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見えない証拠
第54話
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俺と小林は凩哲平に連れられて、二階の水の間へ来ていた。
「……哲平君、その人たちは?」
俺と小林の姿を見て目を丸くしているのが四元素館の持ち主、塊原結麻だろう。明るい栗色の髪の丸顔の少女だ。お金持ちのお嬢様なだけあって、部外者である俺たちを見ても物怖じした様子はない。
「私は通りすがりの名探偵、小林声です。こっちはオマケの鏑木です」
小林が勝手に自己紹介をする。
「はァ!? 哲平、お前警察を呼んだんじゃなかったのかよ?」
凩に当然の疑問を言うのは、燃杭元だろう。背が高く、ガッチリとした体格のいい少年だ。
「警察には連絡したさ、当然ね。だが途中の道路が凍結してる影響で、到着が遅れるらしい」
「……だからって、どこの馬の骨とも知れない奴らをこの部屋に入れていいわけないだろ!!」
「御尤もな意見です」
小林は燃杭の発言にも鷹揚に構える。
「しかし私には既にこの殺人事件の犯人がわかっています。私たちを追い出すのは私の推理を聞いてからでも遅くはないでしょう?」
「面白そうじゃない」
そう言ったのは塊原だ。
「皆で探偵さんの推理を聞いてみましょうよ。警察が来るまでの余興だと思えば、ちょうどいい時間潰しにもなるし」
「……塊原がそう言うなら」
「ありがとうございます」
小林はそう言って恭しく一礼する。
「まず、私が最初に着目したのは貴方がたが事件現場に入ったときに起きた、謎の停電です」
「……あの停電が事件と関係あるのか?」
「関係あるも何も、かなり古典的なトリックですよ。犯人は暗闇に乗じて、鰤岡まりあさんの胸にナイフを突き立てて殺害した。要はただの早業殺人だったわけです」
「……待ってください、僕たちが部屋に入るまで鰤岡は生きていたってことですか? だったら部屋の扉をノックしたときに鰤岡が起きてくる可能性もあるんじゃないですか?」
と凩。
「そのときはそのときで別に構わないのですよ」
「え?」
「もし鰤岡さんが起きてきたら、殺害決行を中止すればいいだけのことです。イレギュラーがあれば、何時でも決行を中止にできるのが早業殺人の利点ですね。まァ犯人もお酒の中に睡眠薬でも混ぜて、そう簡単には起きてこないよう細工はしたと思いますが」
「……じゃ、じゃああの停電はどうやって?」
「そっちはもっと簡単です。今どきの家電はインターネットを通じてスマホから操作することができます。犯人はその仕組みを利用して、一気に電力を使ってブレーカーを落とした」
「……ということは、犯人は?」
「この館の持ち主、塊原結麻さんです」
全員の視線が塊原に集まる。
「……ふーん、確かにその方法が使えれば、私のアリバイは崩れるかもしれない。けど、その推理には決定的な穴があると思うんだけど」
「……伺いましょう」
「まりあを刺した兇器は何処にいったのかしら? もしも私が早業殺人でまりあを殺したというのなら、兇器がこの部屋の中から出てこないとおかしいってことにならない?」
塊原は余裕の表情で小林に反論する。
まるで兇器がこの部屋から出てこないことを確信しているかのような口ぶりである。
「必要ならボディチェックして貰っても構わないよ。何ならストリップショーでもしましょうか?」
「……なるほど。それが貴女の切り札というわけですか」
小林が塊原を睨みつける。
「いいでしょう、この勝負受けて立ちましょう。これから五分以内に、この部屋の中から鰤岡さんを刺した兇器を見つけ出してみせます。果たして貴女がどこまで余裕ぶった顔を続けられるのか見物ですね」
「……哲平君、その人たちは?」
俺と小林の姿を見て目を丸くしているのが四元素館の持ち主、塊原結麻だろう。明るい栗色の髪の丸顔の少女だ。お金持ちのお嬢様なだけあって、部外者である俺たちを見ても物怖じした様子はない。
「私は通りすがりの名探偵、小林声です。こっちはオマケの鏑木です」
小林が勝手に自己紹介をする。
「はァ!? 哲平、お前警察を呼んだんじゃなかったのかよ?」
凩に当然の疑問を言うのは、燃杭元だろう。背が高く、ガッチリとした体格のいい少年だ。
「警察には連絡したさ、当然ね。だが途中の道路が凍結してる影響で、到着が遅れるらしい」
「……だからって、どこの馬の骨とも知れない奴らをこの部屋に入れていいわけないだろ!!」
「御尤もな意見です」
小林は燃杭の発言にも鷹揚に構える。
「しかし私には既にこの殺人事件の犯人がわかっています。私たちを追い出すのは私の推理を聞いてからでも遅くはないでしょう?」
「面白そうじゃない」
そう言ったのは塊原だ。
「皆で探偵さんの推理を聞いてみましょうよ。警察が来るまでの余興だと思えば、ちょうどいい時間潰しにもなるし」
「……塊原がそう言うなら」
「ありがとうございます」
小林はそう言って恭しく一礼する。
「まず、私が最初に着目したのは貴方がたが事件現場に入ったときに起きた、謎の停電です」
「……あの停電が事件と関係あるのか?」
「関係あるも何も、かなり古典的なトリックですよ。犯人は暗闇に乗じて、鰤岡まりあさんの胸にナイフを突き立てて殺害した。要はただの早業殺人だったわけです」
「……待ってください、僕たちが部屋に入るまで鰤岡は生きていたってことですか? だったら部屋の扉をノックしたときに鰤岡が起きてくる可能性もあるんじゃないですか?」
と凩。
「そのときはそのときで別に構わないのですよ」
「え?」
「もし鰤岡さんが起きてきたら、殺害決行を中止すればいいだけのことです。イレギュラーがあれば、何時でも決行を中止にできるのが早業殺人の利点ですね。まァ犯人もお酒の中に睡眠薬でも混ぜて、そう簡単には起きてこないよう細工はしたと思いますが」
「……じゃ、じゃああの停電はどうやって?」
「そっちはもっと簡単です。今どきの家電はインターネットを通じてスマホから操作することができます。犯人はその仕組みを利用して、一気に電力を使ってブレーカーを落とした」
「……ということは、犯人は?」
「この館の持ち主、塊原結麻さんです」
全員の視線が塊原に集まる。
「……ふーん、確かにその方法が使えれば、私のアリバイは崩れるかもしれない。けど、その推理には決定的な穴があると思うんだけど」
「……伺いましょう」
「まりあを刺した兇器は何処にいったのかしら? もしも私が早業殺人でまりあを殺したというのなら、兇器がこの部屋の中から出てこないとおかしいってことにならない?」
塊原は余裕の表情で小林に反論する。
まるで兇器がこの部屋から出てこないことを確信しているかのような口ぶりである。
「必要ならボディチェックして貰っても構わないよ。何ならストリップショーでもしましょうか?」
「……なるほど。それが貴女の切り札というわけですか」
小林が塊原を睨みつける。
「いいでしょう、この勝負受けて立ちましょう。これから五分以内に、この部屋の中から鰤岡さんを刺した兇器を見つけ出してみせます。果たして貴女がどこまで余裕ぶった顔を続けられるのか見物ですね」
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