姉の代わりに嫁いだけど、可愛いうさぎの王子に溺愛されるなんて聞いてない─欠点は性欲が強すぎる所だけ─

無能歌

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33話

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 フラフラとした足取りではあるが、無事に牢屋前へ帰ってきて、そのままブーケに連れられて俺は隣の空間にいた。
 無事に再開出来たことを喜ぶ間もなく、体調が悪いことを伝えると、一度休んだほうがいい。という話になったのだ。

 「無事見つかってよかったですけど……どちらにいらしたんですか?お茶会の場所とか?」
 「う……いや、その前の空き室で、隠れてた…なんか、怖がってたから、慰めてやってくれ……」
 「そうなんですねー分かりました!ガード様は如何されたんですか?」
 「うーん、なんか飲んだ……」
 「なんか……って、何を?」

 そう言われても俺にもわからない、何を飲んだのか……ただ甘い物で、人の手が加えられた……という味がしたのだ。

 「もっと特徴はないんですかー?うーん、なんか濁ってたとか、ゼリー状だったとか」
 「無色透明……あ、でもなんか水みたいな感じだったかも……?」

 ゼリーや、デミグラスソース、シチューみたいな感じにドロドロとしたり、かっちりと固まっていたようなものではなかった。どちらかといえば蜂蜜とか、シロップ、ミルクのような感じだった。

 「うーん、よく分からないですね……お身体は如何ですか?」
 「なんか、フラフラして、ぼーっとするけど……特に大丈夫、だと思う」

 ズキズキとどこか傷んだり、喉が焼けるような感覚はしていない。ふわふわとした気持ちになってくるが、大して生命の危機を感じていない。
 なんだか知っている感覚に似ているから、だとは思うが……なんの感覚だろう。

 「本当にそれ大丈夫です?一応解毒剤とか持ってきますか?」
 「ん……いいよ、とりあ、えずカンと話して、ミーナとも話さないと……」
 「あちゃー、そういえばそんな話がありましたね。今日ぐらいサボってもよろしいのでは?ミーナさんも騒ぎが聞こえてるでしょうし、子供相手にそんなに鬼じゃないでしょう」
 「どうだろうな……あいつのこと、あんま、り知らない……」

 どんな男が好みとか、子供が好きなのかどうかとかも知らない。知っているのはあいつは酷いやつで、聖女の力があるってこと。あとグリーンピースが嫌いとか。

 「でも、後回しに、したくないし……今日行く。今フ、ワフワしてる分嫌な事や、られてもスルー出来そう、だし」
 「うーん、それなら……まぁ……良いですけど」

 モゴモゴと口を動かしつつ許可をくれたブーケに、肩を貸してほしいと頼み、肩を組んで歩き始める。
 正直ここまでふらふらしてるのは、自覚してなかった。もっと自分の足で歩けると思っていて、行くと言ったのだが……

 これなら正直に断れば良かった。なんて考えていると、ピタリとブーケが止まり、こちらを見てくる。

 「……?なんだよ、そんなジロジ、ロ見て」
 「……ガード様って、平熱お高めですか?」
 「さぁ……知らないな、あん、まり寒がってた……記憶は無い、けど」

 真冬にシーツ一枚でブルブルと震えていた記憶はあるが、初冬とかは大丈夫だった気もする。それなら体温は高い方なんじゃないか?

 「なんで……?」
 「いや、やけに温かい気がして……なんだかお酒を飲んだみた……は!お酒飲んだんですかね?」
 「……あー?」

 言われてみれば確かに酒を飲んだ時の、浮遊感というか、高揚感に似ている気もしなくもない。飲みすぎるとフラフラするし、眠たくもなる。

 「あ、でもなんでカンが持ってたかは謎ですねー、今から聞きにいくし分かるかな」
 「多分、わかると思う、けど……」

 おねーさん。と言っていた。正直この城にいるおねーさんなんて、一人しか当てはまらないが……でも、その当てはまる人物と関わる方法もない。
 牢屋の扉には確かに食事を入れるための、ポストみたいなのはあるけど、あれはこちら側から開けないといけないし、身長的にカンには開けられないはず。

