15 / 45
第3章 勇者視点
第5話:聖炎と闇
しおりを挟む
俺の剣から放たれた光の魔力、『聖炎』が、ノアールに向かって一直線に走った。それは、この三年間、俺が痛みと孤独に耐えて練り上げた、最高純度の光だった。師範たちが教えた、闇を完全に滅却するための、迷いのない一撃。
ノアールは、その攻撃を避けようとはしなかった。彼は、ただ静かに、その場で光を受け止めようと立っている。彼の周囲を覆う闇の魔力が、聖炎と衝突する瞬間、凄まじい反発の轟音が屋敷全体を揺るがした。
キィン!
聖炎はノアールの闇の鎧を貫き、彼の肩を浅く切り裂いた。しかし、闇の鎧はその直後、すぐに傷を修復し、ノアールの身体を再び覆い尽くした。
「……僕の闇は、君の光に呼応して強くなる。君が僕を本気で滅ぼそうとすればするほど、僕は君の敵として完成してしまうよ、セレ」
ノアールの声は、どこか諦めを含みながらも、冷徹だった。その瞳は、俺の感情を試すかのように、虚ろに俺を見つめている。
俺は舌打ちをした。ノアールは、俺の光を避けるどころか、それを自分の魔力の増幅に利用している。まるで、俺が彼を討つことに躊躇することを、許さないかのように。
「逃げるな!覚悟を決めたなら、俺の光から逃げてみろ!」
俺は、彼のその自己滅却の姿勢に、激しい苛立ちを感じた。彼は、俺に罰を与える機会さえ、自分の都合の良い死という形で奪おうとしている。
俺は、剣を一度大きく振りかぶり、さらに強力な光の波動を剣に集中させた。
――グオオオオッ!
広間の空気は光と闇の魔力によって張り詰め、家具の破片や埃が舞い上がった。俺は、ノアールの目を見据え、一気に間合いを詰めた。
「俺は、お前の鎖を解かれた屈辱を、絶対に忘れはしない!」
剣がノアールの心臓目掛けて突き出される。
しかし、ノアールはその瞬間に初めて、自らの闇の力を振るった。
彼の身体から、黒い奔流のような闇の魔力が噴出する。それは、俺の聖炎とは対照的な、すべてを腐敗させ、飲み込むような重い力だった。闇の奔流は、俺の剣を直接受け止めるのではなく、俺の身体を迂回するように、屋敷の天井と床を狙った。
ゴウッ!バキィン!
闇の奔流が通過した場所は、石造りの天井も床も、一瞬にして炭のように脆く崩壊した。屋敷全体が、さらに激しく軋み、今にも崩れ落ちそうになった。
ノアールは、俺の剣を避けながら、冷たい声で言った。
「君が僕を討てば、この屋敷は崩れ、君は外界の大人たちのもとに帰れる。僕が君をここで殺せば、君は道具として生きる苦しみから解放される」
彼は、俺の心を狙って闇の力を振るっていた。彼の攻撃は、俺の命を奪うことよりも、俺の居場所を奪うことを目的としているかのようだった。
「僕が、君に与えられる最後の優しさは、君の解放だけだ」
「余計なお世話だ!」
俺は剣を振り払い、崩れた床を蹴って再びノアールとの距離を詰める。俺は、彼の同情などいらない。彼が俺の鎖を解いた理由が「優しさ」だったとしても、俺が彼に求めているのは、その優しさの代償だ。
俺の聖炎とノアールの闇は、何度も激しく衝突した。それは、光と闇の戦いであると同時に、愛と絶望の交錯だった。
ノアールは、常に俺の感情を刺激する言葉を投げかけた。
「君を森に置いていった僕を憎めばいい。王城の大人たちに道具として扱われる苦しみを、僕にすべてぶつけるといい」
彼の言葉を聞くたびに、俺の瞳の金色の光は増幅した。俺の憎悪と屈辱こそが、ノアールの闇を、そして俺の光を育てていた。
戦いは一進一退だったが、このままでは屋敷が完全に崩壊し、俺たちの再会が終わってしまう。
俺は、ノアールを殺すつもりはなかった。だが、彼を連れ戻すためには、一度、完全に彼の闇を鎮めなければならない。
(ノアール。お前は、俺の鎖を解いた。その償いは、お前の命で終わらせてやるものか)
俺は、憎しみを抱えたまま、全身の魔力を込めた一撃を放つ準備をした。それは、ノアールを殺さず、彼の闇の力を一時的に封印するための、最後の賭けだった。
ノアールは、その攻撃を避けようとはしなかった。彼は、ただ静かに、その場で光を受け止めようと立っている。彼の周囲を覆う闇の魔力が、聖炎と衝突する瞬間、凄まじい反発の轟音が屋敷全体を揺るがした。
キィン!
