28 / 69
VSサイコメトラー
第28話
しおりを挟む
「皆さん、ようこそお集まり戴きました。千思会の代表を務めさせて戴いております、恵比寿夕也と申します」
壇上に立つ狩衣を纏った壮年の男は恭しく一礼する。頭には烏帽子を被り神主のような恰好をしているが、その顔には嘘くさい笑顔が張り付いている。
「……おい小林、恵比寿ってまさか」
「ああ、達磨軒で会った偽牧師の弟かもな。兄弟揃って似たようなことをしているというわけだ」
千思会の集会は、オフィス街のビルの中のレンタル会議室の中で行われていた。参加人数は三十人程度。その顔ぶれは老若男女、様々である。
俺と小林はその中に潜り込んでいた。
依頼人、丸山ふみえから柳沢六花に連絡して貰い、俺と小林がこの集まりに興味を示していることを伝えたのだ。そこから先は簡単だ。会員である柳沢の紹介ということで、俺と小林は見学という名目で潜入に成功したのだった。
「今回は初めて参加する方も何名かいらっしゃるようなので、まずはサイコメトリーの世界のほんの一端でも体験して戴ければと思います」
「おいでなすった」
小林が目を光らせる。
「それじゃあ、そこの貴方」
恵比寿にそう呼ばれたのは俺だ。
巫女のような格好をしたアシスタントの若い女が、最後列の椅子に座る俺に正方形の名刺サイズくらいの白い紙とペンを手渡した。紙は画用紙くらいの分厚さで、文字を書いて透けることはなさそうである。
「その紙の中央に1から999までの好きな数字を書いてください」
「…………」
俺は少し考えてから3桁の数字をペンで書き込む。
387
特に意味はない。ついさっき頭に浮かんだだけのランダムな数字だ。
「書き終えましたらその数字を皆さんに見せてください。私とアシスタントの川田には見せないように」
俺は紙を回して、参加者たちに数字を見せていく。
「皆さんの確認が終わりましたら、今度はその紙の四隅の角を中心に向かって折ってください。すると一回り小さい正方形になると思います」
俺は言われた通りに紙を折る。これで俺が書いた数字は完全に見えなくなった。
「できましたら、紙をこちらの箱の中に入れてください」
川田と呼ばれた女性アシスタントが、再び俺のところに一辺が30センチくらいの立方体の箱を持ってくる。箱の上部に手が入るくらいの小さな穴が空いているが、中が覗けないようゴム製の黒いヒダがついている。
俺は箱の穴に折り畳んだ紙を入れた。
「それではこれより、箱の中の紙をサイコメトリー能力によって手で触れただけで当てて見せます」
恵比寿が箱の上部の穴に手を入れる。
「見えます見えます。6、いや、3、7でしょうか?」
「…………!?」
本当に数字を読んでいる?
俺は思わず唾を飲み込む。
「……大体わかりました。今の段階で当てられる確率は80%といったところでしょう。しかし、数字を当てる精度を100%に上げる方法があります。それは」
恵比寿夕也は箱から紙を取り出すと、何とそれを食べてしまった。
「なッ!?」
俺は驚きの余り、あんぐりと口を開けてしまう。
「体内に取り込むことで、私のサイコメトリー能力は極限にまで高まります。貴方が書いた数字は387です」
「……あ、当りです」
会場からは、割れんばかりの拍手が鳴り響いた。
一体どうなっている?
恵比寿には本当にサイコメトリー能力があるのか?
「ふん、その程度の手品で超能力者気取りとは、ちゃんちゃら可笑しくて見ていられないですね」
「だ、誰だ!?」
声の主は勿論、小林だ。
「今度は私の書いた数字を当ててみてくださいよ、恵比寿さん」
壇上に立つ狩衣を纏った壮年の男は恭しく一礼する。頭には烏帽子を被り神主のような恰好をしているが、その顔には嘘くさい笑顔が張り付いている。
「……おい小林、恵比寿ってまさか」
「ああ、達磨軒で会った偽牧師の弟かもな。兄弟揃って似たようなことをしているというわけだ」
千思会の集会は、オフィス街のビルの中のレンタル会議室の中で行われていた。参加人数は三十人程度。その顔ぶれは老若男女、様々である。
俺と小林はその中に潜り込んでいた。
依頼人、丸山ふみえから柳沢六花に連絡して貰い、俺と小林がこの集まりに興味を示していることを伝えたのだ。そこから先は簡単だ。会員である柳沢の紹介ということで、俺と小林は見学という名目で潜入に成功したのだった。
「今回は初めて参加する方も何名かいらっしゃるようなので、まずはサイコメトリーの世界のほんの一端でも体験して戴ければと思います」
「おいでなすった」
小林が目を光らせる。
「それじゃあ、そこの貴方」
恵比寿にそう呼ばれたのは俺だ。
巫女のような格好をしたアシスタントの若い女が、最後列の椅子に座る俺に正方形の名刺サイズくらいの白い紙とペンを手渡した。紙は画用紙くらいの分厚さで、文字を書いて透けることはなさそうである。
「その紙の中央に1から999までの好きな数字を書いてください」
「…………」
俺は少し考えてから3桁の数字をペンで書き込む。
387
特に意味はない。ついさっき頭に浮かんだだけのランダムな数字だ。
「書き終えましたらその数字を皆さんに見せてください。私とアシスタントの川田には見せないように」
俺は紙を回して、参加者たちに数字を見せていく。
「皆さんの確認が終わりましたら、今度はその紙の四隅の角を中心に向かって折ってください。すると一回り小さい正方形になると思います」
俺は言われた通りに紙を折る。これで俺が書いた数字は完全に見えなくなった。
「できましたら、紙をこちらの箱の中に入れてください」
川田と呼ばれた女性アシスタントが、再び俺のところに一辺が30センチくらいの立方体の箱を持ってくる。箱の上部に手が入るくらいの小さな穴が空いているが、中が覗けないようゴム製の黒いヒダがついている。
俺は箱の穴に折り畳んだ紙を入れた。
「それではこれより、箱の中の紙をサイコメトリー能力によって手で触れただけで当てて見せます」
恵比寿が箱の上部の穴に手を入れる。
「見えます見えます。6、いや、3、7でしょうか?」
「…………!?」
本当に数字を読んでいる?
俺は思わず唾を飲み込む。
「……大体わかりました。今の段階で当てられる確率は80%といったところでしょう。しかし、数字を当てる精度を100%に上げる方法があります。それは」
恵比寿夕也は箱から紙を取り出すと、何とそれを食べてしまった。
「なッ!?」
俺は驚きの余り、あんぐりと口を開けてしまう。
「体内に取り込むことで、私のサイコメトリー能力は極限にまで高まります。貴方が書いた数字は387です」
「……あ、当りです」
会場からは、割れんばかりの拍手が鳴り響いた。
一体どうなっている?
恵比寿には本当にサイコメトリー能力があるのか?
「ふん、その程度の手品で超能力者気取りとは、ちゃんちゃら可笑しくて見ていられないですね」
「だ、誰だ!?」
声の主は勿論、小林だ。
「今度は私の書いた数字を当ててみてくださいよ、恵比寿さん」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
せんせいとおばさん
悠生ゆう
恋愛
創作百合
樹梨は小学校の教師をしている。今年になりはじめてクラス担任を持つことになった。毎日張り詰めている中、クラスの児童の流里が怪我をした。母親に連絡をしたところ、引き取りに現れたのは流里の叔母のすみ枝だった。樹梨は、飄々としたすみ枝に惹かれていく。
※学校の先生のお仕事の実情は知りませんので、間違っている部分がっあたらすみません。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる