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25話
ミーナの元へ来たのは、昼過ぎだった。
食事を終わらせて、地下へブーケは抜きで来ると─アンヌに呼ばれて、どこかへ行ってしまった─カルーが出迎えてくれた。
「お疲れ様です王妃!」
「あぁ……慣れないから名前でいい。お疲れ」
ブーケにもそうお願いしているのだが、そうか。皆に共有してるとは限らないから、まだ何回か王妃と呼ばれてしまうかもしれないな。責任逃れをしてるわけではなく、王妃なんて呼ばれ方が恥ずかしいだけなので、許してほしいものだ。いつかは慣れないとだけど。
「カルーはここにいてくれるん……だよな?」
「ええ!ご安心下さい。何かありましたら、カの言葉一つで飛んでいきますよ!」
なら何かあったとしても、ひどい一大事にはならないだろう。と言っても、姉にこんなに怯える必要なんてないと思うが……
一応ドアをノックしてから、カルーに鍵を貰って開ける。
ブーケから聞いた話によると、ミーナは俺と一対一で会いたがっているらしい。と、言ってもアンヌに会いたいと言っても断られ、ならば俺でもいい。という妥協での意味合いだったそうだが……
アンヌが断っている理由は、忙しいという事もあるが、国王になってから俺の家に手紙を出し、ミーナを迎えにくるように伝えているらしい。その時に処遇云々を話すつもりらしい。
仕事が早くて、立派で素晴らしすぎる。俺はまだ文字の勉強をしているというのに……
「あら、遅かったじゃない。もうお昼っていうのに、私に会いに来るなら朝じゃないの?」
「……こっちにも予定がある。ミーナを優先してられないからな」
「王妃って呼ばれてたもんね~、私がなる予定だったのにっ!ふん!」
「呼んだ理由は?何でもないならこっちから、話すぞ」
だらだらとミーナと話したくない。ミーナと話すのはもう、怖くはないが、モヤモヤとしたものを感じる。何も理由が無いならこちらから、もう関わらない。と宣言しておきたいところだ。
「やだ、急がないでよー実の姉弟でしょ?少しぐらいね、雑談したっていいじゃない」
「特に話すことない。勉強で忙しいんだよ」
「へー、あ!文字かけるようになった?私に書いて見せてよ」
思惑がわからない、俺を褒めるという行為を、ミーナがすると思えない。貶すためか?なんの考えで俺を近づけさせようとしているのだろう。
一応適度な距離を保っているが、遠くでは無いし、何か耳打ちされてもおかしくない。
俺は正直……アンヌに危害を加える。と、言われたらある程度の事は、聞いてしまうかもしれない。
ミーナと俺なら、俺のほうが絶対に強い。と思うのだがミーナ自身には力がなくても、美貌や口利きの仕方で力のある者を、こちらへ向けてくる可能性がある。
いや、でも……まだここに居るのはミーナのみ。とりあえずは怖がることがない、か?
