36 / 41
30話 ブーケSide
起きたときに外を見たが、本日は曇りみたいだ。裁縫した後に、お茶会の作法でも……と、元王妃が仰っていたが、外では難しそうなので、中での用意をしておこう。
最近は少し忙しい。いや、少しどころではない。王妃と国王の世話係─いいように言ってるが、要は雑用─の私は、少してんてこ舞いになっていた。
アンヌ国王は外交の準備や、顔合わせ、新しく来た書類の整理がなかなか間に合わない。そろそろ外交の顔合わせがなくなるから、書類の整理なども減り、もう少しマシになる……と思うのだが、まだまだ忙しいみたいだ。
子供の頃から見ていた方が、ああやって働いているところを見るのは、中々使者名義に尽きるものだ。あんなに小さかった王子が、ついに国王なんて……年を取って涙腺が脆くなっているのか、少し昔のことを考えるだけで泣けてしまうのが辛い。もう相当な年になってしまったみたいだ。
忙しそうな国王を裏目に、王妃はのんびりと勉強をしている。国王からしたらその方がいい─ゆっくりと勉強させてあげたいらしい─と言っていたが、食事さえ一緒にできないのは少し可愛そうだ。初めて作ったというハンバーグを、食べて欲しそうにそわそわとしていた王妃を思うと、少し胸が痛かった。
結局夜に行ったら残っていたし。多分疲れてて食べる気が無かったとか、そんな所だろうけど……
まぁ、今日も多分喜ぶ。王妃はもう一品、朝に食べられるように頑張っていちごジャムを作っていた。これをパンケーキにかけて食べれば、国王も一日元気いっぱいになるだろう。
ジャムを小皿に移しつつ、朝食を運ぶ用意していると、使者のヤン─犬だが、耳が尖っているのでどちらかといえば狼に見える─が何か大きい荷物を持ってこちらへ来ていた。
「おはようございます、ブーケさん」
「おはよう。どうしたのー?そんな大荷物で」
「これ、ほら。あれですよ、地下にいる罪人に渡す水晶です。わざわざ国の外まで買いにいったんですよー疲れたぁ……」
「あぁー!お疲れ様。ご飯食べていきなよ。王妃お手製のジャムがあるよ」
「やったー!」
え、なんの声!?と、思っていると、ヤンの後ろから小さい子どもが出てきて、私に抱きついた。ふわふわとした折れ曲がった耳の方が顔より大きく、大きい口と目が、顔の大半を占めている。
「こら、カン!挨拶もしないで抱きつかないの!」
「カン……あ、貴方のお子様ですね。おはよう」
「おはようございまーす!おうひさまがつくった、ごはんたべたいです!」
ニコニコと明るい顔をして、こちらにお願いしてくるカン、という子が可愛いので、サービスでカンの方は多めにして、二人分用意する。
「申し訳ないです、ありがとうございます」
「お疲れでしょうし、このあとはその水晶を届けに行くんですよね?もっと疲れるでしょ」
「いや、夜にカルーとブブが交代するんですよ、その時にブブといっしょに行って、ご飯食べてカルーと風呂に……」
ブブはカルーと同じくらい腕が立つ鷹の獣人で、のんびりとした性格だが、やるときはやる人物である。流石にカルーは疲れてるだろうから、変わる時期なんだろう。
「そっか、カルー寂しがってたから喜ぶと思いますよーそれまではお子様と遊ばれるんです?」
「はい!王妃様に会いたいと言ってたので、少し遊ばせてあげたいんですけど、お時間とかってありますか?」
「えーと、裁縫とか、お茶会の練習なので……基本いつでも大丈夫かと。急用がなければ」
「おうひさまと、あそべるー?おにごっこしたい!」
「王妃様は鬼ごっこしてくれる、かなぁ……してくれる気がしないけど」
「分かりませんよー優しい方ですし、子供が嫌いとも聞いたことないです。あれなら一緒にお勉強されるのも良いと思いますよ」
「べんきょうは、いやー!」
「家でも勉強しないんだから、この場くらいしなさい」
パンケーキを机の上に置くと、くるくると動き回っていたカンは、大人しく座り、少しおぼつかない動きながらも、パクパクとパンケーキをぱくついていた。
「おいひい!これおうひさまがつくったの?」
「ええ、このジャムですけど、パンケーキに負けないくらい美味しいでしょ?」
「あ、ほんとだ!美味しい……王妃様は料理の才能もあるんですね。いずれシェフは追い出されるのでは?」
「素晴らしい方が来てくれたと思いますよ、覚えるのも早いし、この国の民を思いやる気持ちもある」
民の事を気にしている発言もあり、文字も教えられて数日とは思えないほど覚えている。国王は良い人を選ばれた、としみじみ思う。体躯もいいし、子も身体が頑丈で、いいうさぎの子が生まれるだろう。いや、もしかして人間との場合って……人の子が生まれるんだろうか?それはそれで良いと思うが、その場合ってうさぎの血って……いや、めんどくさいことは考えるのをやめておこう。
「おうひさま、いいひとー?」
「えぇ、とても良い方ですよ。鬼ごっこ以外にも遊んでくれます」
「やったー!なにしようかなぁ」
