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第一幕 勇者ホイホイの殺人
第23話 消失
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オレ、ユウキ、ヌスットの三人はチュウチュウの死体がある部屋の中で、三竦みの状態で睨み合っていた。
――犯人は確実にこの中にいる。
もっと言ってしまえば、オレ自身はオレが犯人でないことを知っている。つまりは、犯人はユウキかヌスットの二人のどちらかということになる。
――どうにかして犯人を特定する方法はないものだろうか?
「ずっとこのままここでにらめっこを続けていても始まらない。とりあえず、一度現状をマジカに知らせに行かないか?」
ユウキがメガネを押さえながら、溜息雑じりにそう言った。
「……確かに」
「……ま、それもそうだな」
ユウキの提案に異議を唱える者はいなかった。
オレたち三人はチュウチュウの部屋を出て一階へ降りると、マジカが閉じ込められている物置部屋の前まで移動する。
「おいマジカ、緊急事態だ。チュウチュウが何者かによって密室の中で殺された。犯人はボクら三人の中の誰かだ。マジカ、唯一潔白が確定しているお前の意見が聞きたい。ここを開けてくれ」
ユウキがドアを叩いて呼びかける。
――静寂。
部屋の中からの反応はない。
ユウキの発言は部屋の外には殺人犯がいると言っているも同然だ。死を恐れるマジカの性格上、自分からドアを開けようとはしないことは予想できていた。
しかし、かといって「はい、そうですか」と引き下がるわけにもいかない。オレたち三人の中に犯人が潜んでいる以上、事件に関する公正な判断はマジカにしかできない。
「……仕方ない。ヌスット、『開錠』の魔法を使ってくれ」
「了解」
「いや、待て」
オレはヌスットが魔法を使うのを制止して、物置部屋のドアノブを握る。するとドアはあっさりと開いた。
部屋の中はもぬけの殻だった。中にいる筈のマジカの姿はどこにもない。
「……おい、どうなってる!? どうしてマジカが部屋からいなくなっているんだ!?」
ヌスットが慌てた様子でユウキに詰め寄る。
「ジジイがあんな意味不明な殺され方をしたばかりだってのに、その上、マジカまでやられちまったのかよ!?」
「……いや、その可能性は低いだろう。それよりもあり得るのは、マジカが自分の意志で部屋から脱走した可能性だ」
「マジカが自分から部屋を出ただと!? そっちの方があり得ないだろう。マジカは自分に票を入れてまで部屋に閉じ込められることを望んでいたんだぞ!!」
オレはユウキに強く反論する。
「……ああ、ボクにも何故マジカがそんな行動をとったのかまではわからない。けれどボクが見張りから離れて、三人でチュウチュウの部屋の中を調べていた間、マジカは完全にフリーになっていた。やるかやらないかではなく、マジカには部屋から抜け出すことができたことは事実だ」
「…………」
確かに、マジカに部屋から抜け出せる機会があったこと自体は認めないわけにはいかない。
「……それでユウキ、どうする?」
「どうするもこうするもない。マジカが何の目的で消えたかは不明だが、探し出さないわけにはいかないだろう」
オレたちは地下室から上の階へ、順番にマジカを探して回ることにした。食堂、厨房、トイレ、シャワールームと見て回ってみてもどこにもいなかった。
残るは二階のみ。オレたちは一部屋ずつドアを開けて中を確認していく。
そしてチュウチュウの部屋のドアを開けようとしたとき、おかしなことが起きた。ドアが開かないのである。
「…………」
チュウチュウの部屋の鍵なら、ついさっきヌスットが『開錠』で開けたばかりだ。つまり、そのことが意味するのはただ一つ。
――マジカはこの部屋の中にいる。
「ケン、さっきから何をしている? 邪魔だ、そこをどけ」
ヌスットがオレを押しのけて、ドアノブを掴む。すると、ドアは何ごともなく開いたではないか。
「……えッ!?」
――これは一体どういうことだ?
オレに開けられなかったドアを、ヌスットは何ごともなかったかのように開けた。
オレが気付かない一瞬のうちに、ドアに『開錠』の魔法をかけたのか?
否、ヌスットは『開錠』を使うとき、決まってドアに向かって掌を翳すような動きを見せていた。あれが魔法発動の条件だとするなら、さっきヌスットは『開錠』を使わずに鍵の掛かったドアを開けたことになる。
「おい、何をボサッとしている。早く中を確認するぞ」
「……お、おう」
ユウキの声で我に返ったオレは、慌てて部屋の中へ入る。今はそんなことより、マジカの居場所を探すことが先決だ。
果たして、部屋の中にマジカはいなかった。濡れたチュウチュウの死体が転がっている部屋の中は、オレたちが調べたときと何も変わっていない。
「……チッ。ここもハズレか」
「…………」
――何かがおかしい。
オレがさっきドアノブを掴んだとき、ドアは開かなかった。考えられる可能性は、マジカが中にいて、内側から鍵を掛けているということだけだ。それなのに、部屋の中には誰もいなかった。
――そして、もう一つの違和感。
ヌスットは鍵の掛かっている筈のドアを、普通に開けて中に入っていった。このとき、ヌスットは魔法を使うような素振りは一切見せなかった。
――つまり、部屋には最初から鍵なんて掛けられていなかったということ。
「……まさかッ!?」
――そのとき、オレは雷に打たれたような衝撃を受けた。
……何と言うことだ。たった今、犯人がわかってしまった。そして、犯人が使ったであろう密室トリックも。何もかも全部。
――犯人は確実にこの中にいる。
もっと言ってしまえば、オレ自身はオレが犯人でないことを知っている。つまりは、犯人はユウキかヌスットの二人のどちらかということになる。
――どうにかして犯人を特定する方法はないものだろうか?
