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蝋燭小屋の密室 小林声最初の事件
第68話
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こうして日浦家で起きた密室殺人事件は、小林声の活躍によって一応の解決を見た。
その後の警察の調べによると、日浦家の長男、司は遥が小屋から逃げ出せないのを良いことに、友人相手に無理やり売春させて小金を稼ぐ商売をしていたのだという。
そんな中、遥の妊娠が発覚する。焦った司は父親に泣きついて何とか事態を揉み消すよう懇願するが、亙としても外に連れ出すことが出来ない遥の子を堕ろすことは難しかった。
亙が遥を殺害した動機は、それが全てだ。遥を自殺したように見せかけることで、事態の沈静化を図ったのだ。
――後味の悪い、何ともやり切れない事件だった。
〇 〇 〇
「小林、今回の仕事が上手くいったのは全部お前のお陰だ。あのとき、お前を雇っておいて正解だったよ」
日浦亙が逮捕されてから一夜明けて、事務所に戻った俺は改めて小林に労いの言葉をかけてやる。
「……何だ、急に改まって。気持ちが悪い奴だな」
その小林はというとすっかり我が探偵事務所の主であるかのように、俺の特等席に机に脚を乗せて鎮座している。
「言っておくが、私の名探偵としての力はまだまだこんなものではないからな。鏑木、お前にはこれからも特等席で私の名推理を聞かせてやる。光栄に思えよ」
「……これからも?」
「何だ? こんなに可愛い探偵助手がこれからも付いててやると言っているのに不満か?」
「……いやいや、お前のどの辺が可愛い探偵助手なんだよ。それはそうと小林、お前は何の為に謎を解くんだ?」
「何だよ、藪から棒に」
「いいから答えろ。何の為にお前は探偵を続ける?」
探偵として謎を解いたからといって、必ずしも誰かから賞賛されるわけではない。感謝されるわけでもない。今回の事件でも、真相を暴いたことで多くの人の傷口を抉り、不幸をもたらした。
依頼人だった日浦香子は、仕事を終えて立ち去ろうとする俺と小林を口汚く罵った。
お前たちの所為で家族は壊されてしまった。お前たちの所為で未来は真っ黒に塗り潰された。お前たちの所為で、お前たちの所為で……。
「鏑木、もしもお前に超能力が使えたとしたら、お前はその力を使うことを我慢できるか?」
「……何の話だ?」
「鳥は何かの為に飛ぶんじゃない。飛べるから飛ぶんだって話だ。自分の中にある能力を自分の為に試すことを、何人たりとも止めることはできない。誰かから嫌われようとも、恨みを買おうとも、私は私のこの力を試さずにはいられない。私が探偵を続けることにそれ以上の理由はない」
「……なるほど、名探偵らしい答えだ」
――それが、俺と少女探偵・小林声の最初の事件だった。
【了】
その後の警察の調べによると、日浦家の長男、司は遥が小屋から逃げ出せないのを良いことに、友人相手に無理やり売春させて小金を稼ぐ商売をしていたのだという。
そんな中、遥の妊娠が発覚する。焦った司は父親に泣きついて何とか事態を揉み消すよう懇願するが、亙としても外に連れ出すことが出来ない遥の子を堕ろすことは難しかった。
亙が遥を殺害した動機は、それが全てだ。遥を自殺したように見せかけることで、事態の沈静化を図ったのだ。
――後味の悪い、何ともやり切れない事件だった。
〇 〇 〇
「小林、今回の仕事が上手くいったのは全部お前のお陰だ。あのとき、お前を雇っておいて正解だったよ」
日浦亙が逮捕されてから一夜明けて、事務所に戻った俺は改めて小林に労いの言葉をかけてやる。
「……何だ、急に改まって。気持ちが悪い奴だな」
その小林はというとすっかり我が探偵事務所の主であるかのように、俺の特等席に机に脚を乗せて鎮座している。
「言っておくが、私の名探偵としての力はまだまだこんなものではないからな。鏑木、お前にはこれからも特等席で私の名推理を聞かせてやる。光栄に思えよ」
「……これからも?」
「何だ? こんなに可愛い探偵助手がこれからも付いててやると言っているのに不満か?」
「……いやいや、お前のどの辺が可愛い探偵助手なんだよ。それはそうと小林、お前は何の為に謎を解くんだ?」
「何だよ、藪から棒に」
「いいから答えろ。何の為にお前は探偵を続ける?」
探偵として謎を解いたからといって、必ずしも誰かから賞賛されるわけではない。感謝されるわけでもない。今回の事件でも、真相を暴いたことで多くの人の傷口を抉り、不幸をもたらした。
依頼人だった日浦香子は、仕事を終えて立ち去ろうとする俺と小林を口汚く罵った。
お前たちの所為で家族は壊されてしまった。お前たちの所為で未来は真っ黒に塗り潰された。お前たちの所為で、お前たちの所為で……。
「鏑木、もしもお前に超能力が使えたとしたら、お前はその力を使うことを我慢できるか?」
「……何の話だ?」
「鳥は何かの為に飛ぶんじゃない。飛べるから飛ぶんだって話だ。自分の中にある能力を自分の為に試すことを、何人たりとも止めることはできない。誰かから嫌われようとも、恨みを買おうとも、私は私のこの力を試さずにはいられない。私が探偵を続けることにそれ以上の理由はない」
「……なるほど、名探偵らしい答えだ」
――それが、俺と少女探偵・小林声の最初の事件だった。
【了】
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