聖炎はノアールの闇の鎧を貫き、彼の肩を浅く切り裂いた。しかし、闇の鎧はその直後、すぐに傷を修復し、ノアールの身体を再び覆い尽くした。
「……僕の闇は、君の光に呼応して強くなる。君が僕を本気で滅ぼそうとすればするほど、僕は君の敵として完成してしまうよ、セレ」
ノアールの声は、どこか諦めを含みながらも、冷徹だった。その瞳は、俺の感情を試すかのように、虚ろに俺を見つめている。
俺は舌打ちをした。ノアールは、俺の光を避けるどころか、それを自分の魔力の増幅に利用している。まるで、俺が彼を討つことに躊躇することを、許さないかのように。
「逃げるな!覚悟を決めたなら、俺の光から逃げてみろ!」
俺は、彼のその自己滅却の姿勢に、激しい苛立ちを感じた。彼は、俺に罰を与える機会さえ、自分の都合の良い死という形で奪おうとしている。
俺は、剣を一度大きく振りかぶり、さらに強力な光の波動を剣に集中させた。
――グオオオオッ!
広間の空気は光と闇の魔力によって張り詰め、家具の破片や埃が舞い上がった。俺は、ノアールの目を見据え、一気に間合いを詰めた。
「俺は、お前の鎖を解かれた屈辱を、絶対に忘れはしない!」
剣がノアールの心臓目掛けて突き出される。
しかし、ノアールはその瞬間に初めて、自らの闇の力を振るった。
彼の身体から、黒い奔流のような闇の魔力が噴出する。それは、俺の聖炎とは対照的な、すべてを腐敗させ、飲み込むような重い力だった。闇の奔流は、俺の剣を直接受け止めるのではなく、俺の身体を迂回するように、屋敷の天井と床を狙った。
ゴウッ!バキィン!
闇の奔流が通過した場所は、石造りの天井も床も、一瞬にして炭のように脆く崩壊した。屋敷全体が、さらに激しく軋み、今にも崩れ落ちそうになった。
ノアールは、俺の剣を避けながら、冷たい声で言った。
「君が僕を討てば、この屋敷は崩れ、君は外界の大人たちのもとに帰れる。僕が君をここで殺せば、君は道具として生きる苦しみから解放される」
彼は、俺の心を狙って闇の力を振るっていた。彼の攻撃は、俺の命を奪うことよりも、俺の居場所を奪うことを目的としているかのようだった。
「僕が、君に与えられる最後の優しさは、君の解放だけだ」
「余計なお世話だ!」
俺は剣を振り払い、崩れた床を蹴って再びノアールとの距離を詰める。俺は、彼の同情などいらない。彼が俺の鎖を解いた理由が「優しさ」だったとしても、俺が彼に求めているのは、その優しさの代償だ。
俺の聖炎とノアールの闇は、何度も激しく衝突した。それは、光と闇の戦いであると同時に、愛と絶望の交錯だった。
ノアールは、常に俺の感情を刺激する言葉を投げかけた。
「君を森に置いていった僕を憎めばいい。王城の大人たちに道具として扱われる苦しみを、僕にすべてぶつけるといい」
彼の言葉を聞くたびに、俺の瞳の金色の光は増幅した。俺の憎悪と屈辱こそが、ノアールの闇を、そして俺の光を育てていた。
戦いは一進一退だったが、このままでは屋敷が完全に崩壊し、俺たちの再会が終わってしまう。
俺は、ノアールを殺すつもりはなかった。だが、彼を連れ戻すためには、一度、完全に彼の闇を鎮めなければならない。
(ノアール。お前は、俺の鎖を解いた。その償いは、お前の命で終わらせてやるものか)
俺は、憎しみを抱えたまま、全身の魔力を込めた一撃を放つ準備をした。それは、ノアールを殺さず、彼の闇の力を一時的に封印するための、最後の賭けだった。
10
あなたにおすすめの小説
ハッピーライフのために地味で根暗な僕がチャラ男会計になるために
ミカン
BL
