姉の代わりに嫁いだけど、可愛いうさぎの王子に溺愛されるなんて聞いてない─欠点は性欲が強すぎる所だけ─

無能歌

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19話

あの後は帰ってきたブーケにいじられ、花火どころじゃなかった。いじられながらアンヌを引き剥がそうとしても、離れないし、その中で帰ってきた二人にもいじられ、わあわあと騒いでいで花火が終わってしまった。
 
 見ながら食べられなかった、食べ物を城に持ち帰り、いじられながら─本人達はいじって無いと言うが、確信犯だった─食事した後、少しだけ酒が入った身体で、風呂に入り寝室で休んでいる時だった。
 
 「今からミーナさんにご飯の差し入れ行くけど、行く?」
 「え、今から行くのか?」
 「今日、僕達外で食べたっていうか……買ってきて食べた関係でさ、彼女のご飯なかったから、お腹空いてると思うんだよね。パンとスープ、後ちょっとのお肉。が残ってたからそれを渡そうかと思って。簡単に様子見したいし、詳しく話すのは、明日の即位式終わった後の一時に、しようかと思ってるから、今来なくてもいいけど……」
 「……いや、俺も様子見したい。行く」
 
 正直、酒を飲んだ関係ですごく眠たい─少量しか飲んで、ないはずなのだが─が、アンヌが心配なので行く事にする。
 よく聞いたら見張りがいるそうなので、そう心配しなくてもいいが、やっぱり何かされるかもしれない。と不安が勝り、一緒に向かう事にした。
 
 
 □◇□◇□◇□
 
 
 「やっほー、カルー、どう?」
 「アンヌ様とガード様!お疲れ様です!めそめそ泣いてますが、問題は無さそうですよ」
 
 トラの獣人、カルーが立っており、鍛え上げられた筋肉と、俺ほどの身長で安心感がある─最初に会った時は、中々同じ身長の人がいないから嬉しいと喜ばれた─人物で、俺はいらなかったかもしれないと思う。
 牢と言っても、イメージしている場所とは違っていて、柵ではなく扉に窓が二つついており、一つの窓はガラス張りで、中が覗けるようになっており、下の窓からは食事が入れられるようなスペースが入っていた。食事を入れられる方の窓を開けて、ミーナに呼びかけると、ミーナはバタバタと扉の前へ駆け寄ってきた。
 
 「……ガード!?ガード、ここから出してよぉ、何も楽しくないし、お腹減ったし、お風呂入りたいし、ベッドも固いのっ!ふわふわのソファは無いし、紅茶とスコーンじゃなくて、ただのお水が出されるの~!」
 
 ギャンギャンと泣き喚いている、ミーナがそこにいたが、昼とは見違えるようだった。
 髪は振り乱れるように、ボサボサとしており、化粧は涙で落ち、目元はパンダ……?のようになっていて、ぷっくりとしていた唇は歯で噛み締めたのか、へこんでしまっていて、フリルの付いている服はふわりと膨らんでいたはずなのに、萎れた花のようになってしまっていた。
 
 「ご飯はごめんね、今日は遅くなっちゃった。明日は夕方頃にはあると思うよ」
 「げっ、あ、アンヌ王子……は、いや!ガードにして」
 「そんなワガママ聞きません、はい。スープとパンと、なんだっけ?これ」
 「鴨とナッツのローストですね、とても美味しかったですよ」
 「だって、はい。アレルギーとかは無いよね?倒れられても面倒だから」
 「嫌!あなたからもらった物、食べたくない、怖いじゃない!毒とか入ってないわよね」
 
 ミーナはアンヌの事が、相当に嫌いになっているらしく、食事を相当疑っている。アンヌの事だから、そんなことしてないと思うが……
 
 「あ!わかった、ガードが味見して。ガードが味見してからなら食べるわ」
 「そこまで疑うなら食べなくてもいいんだよ、次に食べられるのは朝だから……早くて十時間後ぐらいかな」
 「なっ……それまで私をここに、入れておくつもりなの!?信じっらんない!レディに対しての扱いじゃないわよっ」
 「結構綺麗な牢だけどね、ほら、個室だし柵じゃなくて、窓のついた扉だよ。ベッドも固いって言うけど、汚くはないでしょ?」
 「私何もしてないもの、それなのにここは失礼じゃない?お客様として客室に泊まらせて」
 「侮辱罪って分かりますか?僕の妻を侮辱したので、数週間入ってもらいます」
 「侮辱してない!ガードからも言ってよ、私を家に帰してくれるように、このうさぎに説得して!」
 
 わっ!とまた泣き始めてしまった。正直滅茶苦茶面倒臭いが、ここで眠たい思いを長引かせたくない。
 ……なにか反抗したりとかするのでは、と不安だったが正直この人数差なら負ける気はしないし、カルーは腕利きで名高い。
 
 「いいよ、とりあえず腹減って泣いてるんだと思う。食わせりゃ静かになるだろ」
 「その口の聞き方は何なの!?ちゃんと敬語で、下手に……」
 「カルー、扉の鍵貸してほしい」
 「……扉の鍵ですか?」
 「うん、この人数差だし、反抗……できないと思う、多分」
 
 考えが分かったのか、カルーはにこやかに鍵を渡してくれた。
 
 「俺とガード様がいますから、大丈夫ですね!」
 「あれ?僕は……」
 「ん、パン貰う」

 パンを受け取って、鍵を開ける。待っていた!と、言わんばかりに駆け出そうとするミーナを、受け止めて口にパンを頬張らせた。
 こればかりは身体がでかくて良かった、と思いミーナのドレスの襟を掴んで、牢屋に戻し、鍵を閉めた。
 
 「んぐ、ぐ……はあ、何するのよ!食べちゃったじゃないっ」
 「腹減ってたんだろ、味わったか?俺が知ってる中で一番美味いパンだ」
 「う、お、美味しかった……けど……っ!」
 「そのドレスじゃ寝にくいだろうから、後でネグリジェを届けさせるよ。服のサイズは普通のサイズで良いかな?」
 「あ、あれじゃないですかアンヌ様。彼女は一応女性ですから小さめがよろしいのでは?」
 「でも胸元が結構あった気がするよ、腕掴まれたとき圧を感じたから、苦しくないように大きめがいいと思う」
 
 淡々と話す二人の会話を聞いて、ギャンギャンと喚いていたミーナは徐々に黙り始める。
 何か思っているのか、完全に黙ってしまった。
 
 「ね、大きめがいいよね?」
 「……えぇ、あと、出来ればナイトキャップ。もうこの部屋は我慢するわ。そのスープとお肉も食べるからこっちに置いて!」
 「ナイトキャップは了承します。……ほんとにお腹空いてたんだね、やっぱり皮肉にも家族だから分かるんだ」
 「皮肉にもって何よ!」
 
 少し怒ってはいるが、何か考え直した─粗方大人しくしておいた方が良いという判断だろう─のか、スープや鴨肉も食べ、お皿をこちらに返したと思ったら、ぼふ。と、音が聞こえた。多分ベッドに座ったんだと思う。
 
 「お風呂は明日ラリーの見張りで入らせてあげるから、今日は我慢してね。後でさっきの所望品は届けさせるよ」
 「ふん!早く持ってきてよねっ!」
 
 話が終わり、部屋へと帰る。あんだけワガママ言えるなら、死ぬ心配はなさそうだな……なんて、不謹慎に考える。この国ならそんな事しなさそうだけど。
 
 「君のお姉様は凄いねぇ、あの精神力は見習いたいものがあるかも」
 「まぁ……否定しない」
 
 そう言うとアンヌはふふふ、と笑った。
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