ニコニコとしている子供はやはり良いもので、余計楽しみになる、人間でもうさぎでも、可愛い二人の子供に間違いはないし、楽しみにしておけばいいか。__しかし、楽しみにしていても仕事には追われるし、まだ子がいつ生まれるかなんて分からない。
そっと時計を見ると、もう国王たちが起きる時間になっており、そろそろ準備をして朝食を食べさせなければ。
「さて、もう時間になりそうなので起こしに行ってきます。ごゆっくりお食べくださいね」
「ありがとうございます!ほら、ゆっくり食べなさい」
「んー!まはえ~!」
「またねなんて言わないのっ!」
こら!と怒られてる声が聞こえて和やかになる。やはり子供は純粋で可愛らしい。二人の子も上下の関係も気にしない、おおらかでしっかり者。そんな子に育ってほしい。なんて……使者の分際で出過ぎた考えか。いや、あの二人ならそんな子が生まれるんだろう。少し浮き足立ちながらも、二人の元へと向かった。
最近は少し忙しい。いや、少しどころではない。王妃と国王の世話係─いいように言ってるが、要は雑用─の私は、少してんてこ舞いになっていた。
アンヌ国王は外交の準備や、顔合わせ、新しく来た書類の整理がなかなか間に合わない。そろそろ外交の顔合わせがなくなるから、書類の整理なども減り、もう少しマシになる……と思うのだが、まだまだ忙しいみたいだ。
子供の頃から見ていた方が、ああやって働いているところを見るのは、中々使者名義に尽きるものだ。あんなに小さかった王子が、ついに国王なんて……年を取って涙腺が脆くなっているのか、少し昔のことを考えるだけで泣けてしまうのが辛い。もう相当な年になってしまったみたいだ。
忙しそうな国王を裏目に、王妃はのんびりと勉強をしている。国王からしたらその方がいい─ゆっくりと勉強させてあげたいらしい─と言っていたが、食事さえ一緒にできないのは少し可愛そうだ。初めて作ったというハンバーグを、食べて欲しそうにそわそわとしていた王妃を思うと、少し胸が痛かった。
結局夜に行ったら残っていたし。多分疲れてて食べる気が無かったとか、そんな所だろうけど……
まぁ、今日も多分喜ぶ。王妃はもう一品、朝に食べられるように頑張っていちごジャムを作っていた。これをパンケーキにかけて食べれば、国王も一日元気いっぱいになるだろう。
ジャムを小皿に移しつつ、朝食を運ぶ用意していると、使者のヤン─犬だが、耳が尖っているのでどちらかといえば狼に見える─が何か大きい荷物を持ってこちらへ来ていた。
「おはようございます、ブーケさん」
「おはよう。どうしたのー?そんな大荷物で」
「これ、ほら。あれですよ、地下にいる罪人に渡す水晶です。わざわざ国の外まで買いにいったんですよー疲れたぁ……」
「あぁー!お疲れ様。ご飯食べていきなよ。王妃お手製のジャムがあるよ」
「やったー!」
え、なんの声!?と、思っていると、ヤンの後ろから小さい子どもが出てきて、私に抱きついた。ふわふわとした折れ曲がった耳の方が顔より大きく、大きい口と目が、顔の大半を占めている。
「こら、カン!挨拶もしないで抱きつかないの!」
「カン……あ、貴方のお子様ですね。おはよう」
「おはようございまーす!おうひさまがつくった、ごはんたべたいです!」
ニコニコと明るい顔をして、こちらにお願いしてくるカン、という子が可愛いので、サービスでカンの方は多めにして、二人分用意する。
「申し訳ないです、ありがとうございます」
「お疲れでしょうし、このあとはその水晶を届けに行くんですよね?もっと疲れるでしょ」
「いや、夜にカルーとブブが交代するんですよ、その時にブブといっしょに行って、ご飯食べてカルーと風呂に……」
ブブはカルーと同じくらい腕が立つ鷹の獣人で、のんびりとした性格だが、やるときはやる人物である。流石にカルーは疲れてるだろうから、変わる時期なんだろう。
「そっか、カルー寂しがってたから喜ぶと思いますよーそれまではお子様と遊ばれるんです?」
「はい!王妃様に会いたいと言ってたので、少し遊ばせてあげたいんですけど、お時間とかってありますか?」
「えーと、裁縫とか、お茶会の練習なので……基本いつでも大丈夫かと。急用がなければ」
「おうひさまと、あそべるー?おにごっこしたい!」
「王妃様は鬼ごっこしてくれる、かなぁ……してくれる気がしないけど」
「分かりませんよー優しい方ですし、子供が嫌いとも聞いたことないです。あれなら一緒にお勉強されるのも良いと思いますよ」
「べんきょうは、いやー!」
「家でも勉強しないんだから、この場くらいしなさい」
パンケーキを机の上に置くと、くるくると動き回っていたカンは、大人しく座り、少しおぼつかない動きながらも、パクパクとパンケーキをぱくついていた。
「おいひい!これおうひさまがつくったの?」
「ええ、このジャムですけど、パンケーキに負けないくらい美味しいでしょ?」
「あ、ほんとだ!美味しい……王妃様は料理の才能もあるんですね。いずれシェフは追い出されるのでは?」