地味で根暗な北斗が上手く生きていくために王道学園でチャラ男会計になる話
※主人公へのいじめ描写ありのため苦手な方は閲覧ご注意下さい。
追放された『呪物鑑定』持ちの公爵令息、魔王の呪いを解いたら執着溺愛ルートに入りました
水凪しおん
BL
「お前のそのスキルは不吉だ」
身に覚えのない罪を着せられ、聖女リリアンナによって国を追放された公爵令息カイル。
死を覚悟して彷徨い込んだ魔の森で、彼は呪いに蝕まれ孤独に生きる魔王レイルと出会う。
カイルの持つ『呪物鑑定』スキル――それは、魔王を救う唯一の鍵だった。
「カイル、お前は我の光だ。もう二度と離さない」
献身的に尽くすカイルに、冷徹だった魔王の心は溶かされ、やがて執着にも似た溺愛へと変わっていく。
これは、全てを奪われた青年が魔王を救い、世界一幸せになる逆転と愛の物語。
異世界転移した元コンビニ店長は、獣人騎士様に嫁入りする夢は……見ない!
めがねあざらし
BL
過労死→異世界転移→体液ヒーラー⁈
社畜すぎて魂が擦り減っていたコンビニ店長・蓮は、女神の凡ミスで異世界送りに。
もらった能力は“全言語理解”と“回復力”!
……ただし、回復スキルの発動条件は「体液経由」です⁈
キスで癒す? 舐めて治す? そんなの変態じゃん!
出会ったのは、狼耳の超絶無骨な騎士・ロナルドと、豹耳騎士・ルース。
最初は“保護対象”だったのに、気づけば戦場の最前線⁈
攻めも受けも騒がしい異世界で、蓮の安眠と尊厳は守れるのか⁉
--------------------
※現在同時掲載中の「捨てられΩ、癒しの異能で獣人将軍に囲われてます!?」の元ネタです。出しちゃった!
聖女召喚の巻き添えで喚ばれた「オマケ」の男子高校生ですが、魔王様の「抱き枕」として重宝されています
八百屋 成美
BL
聖女召喚に巻き込まれて異世界に来た主人公。聖女は優遇されるが、魔力のない主人公は城から追い出され、魔の森へ捨てられる。
そこで出会ったのは、強大な魔力ゆえに不眠症に悩む魔王。なぜか主人公の「匂い」や「体温」だけが魔王を安眠させることができると判明し、魔王城で「生きた抱き枕」として飼われることになる。
禁書庫の管理人は次期宰相様のお気に入り
結衣可
BL
オルフェリス王国の王立図書館で、禁書庫を預かる司書カミル・ローレンは、過去の傷を抱え、静かな孤独の中で生きていた。
そこへ次期宰相と目される若き貴族、セドリック・ヴァレンティスが訪れ、知識を求める名目で彼のもとに通い始める。
冷静で無表情なカミルに興味を惹かれたセドリックは、やがて彼の心の奥にある痛みに気づいていく。
愛されることへの恐れに縛られていたカミルは、彼の真っ直ぐな想いに少しずつ心を開き、初めて“痛みではない愛”を知る。
禁書庫という静寂の中で、カミルの孤独を、過去を癒し、共に歩む未来を誓う。
今世はメシウマ召喚獣
片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。
最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。
※女の子もゴリゴリ出てきます。
※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。
※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。
※なるべくさくさく更新したい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる