復讐の鎖に繋がれた魔王は、光に囚われる。

篠雨

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第5章 魔王視点

第2話:裏切りの代償

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俺は、彼が最も孤独を感じる、「話し相手」の時間を、彼の復讐の道具として受け止め続けた。

セレは、王城で受けた冷遇や、騎士団長の軽蔑的な視線について語った後、決まって俺に尋ねる。

「ノアール。俺の剣技は、あの時のお前が見ていた剣術より、遥かに完璧だ。お前が鎖を解いたことを、後悔しているか?」

俺の返答一つ一つが、彼の心を支配する鎖となる。

「後悔しているよ、セレ。あの時、君を手放したことを。君を勇者という道具にしたことを」

俺は、彼の望む罪悪感を、素直に吐露した。

「でもね、セレ。君が僕を鎖に繋ぎ、僕を支配下に置くことで、君の心が少しでも満たされるなら、僕はそれでいい。君が、君の孤独から解放されるなら……」

俺は、彼の瞳の奥の切実な依存に触れようとした。

しかし、セレの返答は冷たい。

「俺は、お前を支配しているわけではない。これは、お前が俺にした裏切りの代償だ。お前の偽りの愛に、俺はもう惑わされない」

偽りの愛。

彼は、俺が彼を鎖に繋いだ3年間の幸福を、今、偽りだと断じている。彼がそう信じることで、三年間受けた孤独と苦痛を正当化しようとしているのだ。

だが、俺にとって、セレに注いだあの3年間は、嘘偽りのない真実の愛だった。魔王になることを恐れていた俺が、初めて「誰かを守りたい」と心から願えた、唯一の光だった。

「セレ。僕の愛が偽りだったとしても、君の聖炎は真実だ。君の力は、人々を救う。君は、誰かの道具じゃない。君は、君自身の意思で、この世界に必要とされている」

俺は、彼の歪んだ復讐心を解き放ちたかった。彼の瞳の光が、憎しみではなく、自己肯定の光として輝くことを望んでいた。
しかし、彼は俺の言葉を聞き終える前に、背を向けてしまった。

「うるさい。お前は、俺の復讐の道具だ。それ以外の言葉は、俺に必要ない」

彼の言葉は、彼自身に課した鎖だ。俺は、その鎖を解くために、彼のそばに居続けるしかない。
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