 朔也
「≪ないと思う。
 …………襲撃失敗ってやつだ≫」

佐倉 小桃
「そ、そう…………よかった」

乃木坂 朔也
「≪……人狼は直斗や美海や和歌野ではなく、
 …………俺を狙ってきた。
 人狼にとって俺は、邪魔な存在なんだな≫」

佐倉 小桃
「…………罠にかけようとしてるからよね」

乃木坂 朔也
「≪その可能性が高いと思う。
 …………そこでだ、佐倉、
 ……明日、もうひとりの共有者だと名乗り出よう≫」

佐倉 小桃
「…………いいの?」

乃木坂 朔也
「≪ああ。…………考えたんだけどな、
 俺が死んだら、君を村人だと証明できる人物がいなくなる。
 …………人狼も、バカじゃないみたいだ。
 たぶん、トラップにかかるような真似はしない≫」

佐倉 小桃
「…………乃木坂くんがそう言うなら、
 わたしはそれで構わないけれど」

乃木坂 朔也
「≪…………ありがとう。
 それじゃ、そろそろ≫」

佐倉 小桃
「……待って」

乃木坂 朔也
「≪うん?≫」

佐倉 小桃
「…………小日向さん、
 乃木坂くんは本当に人狼だったと思う?」

乃木坂 朔也
「≪…………わからない。
 もし本当に人狼だったら、……俺は美海を疑わなきゃいけないことになるんだ…………≫」

佐倉 小桃
「…………小日向さんのこと、だいぶ庇ってたみたいだものね」

乃木坂 朔也
「≪…………どっちにしろ、明日直斗がはっきりさせてくれる。
 花菜が人狼だったのか…………村人だったのかを≫」

佐倉 小桃
「…………そうね、そうよね」

乃木坂 朔也
「≪……それじゃ、
 襲撃の心配ももうないみたいだし、俺も寝るな。
 ……話せてよかった、ありがとう≫」

佐倉 小桃
「こちらこそ…………おやすみなさい、乃木坂くん」

乃木坂 朔也
「≪……おやすみ、佐倉≫」

佐倉 小桃
「………………」
(…………彼は)

佐倉 小桃
「……………………」
(…………あたしの大好きな彼は。
 ……いつも、白百合さんのことを気にかけている。
 ……あたしとは、業務連絡しかしてくれないのに)

佐倉 小桃
「……………………」
(でも今日、あたしの大好きな彼は殺されずに済んだんだわ。
 用心棒…………みんなは否定的だけど、あたしは…………感謝しかない)

佐倉 小桃
「…………ありがとう。用心棒」
(…………イヤホンマイクを片付けて、あたしはベッドに横になった)
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