恐る恐るミーナのもとへ近づき、机の上のペン─暇つぶし用に、紙切れとペンが渡されているらしい─を手に取る。
「そうねー、アンヌって書いてよ。旦那様の名前くらい書けないとねぇ」
「……ん」
距離が物凄く近くなり、少し手が震える。何が、何が目的なんだ?これなら自分の目的をさっさと伝えて、縁を切ったから……と、帰ったほうが良かった。根本的な解決をしようなんて、思わなければよかった。
ア、を書き終わるとぐい、とミーナが近づいてくる。身体が大きくはねて、インクが少し飛ぶとミーナは俺の肩を掴み、耳元に顔を近づけてきた。
「ねぇ、貴方は私に絶縁宣言するつもりでしょ?」
「……っ!分かってるなら、もうっ」
「やだ、待って待って、続きがあるのよ。静かにして?」
離れようと立ち上がろうとすると、ミーナに抱きつかれる。俺より小さいが、重心を下に置いて、重く抱きついてくる。切り離そうとしても負けない、と言わんばかりに強く抱きついてくる。胸の膨らみが圧を加えており、胸元が苦しい。
「ね、大人しくして?お話聞いて、少し考えてくれればいいのよ」
「っ……な、なんだよ」
「結婚するのは諦めてあげるし、絶縁も条件次第で飲むわでも……その条件が三つあるの」
「条件?」
諦めてあげる、というのも少し腹立たしいが、宣言するだけではなく、諦めてくれるなら……聞いてみるべきか。
「うふふ、一つ目はアンヌ王子……じゃなくて、国王ね。と会うこと、二つ目はアンヌ国王に会えるまで定期的に、貴方が来る事。三つ目は、ここから出してくれるまで、私に聖女の特訓をさせて欲しいの」
胸元を指でスルスルと遊んできて、気持ち悪い。ゾワゾワと嫌悪感が湧き出てきて、早く離れたい気持ちがより一層強くなる。
「それは、アンヌに聞いてみないと……わか、らない」
「王妃の貴方から話してよ、それさえしてくれたら、貴方とはもう関わらないわよ」
「……っ、う、手の動き、やめてくれっ、話してみるから!」
「ふーん?まぁ……いいけど、絶対に話しておいてね?」
ニヤニヤとした顔をされたと思ったら、パッと離され、急いで外へ出ていく。さっきの三つの条件を考えるが、アンヌに会いたいのはまだ諦めてない……のか、さっき金銭の話が出なかったので、その話を直接するのかもしれない。三つ目は仮にも見習いだし、ブランクが開かないように、聖女の特訓をしたいだけだろう。
しかし、二つ目は全くわからない。俺と話したがる理由は……?さっきの行為も、関係あるんだろうか?
さっきの行為は、本当に気持ち悪かった。ねっとりとした動きが、アンヌに触られる感覚と違い、好きでもない奴に触られるのは、嫌悪感のほうが強かった。
また、またされるのか……?せっかくアンヌと身体を重ねられたのに、あいつに触られてたら、このもやもやとした気持ちも、嫌悪感も晴れない。
なんの目的なのかが分からないのが強いが、とりあえず……とりあえずアンヌに話してみて、結果によっては……また、何度も会うことになるだろう。
食事を終わらせて、地下へブーケは抜きで来ると─アンヌに呼ばれて、どこかへ行ってしまった─カルーが出迎えてくれた。
「お疲れ様です王妃!」
「あぁ……慣れないから名前でいい。お疲れ」
ブーケにもそうお願いしているのだが、そうか。皆に共有してるとは限らないから、まだ何回か王妃と呼ばれてしまうかもしれないな。責任逃れをしてるわけではなく、王妃なんて呼ばれ方が恥ずかしいだけなので、許してほしいものだ。いつかは慣れないとだけど。
「カルーはここにいてくれるん……だよな?」
「ええ!ご安心下さい。何かありましたら、カの言葉一つで飛んでいきますよ!」
なら何かあったとしても、ひどい一大事にはならないだろう。と言っても、姉にこんなに怯える必要なんてないと思うが……
一応ドアをノックしてから、カルーに鍵を貰って開ける。
ブーケから聞いた話によると、ミーナは俺と一対一で会いたがっているらしい。と、言ってもアンヌに会いたいと言っても断られ、ならば俺でもいい。という妥協での意味合いだったそうだが……
アンヌが断っている理由は、忙しいという事もあるが、国王になってから俺の家に手紙を出し、ミーナを迎えにくるように伝えているらしい。その時に処遇云々を話すつもりらしい。
仕事が早くて、立派で素晴らしすぎる。俺はまだ文字の勉強をしているというのに……
「あら、遅かったじゃない。もうお昼っていうのに、私に会いに来るなら朝じゃないの?」
「……こっちにも予定がある。ミーナを優先してられないからな」
「王妃って呼ばれてたもんね~、私がなる予定だったのにっ!ふん!」
「呼んだ理由は?何でもないならこっちから、話すぞ」
だらだらとミーナと話したくない。ミーナと話すのはもう、怖くはないが、モヤモヤとしたものを感じる。何も理由が無いならこちらから、もう関わらない。と宣言しておきたいところだ。
「やだ、急がないでよー実の姉弟でしょ?少しぐらいね、雑談したっていいじゃない」
「特に話すことない。勉強で忙しいんだよ」
「へー、あ!文字かけるようになった?私に書いて見せてよ」
思惑がわからない、俺を褒めるという行為を、ミーナがすると思えない。貶すためか?なんの考えで俺を近づけさせようとしているのだろう。
一応適度な距離を保っているが、遠くでは無いし、何か耳打ちされてもおかしくない。
俺は正直……アンヌに危害を加える。と、言われたらある程度の事は、聞いてしまうかもしれない。
ミーナと俺なら、俺のほうが絶対に強い。と思うのだがミーナ自身には力がなくても、美貌や口利きの仕方で力のある者を、こちらへ向けてくる可能性がある。
いや、でも……まだここに居るのはミーナのみ。とりあえずは怖がることがない、か?
