姉の代わりに嫁いだけど、可愛いうさぎの王子に溺愛されるなんて聞いてない─欠点は性欲が強すぎる所だけ─

無能歌

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34話

 「ふふふ、シーツで作ったロープ。これで縛り上げてあげるわ、苦しみなさい!」
 「シー、ツで苦しいわけ……な、いだろ!」

 そう思っていたが、ミーナが引っ張り上げたものを見ると、考えが変わる。シーツで作られたロープはペラペラとしたものではなくて、三つ編みというか、ロープ編みというか、しっかりと結ばれているものだった。確かにいたそ……いや、それをなんで編み込めたんだろう……?ミーナって、もしかして変なとこで器用なのか?

 思考が考えられなくなりそうだからか、その事が逆に面白くなってくる。ミーナの考えはこれなのだ、俺をボコボコにするにも、母や父が持ってるムチがないと何もできない。自分の脳に頼っても、俺に媚薬を飲ませて縛り上げる。が限界らしい。

 聖女の特訓をして、俺よりも頭が良くて、魔力もあるミーナが……

 「ぐふ、ふふ……ふ、ふ……」
 「ちょっと、頭の下から腕出しなさいよ。頭重たくって、縛れないんだから」
 「あ、は、あは、は!」

 俺よりも、弱い!現に、動けなくても、俺が自分から腕を差し出さなければこいつは縛れない。
 あぁ、何を恐れていたんだろう。前はアンヌが取られるかもしれないと怯え、さっきまでは何を報復されるかビクビクしていた。
 でも、ミーナにはこうするしか脳が無いのか、そうか。報復に別人を雇ったとして、そいつのほうが頭が良くても、プライドの高いミーナはその作戦を絶対に採用しない。

 なんだ、全然怖くないじゃないか。ビクビクして生きていたこの年月が馬鹿らしいな……

 「も、もう!笑ってないで早く頭上げなさいよっ!意味分かんない!早くしなさいっ!」

 顔を真っ赤にしてヒステリックに叫ぶミーナを横目に、どうやって立ち上がるか考える。
 正直、頭は回っている気がするが、身体は全く動かない。ミーナに対して反抗心がなくとも、頭を上げることは出来なかっただろう。
 一番助かるのは外にいるみんなが来て、俺を立ち上げてくれることだが……カンを慰めるに必死で、こちらの声は聞こえていないのかもしれないな。それか、俺の声が全然聞こえなくて、ただヒステリックに叫んでいるだけ……と、放置してるか。


 「ふん!足から縛ってあげるわ。そうじゃない、動けないんだからどこから縛っても同じね」

 ……もしかして、俺が反撃するとでも思っていたのだろうか。自分から媚薬が効いてきた……とか言ってたのに。いやもしかして媚薬じゃなくて笑い薬とかなんじゃないだろうか。なんかわからないけど、ミーナの動きがいちいち面白い。

 「ん、ぅわ……ん……っ」
 「痛いでしょ、動けないようにキツめにしてあげるんだからっ……」

 痛いというか、足首を触られたこそばい感覚がゾワゾワとする。笑い薬じゃなくて、本当に媚薬っぽいな……そう考えると、あんまりもたもたしてられないかもしれない。
 姉弟間はどう考えてもタブーで、下手したら俺に対して変な噂が立つ。それだけは避けたい。

 どうしよう?どうやってここから逃げよう。いや、時間が経てばブーケが開けてくれそうだけど、それはいつ頃なんだろう?一か八かで話しかけ続けるほうがいいんだろうか?そうすれば、またミーナが騒いでくれれば、入ってきてくれるかもしれない。

 どうやって怒らせるのがいいんだろう。いや、もう半分怒ってるようなものだけど……まずなんで怒ってるんだっけ?俺がアンヌを操ってるとかなんとかだって言ってたっけ。何で魔力がない俺が操れると思ってるんだ……?なんか弱みを握ってるとでも思ってるのかな。
 でも、もっと怒らせる方法はこれだと確信する。もう怒らせていいのだ、報復なんてなんてこと無いと遅いながらに知った。これは……まあ、媚薬に感謝だな。

 「俺をしば、っても無駄、だぞ……」
 「あら、痛いから強がってるの?強がってる暇があるなら、頭を上げて腕を出しなさいよっ!」
 「あいつは操られてるんじゃなくて、自分の意志でお前と結婚しなかったんだからな」
 「ふん!そんな嘘通じないんだから。特別な力ってのは、それの事でしょ?魔力とかの分類じゃないんじゃないの」

 この言い分的に、本当に俺の能力を知らないらしい。まぁ、俺でさえ知らないんだから当たり前だと思うけど……なら、ハッタリを噛ましてとにかく騒がせよう。この動けない状態だと、腕を縛られるのも時間の問題かもしれないし、もしされたらどうするかの考えも浮かばない。

 「俺のの、うりょくは……」
 「なによ……!早く言いなさいよ!」
 「ひ、人を……怒らせる、能力なんだよ……」

 そう言うとミーナはキョトンとして、顔が一気に赤くなる。しかし、それはアンヌなどの照れている顔ではなく、怒っている顔のようだ。これを正直本気にするとは思わなかったが……ラッキーだ。

 「じゃあ私がパレードの日に来た時もそれ使ったのね!?だからアンヌは私を突き飛ばしてきたのね!私をこんなとこに入れて、私がずっとイライラしてたのも貴方のせいなんでしょう!」
 
 大きな金切り声を上げ、俺の事をゲシゲシと蹴飛ばしてくる。靴の先は尖っていて、刺さるとものすごく痛く、力は弱いがそのぶん短いスパンで蹴飛ばしてくる。

 「だからうちもいつもパパとママが怒ってて、あんたをいじめるしか、楽しみがなくなるのよ!信じられない、ほんとに!もう、このまま蹴飛ばしてあんたをここで殺しても……」

 そう言いかけてバン、と大きな音が聞こえる。扉が開いたようで、ブーケやブブがミーナを取り押さえる声や音が響く。
 俺の方は、なんというか。情けない……上を向いて、ただボケッとするだけだ。いつも人に助けてもらっている事に、感謝しなければ。

 ブブがミーナを余った紐で縛り付けていると、ブーケがこちらに手を貸してくれようと、手をこちらに差し出してくる。……が、動けないので、不思議そうな顔をしてるブーケが見える。

 「……ごめん、動けな、い」
 「え、そこまでひどかったんですか……!?すみません、早く気づけなくて……」
 「声出、してなかっ、たからな、気にすんな……」

 何だかどっと疲れと興奮が押し寄せるので、あんまり触りたくないが、背に腹は変えられない。
 ブーケに抱っこを頼む─体制のせいで必然的にお姫様抱っこになった─と、そそくさとどこかへ連れて行かれる。
 
 「ま、まて、ミーナは?」
 「罪が重なったので……そろそろ真面目な実刑でしょうね。お父様方も来られるようですし、明日明後日あたりには……もう関わらなくなりますよ」

 そう言ってくれた事に安心しつつも、揺れる布に擦れる肌がゾワゾワとして、集中できない。早くこの媚薬を抜いてしまいたいが……媚薬ってどうやって抜くのが正しいんだろうか。
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