姉の代わりに嫁いだけど、可愛いうさぎの王子に溺愛されるなんて聞いてない─欠点は性欲が強すぎる所だけ─

無能歌

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30話 ブーケSide

 起きたときに外を見たが、本日は曇りみたいだ。裁縫した後に、お茶会の作法でも……と、元王妃が仰っていたが、外では難しそうなので、中での用意をしておこう。
 最近は少し忙しい。いや、少しどころではない。王妃と国王の世話係─いいように言ってるが、要は雑用─の私は、少してんてこ舞いになっていた。

 アンヌ国王は外交の準備や、顔合わせ、新しく来た書類の整理がなかなか間に合わない。そろそろ外交の顔合わせがなくなるから、書類の整理なども減り、もう少しマシになる……と思うのだが、まだまだ忙しいみたいだ。

 子供の頃から見ていた方が、ああやって働いているところを見るのは、中々使者名義に尽きるものだ。あんなに小さかった王子が、ついに国王なんて……年を取って涙腺が脆くなっているのか、少し昔のことを考えるだけで泣けてしまうのが辛い。もう相当な年になってしまったみたいだ。

 忙しそうな国王を裏目に、王妃はのんびりと勉強をしている。国王からしたらその方がいい─ゆっくりと勉強させてあげたいらしい─と言っていたが、食事さえ一緒にできないのは少し可愛そうだ。初めて作ったというハンバーグを、食べて欲しそうにそわそわとしていた王妃を思うと、少し胸が痛かった。
 結局夜に行ったら残っていたし。多分疲れてて食べる気が無かったとか、そんな所だろうけど……

 まぁ、今日も多分喜ぶ。王妃はもう一品、朝に食べられるように頑張っていちごジャムを作っていた。これをパンケーキにかけて食べれば、国王も一日元気いっぱいになるだろう。

 ジャムを小皿に移しつつ、朝食を運ぶ用意していると、使者のヤン─犬だが、耳が尖っているのでどちらかといえば狼に見える─が何か大きい荷物を持ってこちらへ来ていた。

 「おはようございます、ブーケさん」
 「おはよう。どうしたのー?そんな大荷物で」
 「これ、ほら。あれですよ、地下にいる罪人に渡す水晶です。わざわざ国の外まで買いにいったんですよー疲れたぁ……」
 「あぁー!お疲れ様。ご飯食べていきなよ。王妃お手製のジャムがあるよ」
 「やったー!」

 え、なんの声!?と、思っていると、ヤンの後ろから小さい子どもが出てきて、私に抱きついた。ふわふわとした折れ曲がった耳の方が顔より大きく、大きい口と目が、顔の大半を占めている。

 「こら、カン!挨拶もしないで抱きつかないの!」
 「カン……あ、貴方のお子様ですね。おはよう」
 「おはようございまーす!おうひさまがつくった、ごはんたべたいです!」

 ニコニコと明るい顔をして、こちらにお願いしてくるカン、という子が可愛いので、サービスでカンの方は多めにして、二人分用意する。

 「申し訳ないです、ありがとうございます」
 「お疲れでしょうし、このあとはその水晶を届けに行くんですよね?もっと疲れるでしょ」
 「いや、夜にカルーとブブが交代するんですよ、その時にブブといっしょに行って、ご飯食べてカルーと風呂に……」

 ブブはカルーと同じくらい腕が立つ鷹の獣人で、のんびりとした性格だが、やるときはやる人物である。流石にカルーは疲れてるだろうから、変わる時期なんだろう。

 「そっか、カルー寂しがってたから喜ぶと思いますよーそれまではお子様と遊ばれるんです?」
 「はい!王妃様に会いたいと言ってたので、少し遊ばせてあげたいんですけど、お時間とかってありますか?」
 「えーと、裁縫とか、お茶会の練習なので……基本いつでも大丈夫かと。急用がなければ」
 「おうひさまと、あそべるー?おにごっこしたい!」
 「王妃様は鬼ごっこしてくれる、かなぁ……してくれる気がしないけど」
 「分かりませんよー優しい方ですし、子供が嫌いとも聞いたことないです。あれなら一緒にお勉強されるのも良いと思いますよ」
 「べんきょうは、いやー!」
 「家でも勉強しないんだから、この場くらいしなさい」

 パンケーキを机の上に置くと、くるくると動き回っていたカンは、大人しく座り、少しおぼつかない動きながらも、パクパクとパンケーキをぱくついていた。

 「おいひい!これおうひさまがつくったの?」
 「ええ、このジャムですけど、パンケーキに負けないくらい美味しいでしょ?」
 「あ、ほんとだ!美味しい……王妃様は料理の才能もあるんですね。いずれシェフは追い出されるのでは?」
 「素晴らしい方が来てくれたと思いますよ、覚えるのも早いし、この国の民を思いやる気持ちもある」

 民の事を気にしている発言もあり、文字も教えられて数日とは思えないほど覚えている。国王は良い人を選ばれた、としみじみ思う。体躯もいいし、子も身体が頑丈で、いいうさぎの子が生まれるだろう。いや、もしかして人間との場合って……人の子が生まれるんだろうか?それはそれで良いと思うが、その場合ってうさぎの血って……いや、めんどくさいことは考えるのをやめておこう。

 「おうひさま、いいひとー?」
 「えぇ、とても良い方ですよ。鬼ごっこ以外にも遊んでくれます」
 「やったー!なにしようかなぁ」

 ニコニコとしている子供はやはり良いもので、余計楽しみになる、人間でもうさぎでも、可愛い二人の子供に間違いはないし、楽しみにしておけばいいか。__しかし、楽しみにしていても仕事には追われるし、まだ子がいつ生まれるかなんて分からない。
 そっと時計を見ると、もう国王たちが起きる時間になっており、そろそろ準備をして朝食を食べさせなければ。

 「さて、もう時間になりそうなので起こしに行ってきます。ごゆっくりお食べくださいね」
 「ありがとうございます!ほら、ゆっくり食べなさい」
 「んー!まはえ~!」
 「またねなんて言わないのっ!」

 こら!と怒られてる声が聞こえて和やかになる。やはり子供は純粋で可愛らしい。二人の子も上下の関係も気にしない、おおらかでしっかり者。そんな子に育ってほしい。なんて……使者の分際で出過ぎた考えか。いや、あの二人ならそんな子が生まれるんだろう。少し浮き足立ちながらも、二人の元へと向かった。
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