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第3章:氷解のゆりかご
第48話:死の処刑人
「……は、あ……っ、げほっ……、……ぁ……っ!!」
叫びすぎた喉が引き裂かれ、肺が過剰な酸素を拒絶するように痙攣を始める。セシルは自分の喉元を、まるで見えない枷を抉り出そうとするかのようにかきむしった。
指先は冷たく痺れ、視界の端からじわじわと不吉な闇が侵食してくる。
「……セシル! 落ち着いてください、セシル!」
アルヴィスが焦燥に満ちた声を上げ、崩れゆくセシルの身体を抱きとめようと手を伸ばす。だが、今のセシルにとって、その大きな掌も、騎士らしい逞しい腕も、自分を追い詰め、自由を奪う檻にしか見えなかった。
「……触るな! 離せ……っ、私に構うな……!!」
セシルは狂ったように首を振り、アルヴィスの腕から逃れようと床をのたうち回った。
呼吸が浅く、速くなる。吸い込もうとするたびに胸が痛み、脳が「死」の警鐘を鳴らし続ける。だが、パニックに陥った心は、その窒息しそうな苦しささえも、「無力なまま生きている罪」への罰のように感じ、無意識に受け入れていた。
「どうせ……っ、君もいつか私を捨てるんだろう!? バルトロのように、民のように、価値がなくなった私を見て、あざ笑い、見捨てる日が来るんだろう……! だったら、今すぐ終わらせてくれ……っ。お願いだ、アルヴィス……!」
セシルは震える手で、アルヴィスの腰に佩かれた剣の柄に縋り付こうとした。
常に完璧に手入れされている、冷たく重厚な鋼。それだけが、今の自分をこの「施しを受ける惨めさ」から解放してくれる唯一の救いに見えた。
「いっそ殺せ……! 君の手で、今すぐ私を殺してくれ!! 憐れまれるのも、義務で生かされるのも、もう耐えられない……! こんな無様な姿を、君に晒し続けたくないんだ……っ!!」
涙と汚物で顔をぐちゃぐちゃに濡らし、かつての「聖王」の面影など微塵もない姿で、セシルは喉が潰れるほどに泣き叫んだ。 助けてほしいのではない。ただ、この「空っぽの器でしかない自分」という耐えがたい現実から、逃がしてほしかった。
「……殺せ! アルヴィス! 私を連れ出した責任があると言うなら、殺してくれ……っ!!」
錯乱した叫びが、狭いリビングに木霊する。
アルヴィスは、自分に向けられた剣の柄を、そして自分を「処刑人」に指名して泣き崩れる愛しい人を、絶望に満ちた瞳で見つめていた。
セシルの身体が、激しい過呼吸の末にガクガクと大きく震え、そのまま糸が切れたように前のめりに倒れ込む。 床に叩きつけられる寸前、その身体を抱きしめたのは、セシルが「殺せ」と願った、あの日心中を命じたはずの男の腕だった。
叫びすぎた喉が引き裂かれ、肺が過剰な酸素を拒絶するように痙攣を始める。セシルは自分の喉元を、まるで見えない枷を抉り出そうとするかのようにかきむしった。
指先は冷たく痺れ、視界の端からじわじわと不吉な闇が侵食してくる。
「……セシル! 落ち着いてください、セシル!」
アルヴィスが焦燥に満ちた声を上げ、崩れゆくセシルの身体を抱きとめようと手を伸ばす。だが、今のセシルにとって、その大きな掌も、騎士らしい逞しい腕も、自分を追い詰め、自由を奪う檻にしか見えなかった。
「……触るな! 離せ……っ、私に構うな……!!」
セシルは狂ったように首を振り、アルヴィスの腕から逃れようと床をのたうち回った。
呼吸が浅く、速くなる。吸い込もうとするたびに胸が痛み、脳が「死」の警鐘を鳴らし続ける。だが、パニックに陥った心は、その窒息しそうな苦しささえも、「無力なまま生きている罪」への罰のように感じ、無意識に受け入れていた。
「どうせ……っ、君もいつか私を捨てるんだろう!? バルトロのように、民のように、価値がなくなった私を見て、あざ笑い、見捨てる日が来るんだろう……! だったら、今すぐ終わらせてくれ……っ。お願いだ、アルヴィス……!」
セシルは震える手で、アルヴィスの腰に佩かれた剣の柄に縋り付こうとした。
常に完璧に手入れされている、冷たく重厚な鋼。それだけが、今の自分をこの「施しを受ける惨めさ」から解放してくれる唯一の救いに見えた。
「いっそ殺せ……! 君の手で、今すぐ私を殺してくれ!! 憐れまれるのも、義務で生かされるのも、もう耐えられない……! こんな無様な姿を、君に晒し続けたくないんだ……っ!!」
涙と汚物で顔をぐちゃぐちゃに濡らし、かつての「聖王」の面影など微塵もない姿で、セシルは喉が潰れるほどに泣き叫んだ。 助けてほしいのではない。ただ、この「空っぽの器でしかない自分」という耐えがたい現実から、逃がしてほしかった。
「……殺せ! アルヴィス! 私を連れ出した責任があると言うなら、殺してくれ……っ!!」
錯乱した叫びが、狭いリビングに木霊する。
アルヴィスは、自分に向けられた剣の柄を、そして自分を「処刑人」に指名して泣き崩れる愛しい人を、絶望に満ちた瞳で見つめていた。
セシルの身体が、激しい過呼吸の末にガクガクと大きく震え、そのまま糸が切れたように前のめりに倒れ込む。 床に叩きつけられる寸前、その身体を抱きしめたのは、セシルが「殺せ」と願った、あの日心中を命じたはずの男の腕だった。
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