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【番外編】時計ヶ丘高校・文化祭
第55話
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「……ちょっと兄さん、どういうことか説明してよ!!」
ふみ香が兄の桂太に詰め寄る。
「うん、ふみ香には説明していなかったね。俺がお前を将棋部に入れたのは、俺の退部を皆に認めさせる為……というのは表向きの理由で、本当の目的は六角を将棋で負かすことだったんだ」
「……六角部長を負かす? だったらどうして将棋部を辞めたりするのよ?」
「それは残念ながら、俺には将棋の才能がなかったからだよ。どれだけ将棋が好きでも、どれだけ勉強しても、正攻法では俺はアイツに敵わなかった。そんな俺が唯一六角を倒せる可能性、それがパソコン部との交流戦ってわけだ。俺は将棋部を辞めて、家でひたすら六角を倒せる程の将棋AIを作ることに没頭した。対六角将棋AI、名付けて『六角レンチ』。そして今日、とうとうそれが完成したのさ」
「見損ないましたよ、美里さん!!」
桂太に噛みつくのは将棋部二年の金本だ。
「部長を倒す為とはいえ、よりによって敵対するパソコン部に付くだなんてッ!!」
「わかってないな、金本」
美里桂太は金本に哀れむような視線を向けている。
「将棋部とパソコン部の確執。そんなものは本来存在しないんだ」
「……どういう意味ですか?」
「将棋部とパソコン部の不和。それは年に一度の交流戦を盛り上げる為のデマゴギーに過ぎないのだよ。その為だけにでっち上げられた、中身のない因縁なんだ。歴代の先輩たちの誰もが詳しい事情を知らないのがそのいい証拠だ。ならば、俺もこの嘘の不仲を利用させて貰うことにした。だから妹を将棋部に預けたのさ」
「……兄さん、さっきから全然話が見えないんだけど?」
「わからないか? 実は俺も先代たちと同じ考えでね。ただ戦うだけではつまらない。折角だから、賭けをしようと思ってね。もし将棋部が勝てば、パソコン部にある最新型ノートパソコン一台を獲得。パソコン部が勝てば、女子部員・美里ふみ香を獲得する」
「……なッ!?」
ふみ香は絶句する。
「勿論受けるよな、六角? ふみ香は元々タダで手に入れたようなものなんだ。俺との勝負に勝てば、ふみ香はそのままに、更に最新のパソコンまで手に入れることができるんだぞ?」
「…………」
六角は目を閉じたまま沈黙している。
「我がパソコン部としても、可愛い女子部員は是が非でも欲しいところなのよね」
パソコン部・部長の窓辺林檎がそう言って舌舐めずりしている。
「決まりだな」
「……ちょっと待ってよ、兄さん!! 勝手に話を進めないで!! そもそも私の意志はどうなるわけ!?」
ふみ香は怒りに全身を震わせていた。
「お前の意志? そんなものは最初からないだろう。お前は俺が無理矢理将棋部に入部させたんだ。お前は将棋になんかこれっぽっちも興味がない」
「……そうよ。兄さんは何時も勝手で、将棋に何の興味もない私を有無を言わさず将棋部に放り込んだ。だけど、やっと将棋が楽しくなってきたこのタイミングで私に将棋部を辞めろって言うの? 馬鹿にしないでよッ!!」
ふみ香は桂太の頬に思い切りビンタをお見舞いした。
「……いいわ、だったら相手してあげる。将棋部の代表として交流戦に出るのは私よ!!」
ふみ香が兄の桂太に詰め寄る。
「うん、ふみ香には説明していなかったね。俺がお前を将棋部に入れたのは、俺の退部を皆に認めさせる為……というのは表向きの理由で、本当の目的は六角を将棋で負かすことだったんだ」
「……六角部長を負かす? だったらどうして将棋部を辞めたりするのよ?」
「それは残念ながら、俺には将棋の才能がなかったからだよ。どれだけ将棋が好きでも、どれだけ勉強しても、正攻法では俺はアイツに敵わなかった。そんな俺が唯一六角を倒せる可能性、それがパソコン部との交流戦ってわけだ。俺は将棋部を辞めて、家でひたすら六角を倒せる程の将棋AIを作ることに没頭した。対六角将棋AI、名付けて『六角レンチ』。そして今日、とうとうそれが完成したのさ」
「見損ないましたよ、美里さん!!」
桂太に噛みつくのは将棋部二年の金本だ。
「部長を倒す為とはいえ、よりによって敵対するパソコン部に付くだなんてッ!!」
「わかってないな、金本」
美里桂太は金本に哀れむような視線を向けている。
「将棋部とパソコン部の確執。そんなものは本来存在しないんだ」
「……どういう意味ですか?」
「将棋部とパソコン部の不和。それは年に一度の交流戦を盛り上げる為のデマゴギーに過ぎないのだよ。その為だけにでっち上げられた、中身のない因縁なんだ。歴代の先輩たちの誰もが詳しい事情を知らないのがそのいい証拠だ。ならば、俺もこの嘘の不仲を利用させて貰うことにした。だから妹を将棋部に預けたのさ」
「……兄さん、さっきから全然話が見えないんだけど?」
「わからないか? 実は俺も先代たちと同じ考えでね。ただ戦うだけではつまらない。折角だから、賭けをしようと思ってね。もし将棋部が勝てば、パソコン部にある最新型ノートパソコン一台を獲得。パソコン部が勝てば、女子部員・美里ふみ香を獲得する」
「……なッ!?」
ふみ香は絶句する。
「勿論受けるよな、六角? ふみ香は元々タダで手に入れたようなものなんだ。俺との勝負に勝てば、ふみ香はそのままに、更に最新のパソコンまで手に入れることができるんだぞ?」
「…………」
六角は目を閉じたまま沈黙している。
「我がパソコン部としても、可愛い女子部員は是が非でも欲しいところなのよね」
パソコン部・部長の窓辺林檎がそう言って舌舐めずりしている。
「決まりだな」
「……ちょっと待ってよ、兄さん!! 勝手に話を進めないで!! そもそも私の意志はどうなるわけ!?」
ふみ香は怒りに全身を震わせていた。
「お前の意志? そんなものは最初からないだろう。お前は俺が無理矢理将棋部に入部させたんだ。お前は将棋になんかこれっぽっちも興味がない」
「……そうよ。兄さんは何時も勝手で、将棋に何の興味もない私を有無を言わさず将棋部に放り込んだ。だけど、やっと将棋が楽しくなってきたこのタイミングで私に将棋部を辞めろって言うの? 馬鹿にしないでよッ!!」
ふみ香は桂太の頬に思い切りビンタをお見舞いした。
「……いいわ、だったら相手してあげる。将棋部の代表として交流戦に出るのは私よ!!」
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