虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨

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第5章

第126話:歪んだ愛

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「じゃあ、一体どうすれば良かったって言うんだよ!」

 ルクシオもまた、抑えきれない激情に突き動かされるように、喉を裂いて逆上した声を荒らげた。 

「僕だって、他に、もっとましな方法があったならそうしたさ! ストルムベルクの人々には申し訳ないとも思っている! だけど、これしか……これしか、あいつを再びこの場所へ、僕の手元に取り戻す確実な方法がなかったんだ……っ!」

 叫ぶルクシオの顔は、語るほどに醜く、どんどん歪んでいく。その表情に張り付いているのは、もはや過去への後悔や親友を思う悲しみなどではなく、一つの目的に取り憑かれた人間だけが持つ、逃げ場のない狂気の色だった。

「……何もかも、計画が狂ってしまった。本当は、レリルをしばらく僕の管理下のここに閉じ込めておいて、その間にあの冷徹な王太子ですら黙らせるほどの『兵器ではない、レリルの真の価値』を証明して見せるつもりだった。そしてもう一度、彼を日陰ではなく、光の当たる正当な場所へ連れて行こうと思っていたのに……」

 ルクシオの声が、唐突に、耳を疑うほど微かに、そして震えるように優しくなった。まるで、壊れやすい宝物を愛でるような、不気味なほどの慈愛を込めて。

「レリルの放つ魔法は……ものすごく、繊細で、綺麗なんだ。それに、魔法を練り、術式を編んでいる時のあいつは、本当に、心から楽しそうだった。僕は……出来れば、僕だって彼から魔法を取り上げたくなんてなかったんだよ……」

 それが、あまりにも難しい、不可能に近い願いであることは、ルクシオ自身が一番よく分かっていた。 

 死なせるよりはましだ、生きてさえいてくれればそれでいい。そう自分に言い聞かせ、他でもないその手で彼に呪いの首輪を嵌め、翼をもぎ取って魔法を奪ったのは、レリルにとって世界で唯一の味方だったはずのルクシオ自身だった。

 けれど、彼が病的なまでに執着し、愛していたのは、あの埃っぽい孤独な部屋で共に学び、誰も知らない庭で美しく魔法を放っていた「あの頃の、無垢なレリル」そのものだったんだ。

「だから……魔力が多いだけの、中身のすり替わった『器』に過ぎないお前になど、僕はこれっぽっちの興味もない。僕が救いたいのは、僕が取り戻したいのは、あのレリルだけだ。そのために立ち塞がる敵が神だなんて、そんなこと知ったことか。僕は絶対に、あいつを奪還する。どんな卑劣な手を使ってでも……!」

 ガリ、と服の上からでも分かるほど強く僕の肩を掴み、真っ直ぐに僕の魂を射抜いてきたルクシオの瞳は、底なしの沼のようにどす黒く、救いようのないほどに濁っていた。
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