「ずっとこのままここでにらめっこを続けていても始まらない。とりあえず、一度現状をマジカに知らせに行かないか?」
ユウキがメガネを押さえながら、溜息雑じりにそう言った。
「……確かに」
「……ま、それもそうだな」
ユウキの提案に異議を唱える者はいなかった。
オレたち三人はチュウチュウの部屋を出て一階へ降りると、マジカが閉じ込められている物置部屋の前まで移動する。
「おいマジカ、緊急事態だ。チュウチュウが何者かによって密室の中で殺された。犯人はボクら三人の中の誰かだ。マジカ、唯一潔白が確定しているお前の意見が聞きたい。ここを開けてくれ」
ユウキがドアを叩いて呼びかける。
――静寂。
部屋の中からの反応はない。
ユウキの発言は部屋の外には殺人犯がいると言っているも同然だ。死を恐れるマジカの性格上、自分からドアを開けようとはしないことは予想できていた。
しかし、かといって「はい、そうですか」と引き下がるわけにもいかない。オレたち三人の中に犯人が潜んでいる以上、事件に関する公正な判断はマジカにしかできない。
「……仕方ない。ヌスット、『開錠』の魔法を使ってくれ」
「了解」
「いや、待て」
オレはヌスットが魔法を使うのを制止して、物置部屋のドアノブを握る。するとドアはあっさりと開いた。
部屋の中はもぬけの殻だった。中にいる筈のマジカの姿はどこにもない。
「……おい、どうなってる!? どうしてマジカが部屋からいなくなっているんだ!?」
ヌスットが慌てた様子でユウキに詰め寄る。
「ジジイがあんな意味不明な殺され方をしたばかりだってのに、その上、マジカまでやられちまったのかよ!?」
「……いや、その可能性は低いだろう。それよりもあり得るのは、マジカが自分の意志で部屋から脱走した可能性だ」
「マジカが自分から部屋を出ただと!? そっちの方があり得ないだろう。マジカは自分に票を入れてまで部屋に閉じ込められることを望んでいたんだぞ!!」
オレはユウキに強く反論する。
「……ああ、ボクにも何故マジカがそんな行動をとったのかまではわからない。けれどボクが見張りから離れて、三人でチュウチュウの部屋の中を調べていた間、マジカは完全にフリーになっていた。やるかやらないかではなく、マジカには部屋から抜け出すことができたことは事実だ」
「…………」
確かに、マジカに部屋から抜け出せる機会があったこと自体は認めないわけにはいかない。
「……それでユウキ、どうする?」
「どうするもこうするもない。マジカが何の目的で消えたかは不明だが、探し出さないわけにはいかないだろう」
オレたちは地下室から上の階へ、順番にマジカを探して回ることにした。食堂、厨房、トイレ、シャワールームと見て回ってみてもどこにもいなかった。
残るは二階のみ。オレたちは一部屋ずつドアを開けて中を確認していく。
そしてチュウチュウの部屋のドアを開けようとしたとき、おかしなことが起きた。ドアが開かないのである。
「…………」
チュウチュウの部屋の鍵なら、ついさっきヌスットが『開錠』で開けたばかりだ。つまり、そのことが意味するのはただ一つ。
――マジカはこの部屋の中にいる。
「ケン、さっきから何をしている? 邪魔だ、そこをどけ」
ヌスットがオレを押しのけて、ドアノブを掴む。すると、ドアは何ごともなく開いたではないか。
「……えッ!?」
――これは一体どういうことだ?
オレに開けられなかったドアを、ヌスットは何ごともなかったかのように開けた。
オレが気付かない一瞬のうちに、ドアに『開錠』の魔法をかけたのか?
否、ヌスットは『開錠』を使うとき、決まってドアに向かって掌を翳すような動きを見せていた。あれが魔法発動の条件だとするなら、さっきヌスットは『開錠』を使わずに鍵の掛かったドアを開けたことになる。
「おい、何をボサッとしている。早く中を確認するぞ」
「……お、おう」
ユウキの声で我に返ったオレは、慌てて部屋の中へ入る。今はそんなことより、マジカの居場所を探すことが先決だ。
果たして、部屋の中にマジカはいなかった。濡れたチュウチュウの死体が転がっている部屋の中は、オレたちが調べたときと何も変わっていない。
「……チッ。ここもハズレか」
「…………」
――何かがおかしい。
オレがさっきドアノブを掴んだとき、ドアは開かなかった。考えられる可能性は、マジカが中にいて、内側から鍵を掛けているということだけだ。それなのに、部屋の中には誰もいなかった。
――そして、もう一つの違和感。
ヌスットは鍵の掛かっている筈のドアを、普通に開けて中に入っていった。このとき、ヌスットは魔法を使うような素振りは一切見せなかった。
――つまり、部屋には最初から鍵なんて掛けられていなかったということ。
「……まさかッ!?」
――そのとき、オレは雷に打たれたような衝撃を受けた。
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4年前に書いたものをリライトして載せてみます。
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