真夜中のお子様ランチ

絃屋さん  

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朝の出来事

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ジリリリ。
目覚ましの音がやけに遠い。
スマートフォンの初期設定アラームがどれも高音で耳障りだったので、わざわざ睡眠用のアプリを使って起床や就寝を管理していた。
最近は特にベッドに入ってからの入眠が遅くなってしまい、その分朝も起きるのが辛かった。
「ふぁ~眠すぎる」
働かない頭の中で、出勤までの残り
時間を簡単に計算する。
あと40分後には家をでなければならない。
顔を洗って、朝ごはんを食べて、準備をするなら二度寝は難しい。
などと考えている間にも時間が過ぎていくので、体が動き始める時には結局残り30分を切ってしまう。
悪い癖だと思いつつも、眠気には勝てない。
焼いた食パンを噛りながら、テレビのニュースを耳だけで聞く。
「行方不明になっていた、インドネシア航空の旅客機が墜落していたことが判明しました。乗組員、乗客は全員死亡。これから原因の究明のためにチームが結成されるとの事です。日本からも……」
スーツに着換え、あとは資料を鞄に入れるだけだった。
気にしないようにしようと、考えてしまった時点で、そのニュースの不穏な音声が頭の中に残っていることを意識せざるをえなかった。
飛行機、全員死亡。
遠い国の話だ。
いまさら、何年前の話だ。
そうじゃない、仕事の準備。
仕事、そう、どうでもいい。
体温調節がバグっている。
暑いのに汗だけが冷たい。
脈が乱れる。
呼吸が苦しい。
このまま、死ぬかもしれない。
それならそれでいい。
生きていることの方が、なにかの間違いなのだ。
なぜ、今になって。
今になって思い出すのか。

「辛い?辛いよね。僕が代わってあげようか」
頭の中で懐かしい声がする。
知っているはずなのに、思い出す事ができない。
「がんばったね、ユウくん」
また別の声がする。
かなり幼い声。
それも、なぜか知っている。
幻聴にしては、それはあまりにも優しい。
「ごめんなさい」
頭の中ではなく、実際にそう口にしていた。
意識が遠のいていく。
テレビは明日の天気を伝えている。


雨の
ざざ
たたみの傘
ざざざ

パチンと切れる。
テレビの電源ではなく自分の意識が。


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