 ということは、別の不審者が忍び込んでいるとか?この国に不審者はいないと思っていたが……やはり極まれにとか生まれるんだろうか。均衡を保とうとして。
 馬鹿なことを考えていたからか、足がもつれる。酒説、結構濃厚かもしれない。

 ブーケを抱きしめないと立っていられないくらいになり始め、カンの事はブーケが聞いてくれたのを聞く事にして、優先をミーナにする。急いでミーナのもとへ向かうように指示をした。


 □◇□◇□◇□


 「……あ!ガード様、この度は……」
 「ごめんヤン、王妃は忙しいので、お礼は後でね」

 そそくさとブブから鍵を受け取ったブーケは、鍵をガチャガチャと開けて俺を中に放り込んでくれた。
 これからは外でブーケと、ヤンたちが話してくれるので後で聞けばいい。
 ……しかし、ここからが問題だった。立てないほどの頭のくらくらと、ぼーっとしてくる感覚。そして、気がついたのは、身体の奥から湧き上がる熱だった。
 アンヌにせがんだ時くらい身体が熱を持っていて、じわじわと身体が熱いのを感じる。

 「やだ、またノックもせずに入ってきたのね!レディのお部屋なのに」

 少し怒っているような声を上げ、こちらに近づいてくる。
 俺は入ったままの姿勢で立ち上がれず、床とずっとキスをして考え事を必死にしていた。
 姉の前で醜態を晒すわけにはいかない、なんて考えても身体は刺激を求めており、肩を触られただけでゾワゾワと背筋に何かが走る。

 どうやって収めようか、と頭をぐるぐると回転させていると、ミーナは口を耳元へ運んできて、ニヤつきながら息を吹きかけてくる。
 くすぐったい感覚が感覚の狂った身体には毒で、半べそになってしまう。
 外に聞こえないようにか、小さな声で話してくるのでたちが悪い。俺はできるだけ、大きな声で話してやる……!

 「よしよし、効いてるわね……」
 「く、そ……なにし、たんだ……!」
 「アンヌ国王に飲ませようとしてた媚薬、あんたに飲ませただけ。身体検査しなかったのがアダになったわね~」

 そう言われてはっとする、確かに連れて行け!と言っていたけど、身体検査はしなかったのか?それとも、何処かに隠し持っていたのか……分からないが、それで持ち込まれたようだ。
 それを得意げにニヤニヤとしている顔は、いくら俺でも見たことがない顔だった。確かに俺をいじめてる時だって楽しそうだったが、今のほうが何倍も楽しそうで、先程怖がっていた幽霊より恐ろしいかもしれない。
 口を動かす事さえやりにくくなり、極力睨みつける行為だけでもしていると、ふふん。と鼻息を吐いてこちらへ口を向けた。

 「なんでって顔してるわね。わかんない?」
 「わ、かる、か……!」
 「アンヌ国王があんたに騙されてて、可哀想だからよ。私のことが本当は好きなのに、あんたがいるから駄目なの」
 「は、ぁ……?」

 まだ言ってるのかこいつ、呆れるのは脳がどれだけ回ってなくても出来るんだな……
 アンヌを嫌がってたし、ここ数日の態度からせいぜい支援をせがむ事で敵対しそう、と思っていた位なのに。

 「あの人は騙されてるの。だから私にあんな冷たかったんだわ……ほら、早くアンヌ国王を操るのやめなさいよ。そうしたらすぐ私の所に来てくれて、ここから私を出してくれるはず」
 「ばか、そんなちから、おれにはない……」

 こいつは何を勘違いして俺に薬を盛ったんだろう。というか、媚薬なんて盛ったって何も効果がないと思うのだが……

 「はぁ……往生際が悪いわね。いいわ、操るのを止めたくなるようにしてあげる」

 そういったミーナは、ベッドの下から何かを取り出してきた。
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