恐る恐るミーナのもとへ近づき、机の上のペン─暇つぶし用に、紙切れとペンが渡されているらしい─を手に取る。
「そうねー、アンヌって書いてよ。旦那様の名前くらい書けないとねぇ」
「……ん」
距離が物凄く近くなり、少し手が震える。何が、何が目的なんだ?これなら自分の目的をさっさと伝えて、縁を切ったから……と、帰ったほうが良かった。根本的な解決をしようなんて、思わなければよかった。
ア、を書き終わるとぐい、とミーナが近づいてくる。身体が大きくはねて、インクが少し飛ぶとミーナは俺の肩を掴み、耳元に顔を近づけてきた。
「ねぇ、貴方は私に絶縁宣言するつもりでしょ?」
「……っ!分かってるなら、もうっ」
「やだ、待って待って、続きがあるのよ。静かにして?」
離れようと立ち上がろうとすると、ミーナに抱きつかれる。俺より小さいが、重心を下に置いて、重く抱きついてくる。切り離そうとしても負けない、と言わんばかりに強く抱きついてくる。胸の膨らみが圧を加えており、胸元が苦しい。
「ね、大人しくして?お話聞いて、少し考えてくれればいいのよ」
「っ……な、なんだよ」
「結婚するのは諦めてあげるし、絶縁も条件次第で飲むわでも……その条件が三つあるの」
「条件?」
諦めてあげる、というのも少し腹立たしいが、宣言するだけではなく、諦めてくれるなら……聞いてみるべきか。
「うふふ、一つ目はアンヌ王子……じゃなくて、国王ね。と会うこと、二つ目はアンヌ国王に会えるまで定期的に、貴方が来る事。三つ目は、ここから出してくれるまで、私に聖女の特訓をさせて欲しいの」
胸元を指でスルスルと遊んできて、気持ち悪い。ゾワゾワと嫌悪感が湧き出てきて、早く離れたい気持ちがより一層強くなる。
「それは、アンヌに聞いてみないと……わか、らない」
「王妃の貴方から話してよ、それさえしてくれたら、貴方とはもう関わらないわよ」
「……っ、う、手の動き、やめてくれっ、話してみるから!」
「ふーん?まぁ……いいけど、絶対に話しておいてね?」
ニヤニヤとした顔をされたと思ったら、パッと離され、急いで外へ出ていく。さっきの三つの条件を考えるが、アンヌに会いたいのはまだ諦めてない……のか、さっき金銭の話が出なかったので、その話を直接するのかもしれない。三つ目は仮にも見習いだし、ブランクが開かないように、聖女の特訓をしたいだけだろう。
しかし、二つ目は全くわからない。俺と話したがる理由は……?さっきの行為も、関係あるんだろうか?
さっきの行為は、本当に気持ち悪かった。ねっとりとした動きが、アンヌに触られる感覚と違い、好きでもない奴に触られるのは、嫌悪感のほうが強かった。
また、またされるのか……?せっかくアンヌと身体を重ねられたのに、あいつに触られてたら、このもやもやとした気持ちも、嫌悪感も晴れない。
なんの目的なのかが分からないのが強いが、とりあえず……とりあえずアンヌに話してみて、結果によっては……また、何度も会うことになるだろう。
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