クロノスの子供達

最後の糸が切れて

ミネアの腕の中で眠るメイは、すっかり安心しきった表情で身を任せていた。
ゴーフルはそれを見ないように目を背けた。
「メイ様は眠ってしまわれました。アーシャ様も眠ければベットまでお運びしましょうか？」
「じ、自分で歩けます」
「それでは、メイ様を寝室に運んできますね」
「はい」
幼い子供の為のオモチャが散らばったプレイルームで、ゴーフルは１人残された。
懐かしく切ない気持ちが沸き起こり、目の前のブロックを手にとって宙を見つめていた。
すると、いつの間にか戻ってきていたミネアがゴーフルを背後から抱き締めた。
不意をつかれたゴーフルは言葉を失った。
「大丈夫ですよ。何も心配いりませんわ。すべて私におまかせください。」
「な、なにを」
「ずっと１人で我慢して、とても怖かったのよね」
ミネアの腕の中で、ゴーフルはなぜか震えていた。
「ミネアさん……」
「抱きしめてあげるから、力を抜いて」
「は、はい」
ゴーフルは自分では気が付いていなかったが、ずっと体を強張らせていたようだ。
ミネアの言葉を聞いて、ゴーフルはふっと力を緩めた。
じゅろろろ。
無意識のうちに、ゴーフルの下半身に温かい水が流れ出しオムツを満たしていく。
ミネアもゴーフルも、もちろんその音を耳にしていたが何も言わない。
「あ、ううっ」
最後の一滴がオムツに吸収された後、ゴーフルの体がもう一度ブルッと震えた。
「いいのよ、アーシャちゃん。私の腕の中で安心して赤ん坊みたいにオムツを濡らしてしまっても」
「ご、ごめんなさいミネアさん」
「誰もアーシャちゃんを責めたりしませんわ。だから安心なさい」
アーシャ様と呼んでいたミネアの口調はいつのにかアーシャちゃんに変わっていた。
それだけでなく、小さな赤ん坊に言い含めるように優しく慈悲に溢れた声色へと変化していた。