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螺旋状の殺意
第20話
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地雷系女子こと、第一発見者のツインテールの少女は木本ことねと名乗った。
「木本さん、梶原さんの目を鋏で刺して逃げて行った犯人はこの二人のどちらですか?」
ふみ香がスマホ画面を見せながら木本に尋ねる。
「……一瞬だったから、その、はっきりとはわからないだけど、逃げて行った後ろ姿は遊部君だったと思う」
「……遊部君?」
「……遊部優吾。一階で喉を切って死んでる方」
「つまり、遊部さんは梶原さんを殺害した後、非常階段で一階まで逃げて自殺したということでしょうか?」
「……そうだと思う」
どうにも頼りない証言ではあるが、ベンチにいたカップルが犯人という線はこれで消えたようだ。
ふみ香は再び一階まで降りて、白旗と合流する。
「白旗先輩、やはり犯人は先輩の推理通り、一階で死んでいる遊部さんということのようです」
「……ほうか、ご苦労やったな美里」
しかし今度は白旗の方が逆立った髪を弄りながら、浮かない顔をしている。
「……どうしたんですか先輩?」
「この事件、何かがおかしい。違和感があるんや。一階の男はホンマに自殺なんやろか?」
「……おかしいって何がです?」
「……それを説明できへんのが歯痒いんやがな。美里、警察と一緒に一応小林も呼んどいてくれ。まだ学校に残っとったらの話やが」
「…………」
ふみ香は白旗のその発言を少々意外に思う。白旗が自分から小林声を頼るようなことを言うなんて。
「わかりました。でもそれだったら先輩が直接小林先輩に電話すればいいじゃないですか」
「……俺はアイツの番号知らんのや」
「まだLINEの交換もしてないんですか? 先輩ってどんだけ奥手なんですか?」
「やかましい、さっさと呼べや!!」
〇 〇 〇
「なるほど。白旗の感じた違和感の正体、それは兇器だろうな」
電話口で小林は静かにそう言った。
「……兇器、ですか?」
「梶原と遊部、二人の命を奪ったのは同一の大きな鋏だった。だが、そもそも何故遊部は鋏で梶原の目を刺そうとしたのだろうか?」
「……そりゃ、手近にあったものを使ったとかじゃないんですか?」
「それにしても、人を殺すのに鋏を使うというのは少々解せない。ナイフや包丁の方が兇器としては圧倒的に扱いやすいからな。わざわざ鋏を使った理由が何かある筈だ」
「……鋏を使った理由?」
「私もすぐそっちに向かう。警察が到着したら、非常階段に残されていた血の跡を調べさせてくれ。それで犯人の使ったトリックがハッキリする筈だ」
「木本さん、梶原さんの目を鋏で刺して逃げて行った犯人はこの二人のどちらですか?」
ふみ香がスマホ画面を見せながら木本に尋ねる。
「……一瞬だったから、その、はっきりとはわからないだけど、逃げて行った後ろ姿は遊部君だったと思う」
「……遊部君?」
「……遊部優吾。一階で喉を切って死んでる方」
「つまり、遊部さんは梶原さんを殺害した後、非常階段で一階まで逃げて自殺したということでしょうか?」
「……そうだと思う」
どうにも頼りない証言ではあるが、ベンチにいたカップルが犯人という線はこれで消えたようだ。
ふみ香は再び一階まで降りて、白旗と合流する。
「白旗先輩、やはり犯人は先輩の推理通り、一階で死んでいる遊部さんということのようです」
「……ほうか、ご苦労やったな美里」
しかし今度は白旗の方が逆立った髪を弄りながら、浮かない顔をしている。
「……どうしたんですか先輩?」
「この事件、何かがおかしい。違和感があるんや。一階の男はホンマに自殺なんやろか?」
「……おかしいって何がです?」
「……それを説明できへんのが歯痒いんやがな。美里、警察と一緒に一応小林も呼んどいてくれ。まだ学校に残っとったらの話やが」
「…………」
ふみ香は白旗のその発言を少々意外に思う。白旗が自分から小林声を頼るようなことを言うなんて。
「わかりました。でもそれだったら先輩が直接小林先輩に電話すればいいじゃないですか」
「……俺はアイツの番号知らんのや」
「まだLINEの交換もしてないんですか? 先輩ってどんだけ奥手なんですか?」
「やかましい、さっさと呼べや!!」
〇 〇 〇
「なるほど。白旗の感じた違和感の正体、それは兇器だろうな」
電話口で小林は静かにそう言った。
「……兇器、ですか?」
「梶原と遊部、二人の命を奪ったのは同一の大きな鋏だった。だが、そもそも何故遊部は鋏で梶原の目を刺そうとしたのだろうか?」
「……そりゃ、手近にあったものを使ったとかじゃないんですか?」
「それにしても、人を殺すのに鋏を使うというのは少々解せない。ナイフや包丁の方が兇器としては圧倒的に扱いやすいからな。わざわざ鋏を使った理由が何かある筈だ」
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