「素晴らしい方が来てくれたと思いますよ、覚えるのも早いし、この国の民を思いやる気持ちもある」
民の事を気にしている発言もあり、文字も教えられて数日とは思えないほど覚えている。国王は良い人を選ばれた、としみじみ思う。体躯もいいし、子も身体が頑丈で、いいうさぎの子が生まれるだろう。いや、もしかして人間との場合って……人の子が生まれるんだろうか?それはそれで良いと思うが、その場合ってうさぎの血って……いや、めんどくさいことは考えるのをやめておこう。
「おうひさま、いいひとー?」
「えぇ、とても良い方ですよ。鬼ごっこ以外にも遊んでくれます」
「やったー!なにしようかなぁ」
ニコニコとしている子供はやはり良いもので、余計楽しみになる、人間でもうさぎでも、可愛い二人の子供に間違いはないし、楽しみにしておけばいいか。__しかし、楽しみにしていても仕事には追われるし、まだ子がいつ生まれるかなんて分からない。
そっと時計を見ると、もう国王たちが起きる時間になっており、そろそろ準備をして朝食を食べさせなければ。
「さて、もう時間になりそうなので起こしに行ってきます。ごゆっくりお食べくださいね」
「ありがとうございます!ほら、ゆっくり食べなさい」
「んー!まはえ~!」
「またねなんて言わないのっ!」
こら!と怒られてる声が聞こえて和やかになる。やはり子供は純粋で可愛らしい。二人の子も上下の関係も気にしない、おおらかでしっかり者。そんな子に育ってほしい。なんて……使者の分際で出過ぎた考えか。いや、あの二人ならそんな子が生まれるんだろう。少し浮き足立ちながらも、二人の元へと向かった。
あなたにおすすめの小説
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
悪役令息に転生したらしいけど、何の悪役令息かわからないから好きにヤリチン生活ガンガンしよう!
ミクリ21 (新)
BL
ヤリチンの江住黒江は刺されて死んで、神を怒らせて悪役令息のクロエ・ユリアスに転生されてしまった………らしい。
らしいというのは、何の悪役令息かわからないからだ。
なので、クロエはヤリチン生活をガンガンいこうと決めたのだった。
悪役令嬢の兄、閨の講義をする。
猫宮乾
BL
ある日前世の記憶がよみがえり、自分が悪役令嬢の兄だと気づいた僕(フェルナ)。断罪してくる王太子にはなるべく近づかないで過ごすと決め、万が一に備えて語学の勉強に励んでいたら、ある日閨の講義を頼まれる。
獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果
ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。
そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。
2023/04/06 後日談追加
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
シナリオ回避失敗して投獄された悪役令息は隊長様に抱かれました
無味無臭(不定期更新)
BL
悪役令嬢の道連れで従兄弟だった僕まで投獄されることになった。
前世持ちだが結局役に立たなかった。
そもそもシナリオに抗うなど無理なことだったのだ。
そんなことを思いながら収監された牢屋で眠りについた。
目を覚ますと僕は見知らぬ人に抱かれていた。
…あれ?
僕に風俗墜ちシナリオありましたっけ?
記憶喪失になったら弟の恋人になった
天霧 ロウ
BL
ギウリは種違いの弟であるトラドのことが性的に好きだ。そして酔ったフリの勢いでトラドにキスをしてしまった。とっさにごまかしたものの気まずい雰囲気になり、それ以来、ギウリはトラドを避けるような生活をしていた。
そんなある日、酒を飲んだ帰りに路地裏で老婆から「忘れたい記憶を消せる薬を売るよ」と言われる。半信半疑で買ったギウリは家に帰るとその薬を飲み干し意識を失った。
そして目覚めたときには自分の名前以外なにも覚えていなかった。
見覚えのない場所に戸惑っていれば、トラドが訪れた末に「俺たちは兄弟だけど、恋人なの忘れたのか?」と寂しそうに告げてきたのだった。
トラド×ギウリ
(ファンタジー/弟×兄/魔物×半魔/ブラコン×鈍感/両片思い/溺愛/人外/記憶喪失/カントボーイ/ハッピーエンド/お人好し受/甘々/腹黒攻/美形×地味)
大学一軍イケメンにいちご狩りに誘われた陰キャの俺、なぜかいちごじゃなくて俺が喰われたんだが(?)
子犬一 はぁて
BL
大学一軍イケメン×大学九軍陰キャ
喰われるなんて聞いてないんだが(?)
俺はただ、
いちご狩りに誘われただけだが。
なのに──
誘ってきた大学一軍イケメンの海皇(21)に
なぜか俺が捕まって食われる展開に?
ちょっと待てい。
意味がわからないんだが!
いちご狩りから始まる
ケンカップルいちゃらぶBL
※大人描写のある話はタイトルに『※』あり